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聖闘士☆矢(年齢制限なし)
結婚シリーズまとめ(拍手連載、シャカカノン)腐向け
 初回拍手お礼文で出会った二人が結婚するまでのドタバタを書いてます。
 拍手連載なので、露骨な話はありませんが恋人時代を経て結婚する二人ですので、肉体関係は既にある前提です。
 無理だと思われる方は閲覧をお避け下さい。



「結婚しよう」
 聖戦後、シャカはカノンの手を握りしめ、いきなり開眼したかと思うと、直球で言った。
「………なんだと?」
 シャカが目を開けることはめったにない。
 すさまじい勢いで膨れ上がる小宇宙を無理やり抑え込んで開眼したシャカにカノンはあっけに取られていた。
 天舞宝輪でも食らわされるのかと思って警戒していたら、千日戦争中にラーメンの出前でも来たような場違いな展開に、どう反応していいか分からない。
「聖戦も終わって平和になったのだから結婚しようと言ったのだ。アテナの許可は既にいただいてある」
 現在、聖域の教皇の職務を行っているのはカノンである。
 教皇代理の自分を差し置いていったいいつの間にシャカがアテナにそんな話を通したというのか。
「いつの間に許可などいただいたというのだ?!」
 シャカはカノンのパニックなどどこ吹く風でサラリと答えた。
「エリシオンに行く途中、二人で迷子になっていた間にな」
 カノンは絶句した。
 そんな前にさっさと許可をいただいていたというのかこの男は…!!
「生きて帰ったら是非とも双子座のカノンと結婚致したいので、どうかご許可を賜りたいと述べたら、必ず生還させてあげますとおっしゃっていたく感動したご様子だった。ハーデスに刺されそうになった私をアテナが身を呈してかばって下さったのも恐らくそのためだろう」
 しかし、そんなことを話しながら敵陣を突っ切っていたのかこいつらは。
 三巨頭に襲われて死にかけ、一輝に借りを作ったカノンはかなり腑に落ちない気分だった。
「そういう訳でアテナは了承済み、会場として闘技場も押さえてある。後は誰を呼んで誰を呼ばないか、招待客の人選と席次の準備と料理の手配、色直しをするかしないかといった細かいことを決めなくてはならん」
 いかにも俗世間の雑用にうとそうなシャカが意外にもスラスラと結婚式の準備について語るのにカノンはまたもやあっけに取られた。
「お前はどうしてそんなことに詳しいのだ……」
 女と名のつくものが魚の雌しかいない海界で結婚式に呼ばれる機会などあるはずもなく、カノンはこういった行事には全く慣れていない。
 シャカの予想外な方面での知識にただただ感心するだけだ。
「頼まれて仏前結婚式を執り行ったことが何度かある。自然と詳しくもなるさ。我々はアテナの聖闘士なのだから、アテナの前での神前結婚式になるが」
 カノンはふと重大なことを思い出した。
 シャカは会場として闘技場を押さえたと言ったが、いったい何人客を呼ぶつもりなのだろう。
 それに色直しがどうとか。
「黄金聖闘士の正装は黄金聖衣だろう?正装以外にわざわざ着替える必要があるのか」
 色直しに関しては、カノンのこの一言でなしと決まった。
 しかし後日、ミロと会ったカノンは思いがけないことを言われて困惑することになる。
「お前ら、お色直ししないつもりらしいが、せっかくシャカのドレス姿を見るチャンスなのにもったいない、とアテナがこぼしていると氷河から聞いた。本当にしないのか?」
 結婚式を挙げるからといって、どうしてシャカがドレスを着るという話に飛躍するのだ。
 カノンはとてもアテナの発想にはついていけない。
「…もちろんシャカは綺麗だからシャカが着たら似合うだろうとは思うが。ドレスを着るのは女役の役回りだろう?どうしてそんな不自然なことをする必要があるのだ」
 男のドレス姿をそこまでして見たいとは物好きにもほどがある。
「文句があるならアテナに言え。俺は氷河に聞いて来てくれと頼まれたから聞いただけだ」
 教皇相手にはあ?だの、お言葉ですがが得意技のミロでなければこんなことは聞けまい。
 氷河の人選はなかなか正しい。
 生き残り黄金の中でカノンを除くとまともに会話した唯一の相手がミロだからというのもあるだろうが。
「しない、と言っていたと言え」
 カノンの不機嫌な返事にミロはあっさり頷いた。
 ミロは別にシャカのドレス姿を見たい訳ではなく、氷河の頼みで聞いたまでにすぎないので、用が終わるとさっさと帰っていった。
 その時、処女宮でもシャカが一輝と瞬の訪問を受けていた。
「是非ともお色直しをやれ。カノンがかわいそうだ」
 一輝の発言に瞬も同意する。
「せっかく一生に一度の晴れ舞台なんですから、絶対ドレス着た方が思い出になると思いますよ」
 シャカはドレスと聞いて純白のウェディングドレスを想像し、脳内の映像を即座に抹消した。
「思い出にはなるだろうが、良くない思い出をわざわざ作る必要はなかろう。カノンがかわいそうだ」
 お色直しをしないとカノンがかわいそうと思っているアテナや一輝、瞬に対し、シャカはお色直しをしたらカノンがかわいそうだと思っている。
 一輝、瞬の兄弟は、話がかみ合っていない気がした。
「どうしてかわいそうなんですか?綺麗なドレス姿を見たら喜ばないはずないと思いますけど」
 日本語は難しい。
 瞬の言う綺麗な、はドレスにかかっているのかドレス姿にかかっているのか。
多分ドレス姿にかかっているのだろうが。
「…綺麗か?」
 シャカはかなり怪訝そうに言った。
 カノンはシャカの目から見ても美男子だとは思うが、女装が似合うとは到底思えない。
「絶対似合うと思います!アテナがとても残念がっていました」
 どうして処女宮に来たのか自白したも同然の瞬に、シャカはアテナの美意識に激しく疑いを持ちつつ言った。
「カノンはあれで恥ずかしがり屋なのだ。ドレス姿などを晒し者にするくらいなら式そのものを取りやめた方がまだましだ。帰りたまえ」
 シャカに強制送還されてから二人はやっと気づいた。
 アテナも自分達も、シャカが受け身=ドレスを着る役回りだと思い込んでいたが、シャカの口ぶりだとドレスを着るとしたらカノンのようにしか聞こえない。
 どうやら自分達はとんでもない勘違いをしていたのでは…。
 シャカとカノンの関係は、ひょっとしたらみんなが思っているのと逆なのでは…。
 カノンのドレス姿は確かに微妙だろうし晒し者にしたらカノンは憤死しかねない。
 冥界でさんざん世話になったカノンのため、聖衣に献血してくれたシャカのため。
 二人の幸せのためにお色直しは全力でしない方向へ突き進むべきだと、異次元をさまよいながら二人を応援する一輝と瞬であった。

