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聖闘士☆矢(年齢制限なし)
if〜処女宮の戦闘(瞬VSシャカ)
 アフロディーテの役とシャカの役を入れ替えたらどうなるか…という妄想バトルネタ。
 年齢制限部屋にある話とラスト以外はほぼ同じです。
 戦闘と回想ばかりですが、それでもいい方はどうぞ。


 第六の宮は、処女宮。
 可憐な姫の名の守護星座のアンドロメダ瞬が戦うべき敵。
 瞬の師の敵でもある処女宮を守護する黄金聖闘士、乙女座のシャカは目を閉じているが、人形のように整った美貌の青年だった。
「ぼくはこういう言い方は好きではないけど…」
 瞬は星矢と紫龍に語った。
「男だったらとか、男のくせにとかいう言い方は好きじゃないんだけど…あの男を倒すのに誰かの力を借りたとしたら、ぼく自身男じゃなくなるような気がするんだ…。星矢、紫龍、先に行ってくれ!後から必ずぼくも行くよ…」
「瞬……」
 一気に駆け抜けようとする二人。
 シャカの頭上を飛び越えようとした星矢に、
「フッ、君達少し行儀が悪いな!挨拶もせずに黙って通過出来るとでも思っているのか?」
 シャカが一声かけると、謎の閃光が走り、星矢は受け身も取れずに吹っ飛んだ。
 廬山昇龍覇で攻撃した紫龍は、シャカに指一本触れられず、風圧で聖衣越しに拳から血が吹き出し、逆に吹っ飛ばされる。
「星矢!紫龍!!」
 一撃で簡単に倒された二人を気遣い、瞬が叫ぶとシャカは冷笑した。
「おっと、私の相手は君がするのではなかったのかね」
 瞬はシャカをきっと睨みつけ、星雲鎖で攻撃したが、カーンというたった一言で鉄壁の鎖はあっさりとシャカにコントロールされてしまい、逆に自分が攻撃を受けた。
 瞬は大きく目を見開いた。
 瞬は苦しかった修行時代を思い出す。
 アンドロメダ島は、昼は五十度を越す灼熱地獄、夜は零下数十度にもさがる寒冷地。
 師である白銀聖闘士ケフェウス星座のダイダロスとの修行で気絶しては兄弟弟子で後にカメレオン座の青銅聖闘士となるジュネに介抱される日が続いていたが、そんな中でも瞬は満足だった。
 自分の代わりにデスクィーン島に送られてしまった兄を思えば自分は幸福なのだと。
 そして五年以上の月日が過ぎ、ついに修行の最後として瞬自ら望んだサクリファイスという儀式が始まった。
 海から突き出た岩に鎖で縛り付けられ、潮が満ちるまでに鎖から抜け出さなくてはならない。
 それはエチオピアの王女アンドロメダが鎖につながれ海の怪物の生贄としてそなえられたところからきている。
 だからその身を縛る鎖もただの鎖ではなく、いかなることがあっても千切れないアンドロメダ聖衣の二本の鎖なのだ。
 それゆえその鎖から抜け出るには自己の小宇宙を最大限に燃焼させなければ到底不可能。
 そして見事鎖から抜け出た者にこそアンドロメダ聖衣をまとう資格があるのだ。
 瞬は鎖から抜け出せずに満ちていく潮の波に飲み込まれていったが、海が二つに割れ、その中から見事二本の鎖を従えて出て来た――。
「せ…先生、ジュネさん…一輝兄さん…ぼく…やれたよ、誰の手も借りずにやっと一人で…」
 そうしてついに瞬はアンドロメダの聖闘士として認められた。
 その鎖を、本来の持ち主を差し置いて支配下に置くとは、シャカ恐るべし――。
「さあ、君もペガサス達の後を追いたまえ!!オーム!!」
 シャカの気合いとともに、シャカの両手の間で小宇宙が燃焼した。
「食らえ、天魔降伏!!」
