聖闘士☆矢(年齢制限なし)
if〜海底神殿の戦闘(シャカvs海龍カノン)
サガが支配する聖域からポセイドン神殿へ派遣されたシャカ、ミロ、カミュが海将軍と戦う話(ミロ、カミュの具体的戦闘描写はなし)。
シャカは概ね一輝の役回りを演じています。
バトルものの二次創作として腐要素は排除したつもりですが話の大筋はシャカ×カノン部屋にあるシャカ←海龍カノンシリーズ第1話と共通です。
状況説明とバトルしかありませんがそれでいい方のみどうぞ。
各地で大雨が降り、洪水が発生していた――。
原因はポセイドンが目覚めたこと。
だがどうやら、ポセイドンは本来まだ目覚める時期ではなく、本調子ではないらしい。
星矢達が攻めて来た十二宮戦後、反乱軍に荷担した牡羊座と獅子座は捕らえられて、現在無人の宮となっている。
十二宮に入り込んだ海皇ポセイドンの七将軍の一人、海魔女のソレントは守護者不在の白羊宮を通過し、金牛宮で牡牛座のアルデバランを倒した。
更に攻め上ろうとしたソレントだったが、異変を察知した乙女座のシャカが金牛宮に遠距離ビーム型の天魔降伏を放ち、笛の音の有効射程圏内に入らせることなくけりをつけた。
そのソレントは蠍座のミロに引き渡されてスカーレットニードルで尋問され、本拠地を白状した。
教皇サガは、被害が拡大しない内にポセイドン神殿に黄金聖闘士を送り込んで洪水計画を打ち砕くと決断、黄金聖闘士最強の乙女座のシャカ、水と氷の魔術師・水瓶座のカミュ、そしてソレントから情報を引き出した蠍座のミロがポセイドン神殿に派遣された。
シーホースのバイアンはライジングビロウズを貫通したミロのスカーレットニードル・アンタレスで絶命。
クラーケンのアイザックとカミュは師弟対決となった。
死んだと思っていた弟子がポセイドンの配下となっていたことにカミュは驚愕し、かつての弟子を葬ることに滝涙を流しながらもアイザックを撃破。
アイザックはシードラゴンがカミュ達の知る男だと告げてから絶命した。
シャカはクリュサオルのクリシュナと対決。
チャクラを断ち切らないと物理的ダメージを与えられない敵だったが、六道輪廻で精神をいずれかの世界に運ばれたクリシュナは廃人となり、軽く一蹴された。
ミロ対スキュラのイオは、イオの技をあえて全て食らってから、黄金聖衣の耐久性でことごとく防ぎきってみせたミロが貫禄勝ち。
カミュはリュムナデスのカーサの幻覚でぐるぐると走り回らされたものの、氷河に化けたカーサを難なくオーロラエクスキューションで倒し、氷の柩に閉じ込めた。
カミュが愛する者を容赦なく倒してから滝涙を流す性格なのだとカーサが把握した時は既に遅く、彼は凍死していた。
この時点で残るは南北大西洋の柱、二本のみ。
シャカは二本の柱はカミュとミロに任せ、ポセイドンの首を取ろうと神殿へ向かっていた。
だがその前に海将軍の一人、シードラゴンが立ちふさがった。
「残念だが、ポセイドン様のもとへは行かせん、このシードラゴンがな」
「シードラゴンだと?自分の守るべき柱はどうしたのかね?」
「フッ、貴様にこれ以上動き回られるのは目ざわりだ。このシードラゴンが貴様を倒すためにわざわざ出向いてきたのだ」
シードラゴンと対峙したシャカは違和感に襲われた。
どこかでシードラゴンと会ったことがあるような気がするのだ。
この男から感じる、黄金聖闘士に匹敵する強大な小宇宙には初めて会う気がしない。
シャカの動きがピタリと止まる。
「フッ、どうした、シャカ…?まるでヘビににらまれたカエルのように動けなくなったか。よかろう。恐怖は少なくてすむよう、一瞬のうちに葬ってくれるぞ!!受けろ!!」
シードラゴンの両手を頭上で交差する独特の構えをシャカは知っていた。
「む……、こ…この技はッ」
「ギャラクシアン・エクスプロージョン!!」
星々をも砕くほどの破壊力がシャカを襲い、吹き飛ばした。
しかし、双子座のサガのギャラクシアンエクスプロージョンを知っているシャカは、どんな技が来るか予測していたので空中で体勢を立て直して着地した。
「バ…バカな…、こ…この技は、双子座の……、君はいったい何者なのだ?」
シャカは驚愕とともにシードラゴンにその正体を問う。
「フッ、そんなにこのオレの正体が知りたいか…よかろう、とくと拝め!!」
「あ…ああ!!や…やはり…!!君は、死んだはず……」
シードラゴンのマスクの下から現れたその素顔。
それは双子座のサガと同じ顔だった。
「生きていたのか、双子座のサガの弟、カノンよ!」
「そうだ、オレは双子座のカノン!!」
サガとカノンは星座の名のとおり双子だった。
だが、双子とはいえカノンはサガとはまるで違う。
サガは善と悪の二心にさいなまれているが、カノンには悪の心しかないからだ。
何故カノンがポセイドンに与しているのか?
