聖闘士☆矢(年齢制限なし) ともに食事を(2012獅子誕リアシャカ)腐向け 「誕生日おめでとう」 獅子座のアイオリアの恋人は、獅子宮の隣の宮を守護する黄金聖闘士だが、彼は星の一生単位で物事をとらえている壮大なスケールの持ち主で、およそ時間の感覚などなさそうな男である。 だから、アイオリアにしてみれば、まさか誕生日当日獅子宮に現れた恋人の口から誕生祝いの言葉を聞けるとは夢にも思わなかったし、青天の霹靂であった。 「…………熱でもあるのか、シャカ」 そう言った瞬間、抜く手も見えない光速拳をお見舞いされ、アイオリアは吹っ飛んだ。 シャカには特殊系主体のイメージがあるが、それはあくまでもイメージであって、シャカの光速拳は速い上に威力も強烈である。 冥衣黄金が三人とも、シャカの光速拳を食らって重ね着冥衣をあっけなく破壊されたのにはそれ相応の理由がある。 アイオリアは身をもってシャカの生身の拳の威力を痛感させられた。 「…目は覚めたかね。馬鹿は死ななきゃ治らないというならもう一度冥界へ送ってやってもよいが」 アイオリアはシャカとは長いつきあいだが、今まで一度も冗談など聞いたことはない。 このままでは本気で六道輪廻を食らわされかねないと判断したアイオリアは、急いでシャカの機嫌を取ることにした。 「お前がオレの誕生日を祝ってくれるとは思わなかったから驚いたのだ、すまない。詫びと言ってはなんだが、一緒に飯でもどうだ?」 シャカはフッと笑った。 どうやら機嫌は治ったらしい。 その代わり、アイオリアはシャカの機嫌を取るべく朝から光速で料理をするハメになってしまったが――。 「君の料理はうまいな」 アイオリアの努力は報われたらしい。 シャカはすこぶる上機嫌でおかわりを繰り返していた。 ほうれん草とベーコンのソテー、ブロッコリーとカリフラワーのサラダ、野菜スティックの人参、セロリ。チーズにサラミ、グリルソーセージ、フライドポテト。 食卓からみるみるうちに食べ物が消えていく。 大鍋いっぱい作ったはずのミネストローネはとっくに全部平らげられてしまっている。 「よく食うな。お前大丈夫か!?」 アイオリアは段々心配になってきた。 シャカはアイオリアよりずっと痩せているというのに、どう少なく見積もってもアイオリアの倍は軽く食べているのである。 「君の取り分をすっかり減らしてしまったようだな、すまぬ。…ごちそうさま」 未練たらたらなのがあからさまに分かる態度で名残惜しそうにフォークを置いたシャカがなんだかかわいく思え、アイオリアは自分の皿からいくらか取り分けてやった。 「まだ物足りないんだろう?これも食っていいぞ」 「ありがとう」 シャカが嬉しげに礼を言った。 シャカはよっぽど嬉しかったらしい。 普段片付けなど手伝ったこともないシャカが珍しく私にまかせたまえと言ったくらいだ。 アイオリアはふと気になって、そっと様子をうかがった。 シャカのことだから、汚れた食器や鍋を異次元に始末して片付けたなどと言いかねない。 「…天空覇邪魑魅魍魎!」 シャカは数珠を振るって魑魅魍魎を召喚していた。 魑魅魍魎にテーブルや食器を全て片付けさせるシャカを見て、不気味な魑魅魍魎どもがなんだかかわいそうに思えてきたアイオリアだった。 そして、どうやったらあの魑魅魍魎どもをシャカの機嫌を損ねずに元の世界に返せるのかと思い悩みながら、アイオリアはそっと扉を閉じてさっきの光景は見なかったことにするのだった。 脳はかなりエネルギーを消費するので、精神系の技を使うシャカはきっと痩せの大食いだと思います。 まず胃袋を手なづけてから少しずつ接近していくのがシャカには意外と効果的?という話。 [*前へ][次へ#] |