 乙女座のシャカは、所用で日本の城戸邸に来ていた。
「聞きましたよ、シャカ。あなた達、お色直しをしないのですって?」
 アテナ沙織は、シャカをつかまえて責めるように言った。
「カノンの意向です。黄金聖闘士の正装は黄金聖衣なのだから、色直しは必要ないと」
 シャカはまたその話かと思いながら事実関係を淡々と語った。
「それは氷河から聞きました。それに、カノンがかわいそうだから、ウェディングドレス姿を晒すくらいなら式を取りやめると言ったとの報告も瞬から聞いております。どうしてそんな我が儘を言うのですか」
 成人男性に無理やりウェディングドレスを着せようと画策するのは我が儘ではないのかと突っ込むべきところだったが、シャカは一般人とは感性が違うのでその点は華麗にスルーした。
「…カノンもアテナの聖闘士。アテナがどうしてもとお命じになれば恥を忍んでドレスを着るか分かりませんが」
 シャカは説明しかけて、沙織の反応が奇妙であることに気づいた。
「アテナ?」
「………。まさかとは思うけど、あなたが新郎でカノンが新婦?」
 最初からカノンの話をしていると信じて疑わない様子のシャカの反応から沙織はようやく二人の関係に気づいた。
 半信半疑で問いただした沙織にシャカは平然として答えた。
「はい」
 女性のように美しく細身のシャカが凛々しくたくましいカノンにあんなことやそんなことをしている光景を思い浮かべた沙織は、見るからに怪しい様子でニンマリしていた。
「私、思ったのですけど、あなたがドレスを着て、タキシード姿のカノンと契ってはどうかしら。めくるめくような素晴らしい初夜になると思うわ」
 腐女子の感性にはついていけない。
 自分は聖域では電波と評されているが、アテナよりはずっとマシだ、この人にはかなわないとほとほと呆れ、生ぬるい目で…というか心眼でアテナ沙織を見つめるシャカであった。

「衣装合わせ?」
 黄金聖闘士の正装は、黄金聖衣である。
 結婚式は黄金聖衣でやればいい、お色直しは必要ないと言っているのにどうしてそんなものが必要なのか。
 カノンは怪訝な顔でシャカに聞き返した。
「…アテナのご命令だ。もし結婚式にドレスを着ないなら…黄金聖衣着用に固執するなら、黄金聖衣を女性用に改造させると脅された。ちなみに完成予定図はこれだ」
 実は、シャカの乙女座の聖衣はまだ修理が終わっていない。
 アンドロメダ聖衣修復のために血液を提供してからさほど日数が経っていない上、元々黄金聖闘士で一番体重が軽いシャカは貧血が改善していないこともあって修理を一番後回しにされていたためである。
 粉々の聖衣の修理は最初から作り直しとほぼ同義のため、大幅なデザイン変更が可能である。
 沙織の指示で作成された完成予定図は防御面積がきわめて狭小な青銅か白銀のような代物であった。
「ぶっ」
 カノンは不覚にも思わず吹き出した。
 シャカ自身の回避能力が高いので、女性用でも戦えないことはないだろうが、視覚的にはきわめて危険なデザインの聖衣。
 その聖衣の設計図にシャカの顔写真が貼られているとあってはもはや笑うしかない。
「…聖衣を人質に取られてはぜひもない。腕ずくでも付き合ってもらうぞ、カノンよ」
 シャカの小宇宙がかつてないほどの高まりを見せた――。

