聖闘士☆矢(年齢制限なし) 初代拍手お礼文(シャカとカノン、シリアス) 「なるほど。確かに双子座のサガと生き写しだな」 海底神殿でポセイドンの三つ叉の矛の攻撃からアテナを守って重傷を負ったシードラゴンこと双子座のサガの弟カノンは、十二宮の奥深くで療養生活を送っていた。 カノンが聖域にいることはアテナ以外は誰も知らないはずだったが、目の前の男はサガと生き写しのカノンと会っても驚いた様子がない。 その目は閉ざされているから、そもそもカノンの姿を肉眼で見ている訳ではないが…。 「お前は…、乙女座のシャカ?」 黄金聖闘士の中でも最も神に近いと言われる実力者。 小宇宙を高めるため視覚を断っているという男の噂はカノンも知っていた。 長いストレートの金髪を無造作に背中に垂らしている。 その顔立ちは整っていて、一見、女性的だが、神に近いという評判通り、恐ろしく強大な小宇宙を感じる。 「そうだ。よく知っていたな」 シャカは目を開いた。 カノンはシャカの青い瞳に吸い込まれるような錯覚を覚え、一瞬で捕らわれた。 「お前の目が開く時、居合わせた者は皆息絶えると聞いた…オレを殺すつもりか?」 大洪水を引き起こし、多数の犠牲者を出した罪は消せない。 どの道、アテナのために一度は捨てた命に今更なんの未練もない。 正義の女神アストレイアをかたどった乙女座の聖闘士に裁かれて死んでいくならそれもよかろうと思い、尋ねたカノンにシャカは静かに答えた。 「いや…。君は生き恥をさらすべきだ。生きて聖戦で一人でも多くの冥闘士を倒すのがアテナが君に与えたもうた生命の意味だろう。私はアテナのご決定に異議を唱える気はない」 「では何故ここに?」 殺すため、罰するため以外に黄金聖闘士が自分になんの用があるのか。 カノンにはシャカの考えが分からなかった。 「君の傷を癒やしてやるようにとアテナからのご命令だ」 アテナに言われて来ただけなのか… カノンは何故かがっかりする。 「癒やしの技術は、私よりも牡羊座のムウの方が上なのだが、彼の師は君の兄に殺されたのでな。アテナはムウにつらい思いをさせたくないとおっしゃって私に下命なさった。…カノン」 シャカの手がカノンの頬に触れた。 カノンの胸が我知らず高鳴った。 「君は君の兄のように、自ら死を選んではならない。生まれ変わるのだ…黄金聖闘士、双子座のカノンとして」 シャカの小宇宙が蓮の花のようにカノンをゆっくりと包み込み、穏やかに癒やしていく。 カノンはこの時、聖域で初めて平穏の時を得たのだった。 [*前へ][次へ#] |