[携帯モード] [URL送信]

バスケ漫画小説(年齢制限なし)
【黛黒】外国留学したら思いがけない人と再会した話
 クロスオーバー作品です。
 赤→黒前提で、赤司くんの求愛から逃げてきた黒子くんがガイドの鳩沢くん(トリマニア一巻の表紙にアップがあり外見は黛さんに似ているが、翼を持つ鳥人間。日本人女子留学生に絶賛片思い中)と出会い、トリマニア世界の人間模様にいつのまにか巻き込まれていく。
 黛さんは後半から重役出勤。
 こんな感じで大丈夫な方はお進み下さい。





 トリマニア共和国。人口約一億人。
 トリマニア人は翼を自由に出し入れし、飛行するという性質を持つ鳥人間である。
 そんな国に留学生としてボクは足を踏み入れた。
「トリマニアへようこそ。ガイドの鳩沢グリージョです、なにとぞよろしく」
 鳩沢グリージョという顔写真つきの名札をぶら下げた長身の男性はボクの知っている人にぱっと見よく似ていたので、ボクは思わず名札と彼の顔を二度見した。
 身長はあの人とほぼ同じだがよく見ると鳩沢さんの方がわずかに低い。髪は灰色だが青みはかっていないし目は黄色い。何より存在感が希薄ではないからよく見れば似てないところも多いのだけど、一見自己主張が控えめなところとか一度だけ試合で対戦したあの人をなんとなく連想してしまう。
「黒子テツヤです。よろしくお願いします」
「?どうかしました?」
 この人、鳥人間のせいか勘が鋭いみたいだ。
「知ってる人に似ていたので……、鳩沢さんには日本人の親戚はいますか?」
 鳩沢さんは無表情で否定した。
「いませんね。黒子さんは東京出身でしたっけ?」
 敬語なんだ……。
 黛さんはボクに敬語なんか嫌味以外では使わないだろう。
「はい、東京から来ました」
 ちなみにトリマニア共和国の公用語は日本語なので、今までの会話は全て日本語です。
 日本語万歳。
「俺は東京に知り合いいませんので心当たりはないですね。とりあえずどこから案内しましょうか」
 鳩沢さんに似ている知り合いは東京の人ではないんですが、初対面の人にそこまで話すほどではないかなとボクは話題転換を受け入れました。
 まず留学する大学の手続きに同行して欲しい旨を伝えると鳩沢さんは頷いた。
「鳥間大学ですね。じゃあ大学へ行ってキャンパスを案内してって感じでいいですかね」
 鳩沢さんはあまりやる気がなさそうに歩き始めた。
「はい、お願いします」
 鳥間大学へ向かう途中、保育園を脱走した小さな雛鳥たち(と言っても翼が生えた幼児のような見た目と大きさ)とそれを追いかけてきた黒い羽根をした目つきの悪い男性保育士さんと出会い、雛鳥を一羽捕まえてあげるとその男性は驚いたようだった。
「おうグリージョ。その忍者みたいなん誰や。知り合い?」
「鳥間大学に編入されるそうなんで、俺の後輩になるのかな。彼は今日初めて会っただけの他人ですよ。黒子テツヤさん、こちら烏谷コルヴォさん。家が近いので昔から顔を合わせることが多かった他人です」
 それ普通幼なじみって言いませんか?
