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聖闘士☆矢(年齢制限なし)
シャカの手料理(2013シャカ誕記念リアシャカ)腐向け
 リアシャカが獅子宮で同居そうそう食事の好みの違いに直面する話。
 うちのシャカは辛党です。

 獅子座のアイオリアと乙女座のシャカの同居生活は、聖戦が終わり、生き残りの黄金聖闘士達が地上に帰還した日から始まった。
 処女宮はアテナエクスクラメーションの応酬の結果、廃墟と化しており、駐在出来る状態にはないことからアイオリアが獅子宮に住むようシャカを説得したのだ。
 どういう風の吹き回しかとアイオリアを閉じた瞼越しにしばらく見つめていたシャカはやがてアイオリアが処女宮でアテナエクスクラメーションを撃ち合った六人のうちの一人と知って納得した。
 罪滅ぼしと解釈したのだろう。
 相手の記憶の一場面を垣間見ることは出来ても心が読める訳ではないシャカに、アイオリアが自分に向ける好意の種類を識別することなどできるはずもない。
 だからシャカは、隣の宮にいた方が自宮の再建作業を見に行きやすいから都合がよいだろうというアイオリアの提案を額面通りに受け取り、しばらくの間、獅子宮に居候することに同意した。

「アイオリア、食事の支度が出来たぞ」
 世話になるのなら食事の支度くらいはすると殊勝な態度で申し出たシャカの言葉に、台所の使い方を教えたアイオリアであったが、食卓に並べられた彩り豊かな皿の数々を目にすると怪訝な顔をした。
「む?これは…?」
 緑、黄色、赤、橙といった色彩は見た目だけなら美しいと言えるかもしれない。
 しかし、テーブルにあるだけで涙が出てきそうなこの強烈な刺激の発生源はなんなのだろう。
 シャカはいつもの通り目を閉じたまま答えた。
「グリーンピースのポタージュ・わさび味に野菜の煮込み料理、あと粥だが」
 わさびは最近ではフランス料理にも取り入れられているようだが、ギリシャ料理では馴染みのない調味料である。
 先入観なしに口に入れたアイオリアは鼻がツンとするのに閉口して黄色い野菜の煮込みにスプーンを突っ込んだ。
 いかにもシャカが好きそうなカレーの匂いがする。
 カレーならさほど当たり外れはないであろうというアイオリアの予測はしかし、外れた。
 辛いのだ。
 どう少なく見積もっても市販のカレーより100倍は辛い。
 舌を焼き尽くすかのようなとてつもない味に目を白黒させたアイオリアはかろうじて尋ねた。
「…そっちは?」
 シャカは赤い皿から何かを取り皿に取り、更に何かを振りかけている。
「カブとニンジンと玉ねぎとトマトの煮込み、タバスコ味だ」
 野菜本体の味は甘みのあるものばかりである。
 タバスコ味というのが引っかかるが、100倍辛いカレーよりはタバスコの方がはるかに舌に優しいのでは…。
 アイオリアの辛さ判断基準は既に相当ダメージを受けているが本人はまだ自覚していない。
「そっちの皿の方がうまそうだな」
 シャカは実においしそうに食べる。
 痩せの大食いという言葉を地でいく健啖ぶりである。
「…これは少し辛いから、君の口に合うかな」
 シャカがシャカにしては珍しくなんだか心配そうに言いながらもよそってくれる。
 アイオリアに言わせれば今までのが滅茶苦茶辛いので、これより辛いものなどそうそうあるまいとタカをくくっていたのだが、それはとんでもない間違いだった。
「?!」
 アイオリアはカブを口に入れた途端、盛大にむせた。
 辛すぎて涙が勝手に出てくる。
 いっそ味覚を断ち切ってくれと言いたくなるレベルの辛さだった。
 辛党のシャカにとってはごちそうでもアイオリアにとってはほとんど毒物に等しい。
「大丈夫かね?これは自分用に少し辛く作ったので素人にはつらいかもしれぬ。口直しにこれでも飲んで粥を食べるといい」
 責任を感じてか、シャカはアイオリアの背中を優しい手つきでしばらくさすった後、アイオリアにコップを差し出した。
 アイオリアはシャカに差し出されたコップを疑り深そうに見つめた。
「まさか飲み物まで唐辛子とかマスタードは入れてないだろうな」
 シャカは苦笑した。
「フッ、ただの牛乳だ。昔、唐辛子飲料が市販されていたので買ったことがあるが、あまり好みではなかったな。君が飲んでみたいと大地に頭を擦り付けて頼むなら再現してやってもいいが」
 シャカは自分用の皿に先ほども入れていた縦長の容器を手に取った。
 その際、チラッと見えた毒蛇の絵に危険を感じたアイオリアが即座に断ると、シャカはあっさりとテーブルに戻した。
「粥はチリソース味にしてみた。我ながらいい味だと思う」
 卵の入ったチリソース味の粥は、最初の一口はなかなか美味で、アイオリアが今日食べた中では唯一いけるかと思われたが、中に混入していた唐辛子のせいで大変なことになった。
「…シャカ、これはなんだ?」
 アイオリアの知る一般的な唐辛子よりべらぼうに辛いそれを口から吐き出したアイオリアはかなり険悪な顔をしていた。
「ブート・ジョロキアだな。ハバネロより辛いとギネスで認定されたのを知らないかね?」
 現物を見るのも口に入れたのも初めてだが、インド原産の唐辛子が世界一辛いと認定されたことはアイオリアも知っていた。
 そんなものを粥にさりげなく混入するのはやめろ。
 今日がシャカの誕生日でなかったら、一発殴っていたかもしれない。
 アイオリアは口直しに牛乳をがぶ飲みしながら、シャカに料理は二度と作らせない、シャカの料理は決して食べないことを固く心に誓っていた。

 獅子誕に間に合わなかったので乙女誕に回した小ネタ(シャカがアイオリアのために料理するが、劇辛料理で悲惨な目に…)を回収。
 シャカは人に作ってもらったらなんでもおいしく食べそうだけど、ブート・ジョロキアがインド原産だからなのか、何故だか激辛好きなイメージがあります。
 デスソースをいろいろ試して創作料理作ってたり、カレー屋さんでいつの間にか辛さ新記録を樹立したりしてそう。
 年相応に楽しそうに食べてるシャカはきっとかわいいと思います。
 シャカ誕生日おめでとう!

 ちなみに毒蛇のパッケージの調味料は辛党界で有名なヴィ〇ャス・〇ァイパーです。
 

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あきゅろす。
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