 そして放たれた謎の技、天魔降伏に瞬は吹っ飛ばされる。 何が起きているか分からない攻撃に瞬はどうすることも出来ない。
「しかしこの程度の実力の者がこの六番めの処女宮まで上って来たなど未だに信じられん!下の黄金聖闘士達があえて教皇を裏切ったとしか思えんな…」
 そしてシャカはいまだに息のある瞬に気づいた。
 瞬は必死に立ち上がる。
 シャカは神に近いと言われているが、神のように弱者に対する慈悲の心は持ち合わせていない。
「なぜ立ち上がる…。おとなしく目を閉じていれば、これ以上苦痛と死の恐怖は味あわずにすんだものを…」
 冷笑するシャカに瞬は言った。
「ぼくは目をつぶって死ぬのを待つような弱虫じゃない!最後まで男らしく戦う!!今こそ本当のぼくの力を見せてやる、行くぞ、シャカ!!」
 サークルチェーンが瞬の体を取り巻き、防御体制を形作った。
 シャカは自信満々にそんな青銅の鎖など役に立たないといってもう一度天魔降伏を仕掛ける。
 それは瞬のローリングディフェンスの鎖ごと瞬を吹き飛ばし、鎖をヒビだらけにしてしまった。
 それでも怯まずに立ち向かう瞬だったが、完璧な防御本能を誇るはずのサークルチェーンも、攻撃のためのスクエアチェーンもシャカの拳が触れた途端、なんとあとかたもなく消し飛んでしまった。
 瞬は二本の鎖を失い、攻めることも守ることもできなくなった。
「アンドロメダよ、鎖がなければ何もできない君はもはや、無力な赤子も同然。このシャカ、神と違って慈悲の心は一切持たないが、死にきれずに苦しんでいる者にとどめをさしてやるのも慈悲というものかもしれぬ…。さあ、望み通り死を見舞ってやるぞ」
 シャカの光速拳が瞬に再度襲い掛かり、聖衣を粉々に砕かれ瞬は倒れた。
 これで十二宮に入った青銅聖闘士は全て死に絶えた……と思われたが瞬にはまだ息があった。
 まだ死に切れないのかとシャカは呆れたが、突如として瀕死の瞬から強大な小宇宙が燃え上がった。
 瞬が修行を終え、アンドロメダ島を去る時。
 瞬の師であるダイダロスは瞬に気にかかることがあると言った。
 瞬の小宇宙はサクリファイスで突然目覚めたのではなく、以前から目覚めていたのではないか。
 戦いにおいて相手を傷つけるのがいやであえて自分が倒されていたのではないか。
 ダイダロスの推測は正しかった。
 瞬は実は六年の修行で少しずつ小宇宙に目覚めていたのだ。
「でもアンドロメダ島を去ってゆく今、先生にだけはお見せします。ぼくの本当の力を…」
「むっ」
 そのすぐ後にジュネが瞬を呼びにきたので、瞬とダイダロスはそこで別れた。
 瞬は涙を流してダイダロスに礼を言って去っていく。
 その姿をダイダロスは震えながら見つめていた。
 そして瞬とジュネがその場を去った時、ダイダロスの聖衣は粉々に砕け散った。
「うう…瞬の小宇宙がここまで強大に育っていたとは…や…やれる。瞬ならアンドロメダのチェーンなどに頼らなくても立派にその身を守ってゆけるのだ」
 ――し…しかしあいつはその力を使うことは生涯あるまい。
 瞬の優しさゆえに瞬の本当の力を知る者は誰もいないだろう。
 ダイダロスは一人そう呟いた。
 そして再び処女宮。
 鎖も聖衣も失い、瀕死の瞬から白銀聖闘士以上の小宇宙を感じ、シャカは眉をひそめた。
 精神に作用する技を持つシャカは他人の過去の断片を見る能力がある。
 白銀聖闘士の中でも実力者とされる瞬の師の聖衣を、戦闘中でなかったとはいえ青銅になりたての瞬が粉砕していた事実にはシャカでさえ驚いていた。
 瞬は瀕死の状態でありながら、この期に及んでもまだ生身の拳は使いたくないと言いながらよろよろと立ち上がった。