 雛鳥たちを両腕で抱っこしている烏谷さんの真似をしたら腕がブルブルしたので一羽を抱っこして一緒に鳥間保育園へ歩いていく。
「翼があっても普段は歩きなんですね」
 感心して言うと鳩沢さんが呆れたように言った。
「あかりさんと同じことを言うんですね。俺達だって生き物だから飛べば疲れますし、飛行機にも電車にも乗りますよ。そんなに飛ばせたいんですか」
 あかりさんというのは女性向けの宿屋『とまりぎ』に泊まっている女子留学生だそう。
「あ、いえ。……すみません」
 黄瀬くんみたいに女性にモテモテな郵便配達人の鴎野セルリアンさんも、とまりぎの女主人でお酒が大好きな鶉橋マローネさんも鳩沢さんの友人らしい。
 鶉橋さんには、寒いポエムをつぶやくと家電品が故障するというありがたくない特技があって、冷蔵庫が壊れたというのでみんなで冷蔵庫の品物を救出したりバタバタした。
 この人、キャラが濃い知り合いが多すぎる気がしますけどこれが普通なんでしょうか。
「そういえば、とまりぎが女性向けということは、男性用の下宿はどこになるんでしょうか。そちらも案内していただいてもいいですか?」
「下宿の指定は特になかったようなので俺の知り合いの家にホームステイしてもらうことになります。俺ん家には妹がいるんでちょっと都合悪くて」
 鳩沢さんは大学でその相手と待ち合わせていると言って、ダッシュで入学手続きを終えた後、学食にボクを案内した。
「おせえぞグリージョ」
 久しぶりに聞く声がどこからか聞こえた。
「ちょっと出先でトラブルがあったから……。でもどうせラノベ読んでたんだろうし問題はないだろ」
 鳩沢さんに話しかけてきたのは案の定、黛さんだった。
 赤司くんから聞いていたけど、かわいい女の子が表紙のラノベを手に持っている。
「問題なら大ありだ。日本から来た18歳の男子留学生を一名受け入れろって普通に嫌だけど?赤司とか赤司とか赤司とかのせいで、日本にはろくな思い出がないんだよ、お前ん家で引き受けろよ」
 赤司って三回も言うほど嫌なんだ……。
 決勝であの仕打ちを受けて平気でいられる人はいませんよね、分かりますよ。
「うちはピノがいるから男は住まわせらんねえの。お前ん家なら女きょうだいいないし問題ないだろ」
「ハーゲンダッツが好きなピノか、そういや何年も会ってねえな。でもあいつならダメって言わないだろ、知らない奴と同居なんて気を使うからオレは絶対いやだ」
 ピノって鳩沢さんの妹さんの名前みたいですね。
 くしくもアイスの名前の。
「お前のはただのワガママだろ!こっちは正当な理由が……」
「お前のはただの過保護だ。料理男子とか言って全部家事やっちゃう系だろ。ピノがどうしたいのかちゃんと聞いたことあるのかよ」
 激しい口論を始めた二人に割って入ってボクは黛さんに声をかけた。
「黛さん……決勝では赤司くんがご迷惑おかけしました」
 ボクが話しかけると黛さんは目を見張った。
「日本人留学生ってお前だったのか……。なんでトリマニアに?珍しいものなんか何もないだろ」
 黛さんは感覚が麻痺しているのか自分が面白人間に囲まれている自覚がないらしい。
「それはこっちのセリフです。黛さんはどうしてトリマニアにお住まいなんですか?」
「そりゃオレトリマニア人だから」
 ボクはあっと思った。
 鳩沢さんに日本人の親戚はいるかと聞いたから、鳩沢さんはいないと答えたけど日本の高校に通っていた人ならいたのだ。