だがその問いには答えずカノンはシャカに攻撃しようとして――その動きを止めた。
乙女座のシャカはただ一人八識に目覚めており、自由に冥界と行き来が出来る、殺しても死なない男だ。
ここでとどめを刺しても蘇ってこられては面倒、ならばいっそ違う次元へと飛ばすという。
サガの得意技アナザーディメンションをカノンも使うのだろうか?
だがカノンは兄の技ばかりを借りるつもりはないと言い、手で空間に大きく三角形を描いた。
「落ちろシャカ!!時のはざまに!!ゴールデントライアングル!!」
カノンによって開かれた別次元の宇宙に飲み込まれ、シャカは消えた。
北大西洋には魔の三角地帯と恐れられている場所がある。
その三角形の地域に入り込んだものはこの世から消滅するのだ。
シャカの肉体は未来永劫異次元をさまよい続けるだろう。
これでやっかいな奴は片付いたとカノンは一息つく。
ポセイドン神殿に乗り込んだ黄金聖闘士で最も恐るべき男が片付けば、水瓶座や蠍座など恐れるに足りない。
「見ていろ、サガよ、お前のような半端なやり方ではなにも手に入らん、今こそこのカノンが正しかったことを証明してやる。地上どころか海界までもこの手中に収めてな…フフフフ…」
カノンは自分の守護する柱の前に戻っていた。
恐ろしい小宇宙が自分の柱に近づいてきている。
ソレントの守護する南大西洋の柱が破壊されたことを察知したカノンだが、ここを動く訳にはいかない。
カノンは敵が近くに迫っていることを確信し北大西洋の柱の前を動くことができないでいた。
「フッ、私はいかなる時空からも戻れると知らなかったらしいな」
カノンの前に現れたのは乙女座のシャカだった。
殺されても死なない、異次元に葬り去っても舞い戻ってくるシャカの人外っぷりにカノンは驚嘆するが、シャカは全く意に介さず、同じく異次元を駆使する兄サガの名を出し、挑発する。
「貴様このカノンがサガよりも劣るというのか…」
「フッ、それは君自身が一番よくわかっていることではないのかね。カノン」
再び炸裂するギャラクシアン・エクスプロージョン。
しかし、シャカは微動だにしなかった。
「言ったはずだ、君はサガよりも劣ると!」
激昂したカノンの幻朧拳を、シャカのカーンが跳ね返した。
カノンの意識は過去へ遡っていく……。
13年前ギリシア聖域――
カノンは兄のサガに殴り倒されていた。
教皇と女神の殺害を教唆し、サガに制裁を受けていたのだ。
平然と弑逆を勧める弟に怒り狂うサガだったが、カノンの態度には何故か余裕が垣間見える。
心優しき神のような男として育ってきたサガ。
悪事ばかりを好んでしてきた悪魔のようなカノン。
「だがオレは知っているのだぞ。兄さんの心にオレと同じ悪が眠っていることをな…」
ついにサガはたまりかね、自ら弟をスニオン岬の岩牢に幽閉した。
「出せ!!サガ、オレをここから出してくれ―ッ弟のオレを殺す気か―ッ」
女神の許しがあるまで入っていろと厳然と言い放って去る兄の背に、カノンは喚き散らした。
「お…おのれ―ッ、サガお前のような男こそ偽善者というのだぞ!!いつまでも悪の心を隠しおおせると思うな!!力のあるものが欲しいものを手にしようとしてどこが悪い!!神が与えてくれた力を自分のために使って何故いけないというのだ!サガよオレがいつもお前の耳元に囁いてやるぞ!悪への誘惑を!!サガよ、お前の正体こそ悪なのだ―ッ」