「シャカ…ここまでぼくを追いつめたあなたのせいだぞ…」
 瞬の命もあと数分で終わるだろう。
 死ねばダイダロスの仇を討つことができなくなる。
 さんざんぶっ飛ばされておきながら何故だか上から目線の瞬にシャカは訝しさを禁じ得ない。
 シャカのとどめの天魔降伏よりも早く、瞬が拳を繰り出した。
 シャカの天魔降伏は確かに強力無比だが、光速の動きの黄金聖闘士の技の中では発動の速さはさほど速くない。
 教皇の間における獅子座のアイオリアとの小競り合いでは、天魔降伏を先に放ったにも関わらず後出しのライトニングボルトに相殺されたことがあるくらい発動が遅いのがただ一つの欠点だった。
「今こそ受けろ、シャカ!この瞬の真の力を!!」
 瞬の拳が空気の渦を巻き起こし、シャカは吹っ飛ばされる。
「ネビュラストリーム!!」
 ネビュラストリームを受けて宙を舞ったかに見えたシャカだが、ネビュラストリームなどシャカには涼風に等しく、なんのダメージも受けていない。
 悠々と体を回転させて華麗に着地しようとして……いつの間にか自分の動きが制限されていることにシャカは気づいた。
 しかし、シャカも神に近いとまで言われる黄金聖闘士。
 即座にカーンと叫び、危ういところで自分の身を球状の防御壁に包んで体勢を立て直すと、問題なく着地してから現状を把握する。
 瞬の拳から生み出された気流(ストリーム)がシャカの防御壁の周囲を取り巻いている。
 それが体の自由を制限していたのだ。
「ストリームはぼくの小宇宙次第でまだまだ激しさを増す。そして最後にはとてつもなく変化するのだ。でもダイダロスの霊に詫びればこれ以上攻撃はしない。どうかダイダロスの霊に詫びて下さい」
 瞬の言葉を、シャカは一笑に付した。
「何を詫びるというのだ?ダイダロスは教皇に服従しなかった。いわば君達と同じ反逆者だ。それに天罰を下してなにが悪い」
 瞬は教皇こそが反逆者だと反論するが、シャカはそのようなことは問題にならないと言った。
「バ…バカな。正義を守るべきはずの聖闘士が…しかもその最高位に位置する黄金聖闘士が…あえて邪悪に加担しているのか…」
 驚愕する瞬にシャカは無表情で彼独特の倫理観を語った。
「邪悪?この世の中は無常。完全なる善、完全なる悪などは存在しない。私は聖域の出頭命令に応じない君の師を教皇の勅命により討ったが、間違ったことをしたとは思っていない」
 シャカがダイダロスを討った理由。
 教皇の命令以外にも理由があるのだろうか。
 瞬はシャカの言葉に耳を傾けた。
「教皇に不満があるならば、アンドロメダ島に引きこもって出頭に応じないなどという消極的な方法を取らず、堂々と審判の場で持論を述べるべきだった。君の師と教皇と、この件に関しては明らかに教皇に理がある。私も正義の女神アストライアの宿命を受けた乙女座の聖闘士。君の師が出頭に応じれば、審判が正当に行われるよう最大限に気を配っただろうし、見逃すのが妥当と思えば君の兄の修行地デスクイーン島を討伐した時のように見逃す選択もありえた」
 教皇の本質は正義なのであえて敵対視はしないというシャカは、かつて勅命によりデスクイーン島へ赴き、兄の一輝の本質が悪ではないからとあえて見逃したという過去を語った。
 兄を見逃してくれたことは結果的に正しかったが、ダイダロスを殺害しなければならない理由が瞬には納得出来ない。
 瞬は分かり合えないことを悲しく思いながらストリームを強めた。
 瞬のストリームでシャカの鉄壁を誇る防御壁がビリビリと震える。
