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聖闘士☆矢(年齢制限なし)
聖戦後(シャカ+ムウ)2013乙女羊祭出品作品
 私物が消滅してしまうとさぞかし苦労するだろうなぁとシャカに同情していたら浮かんできたネタ。

 ハーデスとの聖戦を経て、冥界から地上に帰って来た乙女座のシャカは、自分の守護すべき処女宮を見てしばし呆然とした。
「いくらアテナ・エクスクラメーションと言えども、天舞宝輪の結界内でこれほどの破壊力を発揮出来ようはずがない。私が冥界に行った後、ここで何があったのだ…?」
 瓦礫と化した処女宮の惨状を目にしたシャカの問いに答えられる者は誰もいなかった。
 不自然に目を泳がせる同僚達を心眼で見つめたシャカは、八感発揮=冥界から生還した同僚三人VS慟哭の三人によるアテナエクスクラメーションの応酬という真相にたどり着いてうんざりしたようにため息をついた。
「…いったん修行地に帰っていいかね。黄金聖衣はチリと化した上に着替えもない。食事や托鉢用の持鉢もない。入り用なものを調達してこなくては」
 ガンジス川流域の修行地に帰る気満々のシャカだったが、黄金聖闘士の半数が嘆きの壁で散った今、アテナ不在の聖域を守るには結界技に遠距離攻撃、幻影による幻惑まで使える万能系のシャカを欠く訳にはいかない。
 シャカの希望は当然ながら退けられ、シャカは第一の宮白羊宮に居候することになった。
 この決定は、シャカが生き残り黄金聖闘士の中ではムウと比較的仲がいいという個人的な事情より、黄金聖衣の修復作業で困難が予想されるムウの負担を減らすという公の事情、黄金聖闘士最強級のシャカを第一の宮に配置することによって防衛力強化を図るという戦略構想の結果であった。
「着替えはこれを。身長は同じくらいのはずだし、多分着られると思う」
 シャカはムウから差し出されたタグがついたままの新品に手を出そうとしなかった。
「…チベットは仏教圏だったと記憶しているが。仏の着るものは糞掃衣と決まっていよう」
 私有財産を持たないという観点から、ブッダや仏弟子は墓地などで拾ったりもらったりしたものだけを着た。
 糞掃衣というのは、今でいうトイレ掃除くらいにしか使えない古布を洗い、縫って染め直して再利用したからついた名前なのだ。
「……それはつまり、袈裟…?」
 現代では糞掃衣と袈裟を混同しているが、シャカは説明するのが面倒くさくなった。
 青銅聖闘士相手にセブンセンシズについて一時間も説明したムウの説明好きは聖闘士としてはむしろ例外で、シャカは決して説明が得意でも好きでもない。
「違う。別に袈裟でなくてもかまわぬが私は新品は着ない。古着でよい」
 シャカの手持ちの衣類は元々、全部誰かからの貰い物だった。
 買ってみたらウェストがきつかったとかそんな理由で新品同様のものが回ってきたこともあるが、一応お古には違いない。
「古着って、急に言われても…、ちょっと待って」
 せっかく端正な顔立ちをしていて、おしゃれしたら格好いいだろうに、古着しか着たくないとは、なんてもったいない。
 そう思いながらムウはいつか買い求めたジーンズを見つけだした。
 奮発して買ったのに、太ももがパンパンで仕方なくタンスの肥やしにしていたものだが、痩せ形のシャカなら入るだろう。
「これならどうだ」
 ウォッシュ加工済みのジーンズをシャカは抵抗なく受け取った。
「これはいいな。履き心地がなかなかよい」
 首回りがいささかくたびれたTシャツにジーンズをはいたシャカは黄金聖衣を纏っていないにも関わらず後光が差して見えた。
「そう…それはよかった」
 一度履いただけのジーンズをシャカが普通に受け取ったことから、シャカにおしゃれをさせるヒントをムウは得た。
 いつかシャカに高級ジーンズをプレゼントしてあげたい、と野望を抱くムウをよそに、(さしあたって明日履くパンツをどうすべきか)とシャカはひそかに頭を悩ましていた。

 一見、コンビどまりのようでも、ムウにパンツをくれとは言えずにシャカが悩んでいるあたり、恋愛要素が含まれる気が。
 何年か前の仮面ライダーがたしか、明日履くパンツがあれば幸せ的なことを言ってたこともふと思い出しつつ。

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