一瞬反応したように見えたが、それだけだった。
サガは一度も振り返ることなく、弟を見捨てて去って行った。
それから間もなくして、カノンはこの岩牢で、恐ろしいものを手に入れたという……。
北大西洋の柱の前でカノンは自分が放った幻朧拳にとらわれている。
シャカは重ねて問うた。
岩牢で手に入れたものとは何なのか……。
カノンは思い出していた。
十三年前、スニオン岬――
神話の時代、女神が捕らえた敵を懲らしめのため閉じ込めたと伝えられる岩牢。
人間の力では出ることができず、満潮時には内部まで海水で埋まるその牢で、カノンは幾度も死にかけていた。
十日間ほど生死の境をさまよいながら、カノンはなんとか生きていた。
息も絶え絶えになりながら、こんなところへ閉じ込めてくれた兄と女神への呪詛はやまない。
そんなとき、牢の背後の岩壁から不思議な光が漏れていることにカノンは気づいた。
壁を抜いて脱出できるかと場所を選んで岩を砕いた彼の目に映ったのは、海皇ポセイドンの三叉の鉾だった。
アテナの名で封印されていたその鉾は、何と既に封印が弱っており、カノンの力でも簡単に引き抜ける。
その途端、吹き出る水と共に海底に引きずり込まれたカノン。
そして足を踏み入れたのが、海底のポセイドン神殿だった。
何千年も誰一人訪れたことのないような静寂の神殿で、カノンは七つの海将軍の鱗衣とポセイドンの鱗衣、そして先ほどと同じく女神の封印が施された壷を発見する。
その壷を開いた瞬間、中から飛び立った霊魂――それが永の眠りについていた海皇ポセイドンだった!
「誰だ!?私の眠りを妨げた者はお前か!」
ポセイドンに詰問されたカノンは、咄嗟に平伏し、口から出まかせを並べ立てる。
女神の封印などものの数ではなく、起き上がるべきときには自分の意志で起き上がるというポセイドン。
彼と女神との戦いは、ここ数百年途絶えていた。
つい最近女神が地上に降臨したことも、自分が理由とは考えにくいという。
そのとき、ポセイドンは何かに思い当たった。
「そうだ思い出したぞ。アテナがその死力を尽くして二百数十年前に戦っていた相手は…あいつだ!!」
いぶかるカノンだったが、ポセイドンはそれ以上話さない。
名を問われ、カノンはこれも咄嗟にシードラゴンと名乗った。
女神が赤ん坊として降臨したなら、まともに活動できるのは十数年後。
それまでポセイドンは再び眠りにつくと言い、自分の意志をソロ家の嫡子ジュリアンの体内に眠らせること、水の面に広がった自分の意志により海闘士が集結してくることを告げて、姿を消す。
カノンは千載一遇のチャンスに歓喜雀躍した。
「ポセイドンよ、起こすなというなら二度と起こしはしない。あなたの大いなる意志だけを利用させてもらうぞ」
あくまでも傀儡としてジュリアン・ソロの肉体の中で永久に眠っていてもらおう。
ポセイドンの名のもと、このカノンが全ての指揮権を握る!
そして海闘士たちを操って地上を征服してくれるわ!
地上も海界も全てこのカノンのものとなるのだ!!