「黒子さん、こいつと知り合いだったんですか?東京と京都でどうやって知り合ったんですか」
「高校時代にバスケの大きな大会で対戦しました。彼はボクの中学の時のキャプテンの相棒だったんです」
 翼があって飛べるトリマニア人にバスケはどの程度知名度があるんだろう。
 分からないので知らない人でも分かるように噛み砕いて説明すると鳩沢さんは首を傾げた。
「バスケってチームの全員がずっと羽根をしまった状態でボールを相手チームの籠に入れて点が多い方が勝つスポーツだっけ?」
「そう。試合中に羽根出したら飛ばなくてもファウルになるやつ」
 黛さんは普通に答えた。
 えっそのルール初めて知りましたけど。
「お前すぐカッとなって羽根出して退場しそう」
 鳩沢さんに言われて黛さんはムッとした様子でした。
「負けたけど、羽根は出してねえよ。オレの意志の強さを褒め称えろや。リバウンドとかで負けると羽根出したくなるからなるべく根武谷と実渕に任せて飛ばないように努力してたんだぜ」
 PFなのにめったにリバウンドに参加しなかった理由がうっかり羽根を出すと困るからだったなんて知りませんでした。
「そういえば、成鳥で羽根を出している人をめったに見ませんね。何か理由があるんですか?」
 烏谷さんも雛鳥を捕まえる時は飛んで来たけど、すぐしまってしまったし。
 鳩沢さんが言った。
「邪魔だからです。急に羽根を出すと誰かにぶつかったりして迷惑なので、トリマニア人は小さいうちにまず羽根のしまい方を覚えるんですよ」
 天使みたいでカッコいいと思ったのに案外夢がないんですね……。
 なんだかがっかりです。
「黛さんにも羽根があるんですか?飛んでいるとこを見てみたいです」
 黛さんはチッと舌打ちした。
「洛山に留学してた間、ずっとしまいっぱなしだったからな、急に飛んだら筋肉痛になって墜落しそうで嫌だ。それにこのへんは飛行禁止区域だからダメだ、あいにくだったな」
 その時、ミニスカートの制服の中学生か高校生がバッサバッサと飛んで来た。
「お兄、600嘴(チュン)貸して」
「ピノ……、お前わざわざ大学までたかりに来るなよ」
 鳩沢さんが財布を出しながら苦情を言った。
 これが噂の鳩沢さんの妹さんですか。
 チュンというのはこの国の通貨です。
 鳩沢さんの妹さんは舌打ちした。
「は?いいじゃんケチかよバーカ」
 兄妹のくだらない言い争いをよそにボクは黛さんに言った。
「飛行禁止区域なら鳩沢さんの妹さん飛んで来られないんじゃありませんか?嘘ついてません?」
 黛さんは舌打ちした。
「飛んでいいとことダメなとこが入り組んでんだよこの辺。日本で言えば、一方通行が多くて知らない人間にとっては運転したくない道みたいなものだ。高度制限や速度制限もいろいろややこしくて間違えたら罰金だし面倒くさいのなんの」
 ボクは黛さんより死んだ目になったかもしれません。せっかく飛べるのに夢がないですね。
「それに日本に三年も住んで羽根しまいっぱなしの生活になれるとあんまり飛ぼうと思わなくなるな。飛ばなくても生活出来るから。もちろん急ぎの時は飛んで行く方が早いけど」
 黛さんって逆に言えば日本に三年しかいなかったんだということをボクは初めて知りました。
「黛さん、黛さんがトリマニアにいることを赤司くん達は知ってるんですか?」
「進学先が鳥間大学なのは高校経由で調べれば分かるだろうが、あいつが卒業した駒にいまさら興味を示すとは思えないな。誠凛と違って洛山は仲良しこよしとかやってきてねえし」
 そうでしょうか?