「なにが正義でなにが悪か…。教皇こそ聖域をまとめ上げ、聖戦に備えて来た功労者だ。教皇がいたからこそ大地の平和は守られてきたのだ。その功績を正当に評価せずに邪悪と罵り、問答無用で攻撃する君達のどこに正義がある。私の見た教皇は正義だ!」
 シャカがケフェウス星座のダイダロスを討った男であること、目を開けさせるなという忠告を事前に受けていたこともあって瞬達が最初から話し合おうともせずに攻撃を急ぎ、戦いを仕掛けてしまったことはシャカの判断基準に大きな影響を与えていた。
 教皇の命令に従ってダイダロスを殺害したのは確かにシャカだが、それはシャカなりの正義に基づいて行動した結果。
 シャカ自身は別に悪人ではないのに戦わなくてはならない…。
 道を違えた自分達はもう分かり合えないのか……。
 瞬はストリームを強める。
「ネビュラストリームによってあなたの行動は制限されている。もはやあなたはその防御壁から出られない…出ればあなたは確実に死ぬ」
 自分がシャカを防御壁に閉じこめている間に星矢達が処女宮を抜けてくれれば、シャカを殺さなくてもいい…。
 気絶から目覚めつつある星矢達を祈るような心地で見やって瞬が言うと、シャカは瞬を嘲笑うように言った。
「それはどうかな。甘いぞ、アンドロメダ。私に目を開けさせるとはほめてやろう」
 瞬はシャカの小宇宙が急速に高まっていくのを感じてストリームを更に強める。
 瞬は警告した。
「気流(ストリーム)が変化して嵐(ストーム)に変わればあなたは確実に死ぬ。やめろ、シャカ」
 と。
 だがその警告に怯むシャカではなく、いささかも臆することなくゆっくりと目を開いた。
「おとなしく餓鬼界に落ちたまえ!天魔降伏!!」
 瞬のネビュラストームはシャカのバリアを粉砕した。
 一方、瞬も天魔降伏の威力をまともに受けていた。
 両者は相打ちしたかに見えたが、防御壁でダメージの大半を軽減していたシャカは黄金聖衣の高い防御力もあって浅手にとどまり、こめかみから一筋の血を流しながらゆっくりと瞬に歩み寄った。
「黄金聖闘士の域にまで小宇宙を高め、このシャカをここまで本気にさせたのは君だけだ。アンドロメダ……」
 目を覚ました星矢と紫龍は、目を開けたシャカが瞬をお姫様抱っこしているところを見てギョッとした。
 シャカの目が開いている…!
「…まもなく処女宮の火も消える。先を急ぎたまえ」
 静かに言うシャカに星矢は半信半疑で言った。
「ここを通してくれるのか?」
 シャカは静かに頷いた。
「ああ。そして私に君達の正義を見せてみろ。アンドロメダは私が全力をもって蘇生させてみせる…」
 ネビュラストーム。
 恐ろしい技だった。
 シャカが黄金聖闘士最強級で、鉄壁を誇る防御壁がなかったとしたら到底ただではすまなかっただろう。
 それほどの力を持ちながら、力を振るうことを嫌い、シャカを殺さずに済ませることを考えていた瞬。
 このまま死なせるには惜しい。
 シャカは静かに小宇宙を燃やすと、自分が傷つけた瞬の蘇生に力を尽くすのだった。

 黄金聖闘士を教皇と戦わせないための理由づけとしては誰かを助けるため、というのが一番納得しやすい気がするのでこういう結末に。
 私の考えでは、ムウが十二宮編で戦わない理由も、女神に刺さった神殺しの矢をムウがサイコキネシスで食い止められる限界が12時間って設定なら、ムウが参戦しない理由として説得力があった気がする。
 私が見た教皇は正義だ!も、こういう話の運び方ならありかなと。

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