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暗闇の中で手をつなぐ
(梶梅)

お前の視界はぐらぐらする。

「梶、お前これでなにが見えるってーの?」

無理やり奪ったガラス板越しに梶を見る。
お前とんでもねぇ不細工に見える。普段もかっこいいわけじゃないけど。

「…返答に困る質問すんな」
梶は見にくそうに雑誌のページをめくる。お前はこれなしでは雑誌もまともに見れない。欠陥か。と言うとそう言う言い方すんなとはたかれた。
一生懸命ガラスの中を睨むけど歪む世界。

ぐるぐる

ぐるぐる

頭がおかしくなる。

「やめとけ、目ぇ悪くするぞ」

梶はオレの目からガラスを遠ざけて、取ってしまった。冷たい梶の手に塞がれた視界は真っ暗だ。

「オレね、」
塞がれたままで言う。暗いなにもわからない。

「梶がなにを見てるのかを知りたかった」

梶のでかい手を目に押し付けて暗闇を深くした。
「梶の見てる世界はぐにゃぐにゃで、よくわかんなかった」

泣いてるんではなかった。でも気持ちは似ていた。

「でも、オレが見てる世界とは違うんだって言うのはわかった」

梶は一生オレと同じカラフルな映像は見れないんだ。

多少の違いがオレには悲しかった。


「………梶」
「ん」
「目ぇ閉じて」

梶の手を目からどかして自分の手と重ねた。

「真っ暗でしょ?」
「あぁ」
「オレも」

重ねた手を握ったら返してくれた。その強さが嬉しい。

「この景色ならふたりで見れるね」

真っ暗で真っ暗で底なんてないんじゃないかと思う黒。

この景色が綺麗だと、安心して見れるのはこの右手の暖かさのせい。
オレが暗闇を恐れないのはこの右手の強さのせい。


冷たかった手が暖かくなって表情みたいにも感じて、何故か笑えてしまった。

「なに笑ってんの」
「なんでもなーい」
「そう」
「ねぇ」
「なに」
「綺麗だね」



暗い暗い闇の中感覚は右手だけ



暗闇で手をつなぐ

(悪くないな、お前と一緒なら)

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