「見ていろサガよ!このカノンが大地と海の神となるのだ!!ウワーッハハハハーッ」
それが、シードラゴンのカノンの誕生だった。
「なるほど、そういうことだったのか」
シャカは訝しく感じていた。
ポセイドン軍の七将軍が、あまりに弱すぎることを。
だがそれも、寝ぼけたポセイドンの加護を十分に得ていないからと考えれば辻褄があう。
「神をあざむく大罪を犯そうとしている君を神は許さないだろう。そら、神の怒りは既に君の体を蝕んでいるようだぞ?」
……叫び声を上げて気がついたとき、カノンはもとの北大西洋の柱の下にいた。
カノンの見た幻覚によってシャカは全てを知った。
「貴様…!」
カノンは激昂してシャカに殴りかかった。
サガの反乱で内部分裂した聖域を、カノンは問題にもしていなかった。
ポセイドンの名のもと無人の野を行くがごとく地上を制覇できるはずだったのだ。
しかし、現実にはたった三人の黄金聖闘士にポセイドン神殿は半ば攻め落とされている。
それは誤算だったが、それでも自分の勝ちだとカノンは確信していた。
自分が昔サガに負けたのは、サガが黄金聖衣着用で自分は丸腰だったからだ。
だが、今は自分にも鱗衣がある。
自分の実力はサガに勝るとも劣らない。
サガに従っているシャカなど、自分が本気になれば倒すことは可能だ。
今度こそとどめを刺すとカノンはシャカに向き直った!
そんな時、北大西洋の柱の元にまたカノンの知る小宇宙が現れた。
対峙していたシャカとカノンは、笛の音色にギクリとした。
二人の前に姿を現したのは海魔女のソレント、牡牛座のアルデバランを倒した男だった。
「海魔女よ、無事だったか!これで二対一だ、今こそ引導をくれてやるぞシャカ!」
勝ち誇るカノン。
しかし全ての事情を知ったソレントは、シャカに敵対しようとはせず、海底神殿とともにカノンの企てを終わらせようとする。
天秤座の武具を受け取ったシャカは、気合一閃、北大西洋の柱を叩き壊す。
そして、ポセイドンを封じる方法を求めてカノンに向きなおるのだった。
砕けた北大西洋の柱の下。
地上の崩壊と滅亡はすでに決まっている。
しかし潰えた野望の仇に、カノンはシャカだけでも息の根を止めようとしていた。
実力はほぼ伯仲していた二人だったが、そこにソレントの魔笛が響き渡る。
ソレントは、ポセイドンを信じて集い、そして死んでいった仲間たちのため、カノンを生かしておけないと宣告する。
しかし、シャカはソレントのその行動を止めた。
シャカの狙いはポセイドンを封じるただ一つの方法……すなわち、十三年前彼を解き放ったアテナの壷にあった。
「アテナの壷はどこにある」
シャカは無表情でカノンに詰め寄った。
「オレが教えると思うか?」
アテナの壷の在処を教えまいとするカノンに笛を吹き始めるソレント。
カノンは耳を押さえたが、そんなもので防げる魔笛ではない。
「ぐ…、くうっ!」
ソレントの必殺技、デッドエンドシンフォニーによりカノンの小宇宙は100分の1に低下した。
小宇宙が低下した状態では、鱗衣はただの重い防具でしかない。
カノンは鱗衣の重さに耐えられず、海底神殿の床に崩れ落ちた。
「フッ、今の君の精神ガード力などもはやないに等しい。…メインブレドウィナか」
精神攻撃を得意とするシャカには小宇宙が100分の1に低下したカノンの心を読むことは赤子の手を捻るよりずっと容易いことだった。
「君は私がとどめをさすには値しない男よ」
シャカはカノンにクルリと背を向けるとメインブレドウィナ目指して走り去った。
「ま、待て、シャカ!」
鱗衣の重さで立ち上がることさえ出来ないカノンにシャカを止めるすべはなく、シャカの後ろ姿を指をくわえて見送ることしか出来ない。
カノンは遠ざかっていくシャカの背中を見つめながら、おのれの野望の終焉を悟るのだった。
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