 結婚の準備は、着実に進められていた。
 女神沙織の鶴の一声で無理やりやらされた衣装合わせの件を思い出し、カノンは微妙な表情になった。
 私服をスニオン服と教皇の法衣しか持っていないカノンは、沙織の手配した業者?に採寸され、式に相応しいタキシードを着用することになった。
 それはまあ、いい。
 気の毒だったのはシャカである。
 シャカは沙織の命令で、新郎なのに何故かウェディングドレスを着なくてはならないのだ。
 一度も目を開けることなく、ドレス姿を視界に入れることだけは阻止したシャカにカノンは心から同情した。
「…すっかり遅くなってしまったな。カノン、誕生日おめでとう」
 執務室にフラリと現れたシャカにそう言われるまで、カノンは自分の誕生日のことなどすっかり忘れていた。
「30近くなればたいしてめでたい訳でもないが…、お前に祝福されるのは嬉しい。ありがとう」
 二人の唇がごく自然に重なった。
 執務室でことに及ぶのは不謹慎だとカノンの理性は警鐘を鳴らしたが、その理性もやがて消し飛ぶのだった――。

 カノンの誕生日。
 シャカとカノンは久しぶりにゆっくり過ごそうと、夜中まで仕事をした後ようやく休みを取って処女宮でまったりしていた。
 挙式当日が近くなってくると結婚式の衣装決めやら、披露宴のスピーチの順番決めやら席次決めやら料理の手配やらとにかくやらなければならないことが多い。
 仕事は休みでも二人きりでのんびりと過ごせる休みとはとんとご無沙汰だった二人にとって、今回の休暇は久々に何も予定のない休みだった。
「シャカ、今から外出する気はないか?」
 そんな貴重な休日になにやら思いついたらしいカノンが外出を提案すると、シャカは閉じたままの目で怪訝そうにカノンを見やった。
「どこへ行きたいのかね?」
「…国内だ。そう遠くはない」
 わざわざ国内と断るということは、聖域の外なのだろう。
 しかし黄金聖闘士である二人にとって、国内だろうが国外だろうがさほど問題ではない。
「ふむ。…では行こうか」
 聖域の外に出ると察したシャカはタンクトップにジーンズというラフな服装に着替え、財布を無造作に尻ポケットに突っ込んだ。
「白羊宮を出たら目的地の近くまで瞬間移動するつもりだ」
 カノンの説明に黙って頷いたシャカは、カノンと肩を並べて歩きながら、カノンが行こうとしている場所について想像をめぐらしていた。
 カノンはどこへ行きたいのだろう。
 聞くのも、頭の中を覗くのもたやすいが、行き先を想像しながら歩くのも楽しいとシャカは思った。
「ふむ。こうして一緒に歩くのもなかなか楽しいものだな」
 思えば二人は、今までにデートらしいデートを一度もしたことがない。
 まもなく結婚する二人がデートの一つもしたことがないというのは問題だとシャカは思う。
 カノンに求婚する前に先にアテナ沙織に話を通してしまったため順番が違うとカノンに叱られたシャカだったが、これも順番が違うということになるだろう。
「…十二宮内ではアテナの結界があってテレポート出来ない。今までは不便だとしかおもわなかったがお前と一緒に歩く時間が長くなると思えば悪くないかもしれん」
 しみじみと答えたカノンの手をシャカが控えめにそっと握った。
「デートの時は手をつないで歩くものと決まっていたはず。手をつなごう、カノン。…君が嫌でなければ」
 カノンはシャカの繊細そうな手を力強く握り返した。
「嫌だなどとそんなバカなことあるはずがなかろう。…行くぞ、シャカ」
 初々しいカップルらしいやり取りを獅子宮通過中に繰り広げ、獅子座のアイオリアに目撃された彼らは夜の寝室の二人とは様子が違ってカノンが主導権を握っていた。
 聖域のごくごく一部では、実はシャカとカノンはシャカが新郎でカノンが新婦なのだという噂が密かに流れていたが、二人の様子を見たアイオリアが噂はデマだと判断するのも無理はないほどカノンの姿は男前で――
 一方シャカは、ドレスの試着の際、ロングドレスを踏まずに歩く技をアテナに伝授されたためなのか、歩き方が妙にしとやかであった。
 周囲の人々に誤解を撒き散らしながらシャカとカノンは処女宮から十二宮をゆっくりと徒歩で降りていく。
 手をつないで歩く二人の姿は、身長差もあいまって美男美女の組合せのように見えた。

 真実を知っている人があえて言わなかったり、いろいろな条件が重なって事情を知らない人にはシャカが受けだと完全に誤解されてる二人。
 執務室でキス→2012双子座誕小説、初デート→2013双子座誕小説です。

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