聖闘士☆矢(年齢制限なし)
生還2(シャカムウver.)2012ムウ誕記念 腐向け
たとえ言葉で好きとは言わなくても、ムウの心がシャカを求めていることは、ムウの態度から自然と伝わってくる。
最初、シャカはそれで充分だと思っていた。
ムウが友情を優先したいと思っているならその気持ちを尊重し、ゆっくり待つことはなんでもないことだと考えていた。
しかし、お互いに相手のことを好いていて、同じベッドで抱き締め合って眠りながら何も出来ないというのは想像以上に過酷だった。
眠れぬ夜を過ごしたシャカの顔にくっきりと刻まれた隈にムウは眉を寄せた。
「君はよく眠れなかったのか…、もしやまだどこか痛いのか?」
成人男性のわりに恋愛感情にはさっぱり疎く奥手なムウは自分のせいでシャカが眠れなかったとは夢にも思っていない。
「…痛いところはない。眠れなかったのはおのれの未熟さゆえだ。君が気にすることではない」
シャカの返事にムウは眉を寄せた。
君が気にすることではない、と突き放したように言われると甚だ面白くない。
「一緒に寝ていたのに気にせずにいられるとでも?」
食い下がったムウにシャカは言った。
「…君が私との友情を大切に思ってくれていることは私も承知している。だから私も君の気持ちを尊重しようと思ったのだが……」
欲望など縁がないように見えるシャカだが、人としての欲がないはずはない。
無防備に眠るムウを腕に抱いて同じベッドにいながら手を出せないのはかなりつらいことだった。
「すまない、ムウ」
ムウはシャカの顔が近づいてくるのをぼう然として見つめていた。
シャカの長い睫毛を至近距離で見つめるムウの唇にシャカの唇が重ねられ、シャカの舌が侵入するのをムウは抵抗することを思いつきもせずに受け入れ、舌をからめられるに任せていた。
「ん……ンッ…」
息継ぎがうまく出来ず、苦しくなって身悶えしたムウをシャカがやっと解放した時、ムウは腰が立たなくなっていた。
「あ……」
よろけたムウが、そのまま後ろのベッドに仰向けになるとシャカが追い討ちをかけるように上から覆い被さった。
「君の気持ちが決まるまでゆっくり待ってやりたかったのに。すまない、ムウ」
ムウに覆い被さった体勢で詫びるシャカの表情はあまりに悲しげで、ムウは胸が苦しくなった。
「君は何を謝る。何がそんなに悲しい?」
人里離れた土地で純粋培養のようにして育ち、何も知らない無垢なムウと違い、シャカは人の欲望を知っている。
「君を汚すのが悲しい。…私は君が好きだ」
ムウは目を見開いた。
恋愛感情など最も無縁そうな神に近い男がそういう感情を持ち得ることをムウは失念していた。
一番親しい大切な友だというのに。
「君が私を好き…?」
どうしたらいいのだろう。
どう反応したらいいか分からない。
だが。
ムウは頬が熱くなったことを自覚した。
「ありがとう、嬉しい…、私も好きだ、君が。そんなふうに自分を責めないでくれ」
シャカはどうして自分が汚れるなどと思うのだろう。
ムウには恋愛のことはよく分からないが、シャカをアテナ以外の誰よりも大切に思い、一生をともにしたいと願う気持ちは自覚している。
そのシャカの振る舞いのどこに汚らしい点があるというのか。
「ムウ。君を愛している」
シャカとムウの唇が再び重なった。
両思いの二人が、ゆっくり進展していくのを生暖かく見守る的な話でした。
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