 黛さんの中で赤司くんはどんな冷酷非情な人だと思われてるんでしょう。
「あっ!ピノさん!グリージョさん!グリージョさんの親戚の人もいる!」
 なんだか小柄な元気のいい人が黛さんを指差した。
「こら、人を指差すな」
 今度は身長がすごく高い人(190センチ以上ありそう)が小柄で元気な人をたしなめて黛さんに軽く会釈した。
「あの……何人増えれば気がすむんですか」
「大学生が大学にいたら知り合いに会うのは当然だろ。ちなみに小さいのはピノの彼氏のカワセミで、大きい方は四年の鶴本さんだ。疲れたならさっさと帰るしかないな」
 黛さんが突如バサーッと羽根を出したのでボクは驚いた。
「ちょ、黛さん、置いていかないで下さい」
 慌てて胴体にしがみつくと黛さんはチッと舌打ちした。
「しがみつくなよ飛べねえだろ。たまには肩慣らししないとマジで墜落するし」
「ボクを置いていかないで下さい」
「いや、グリージョに案内してもらえばいいだろ、あいつ日給制だからあちこち案内させても料金変わんねーし」
「今はあかりさんがいないからともかく、その話はするなって前に言ったよな?」
 妹さんにお小遣いを渡した鳩沢さんがすごく怖い顔ですごんだ。
 妹さんはカワセミさんと仲良くどこかへ飛んで行った。
「私がいると何か問題なの?」
 黒髪のポニーテールの女性が女子学生グループの中から顔を表すと、鳩沢さんは慌てて否定した。
「いいえ、なんでも。今日はバイトなのでまた一緒にお茶しましょう」
 鳩沢さんはボクと黛さんを引きずってスクールバス乗り場まで連行した。
「……さっきの子がグリージョの片思い中の相手だ。紅屋さん。赤司に言われて人間観察してせいか誰が誰を好きかだいたい分かるようになってすっかりムダなスキルを修得しちまったよ」
 黛さんはぼやいた。
「……お前って周りは見えても自分に向けられる好意には鈍感なんだな」
 鳩沢さんはボクに同情するような目を向けてからため息をついた。
「なんで突然ディスられてるんだ?オレに好意持つ奴なんてPCのセッティングをしてほしい機械音痴の奴くらいだろ」
「パソコン……!黛さん、パソコンに詳しいんですか?」
 黛さんは無表情でドヤ顔をした。
「趣味がオーバークロックだからな。自作PCを組み立てたり性能を上げたりくらいは朝飯前だ」
 素晴らしい。
「性能は普通でいいんですが、ネットに繋いだりしてもらえませんか?」
「いいけど。…ほらな。オレに話しかける奴はこういう奴しかいねえの」
 黛さんが鳩沢さんに愚痴った。
 鳩沢さんの目が何やってんですかとボクを責める。
 この時以来、ボクは黛さんに『パソコンにうといのでパソコンに強い黛さんを頼りにしている日本人の知り合い兼、高校時代のバスケでのライバル』とだけ認識された。
 ああ、そんなつもりじゃなかったのに! 



 自サイトのお題部屋にて二年前の黛誕の時から黛黒を書きたいと言ってたんですが、ようやく分量がたまったので公開します。
 トリマニアって二次創作禁止なのか心配になるくらい同人が見当たらないけど、問題あればすぐ下げますね。
 設定上、黛さんはハトの親戚です。でも鳩沢家の黄色い目は遺伝してないのでそんなに近い親戚ではないかもしれない。
 あと、まだ出てない人も含めた学生組の年齢は
 高校生 鳩沢ピノ、柄長ネーヴェ
 1回生 川蝉アラン(ピノの彼氏)
 2回生 鳩沢グリージョ、紅屋あかり(グリージョの好きな人)
 4回生 鶴本ビアンコ、雀堂パッセロ、雲雀、金糸雀
 であってると思います?
 
 鶴本くんが4年(4回生)で、グリージョくんが鶴本くんより後輩、アランくんはグリージョくんより後輩なのでこれであってると思うんですがおかしいところがあったらどなたか教えて下さい。
 ちなみにトリマニアで一番好きなセリフは、
 一生懸命したことを笑う奴には怒っていい。
 その怒りを笑う奴は殴っていい(意訳)
 というところです。
 WC決勝の洛山全員に聞かせたいセリフです。
 黛さんは全員まとめてぶん殴る権利があると思います。
 少年漫画って被害者が加害者殴ってこれでチャラなって遺恨を残さないイメージがあったんですが、黛さんが赤司くん達を殴る話は結局なかったので、もやもやする終わり方でしたね。原作黛さんが聖人君子だったからかもしれないけど自分は聖人君子は書けないのでこの黛さんは正しくない大人ルートへ進みました。赤司くん達がジャバウォックと対戦した試合の時はトリマニアにいて観戦にも行ってないのでエクストラゲーム時空の黛さん。
 ここまでお読み下さりありがとうございました。


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!