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バスケ漫画小説(年齢制限なし)
【腐向け】新型の幻の六人目と魔術師が付き合い始める話+α(黛ナシュ第4話)
 新型の幻の六人目と魔術師のシリーズ第四話。
 やっと二人が正式に交際を始めます。
 一ページ目は前書き兼注意書きと前回までのあらすじ。二ページ目は本文、三ページ目は後書きです。

 第一話の段階でナッシュが日本語分かる設定でしたが、このシリーズのナッシュはかなりの知日派。ロボットアニメやオタク関係にも詳しくなっているし、妄想力も上がってます。
 黛さんと赤司くんは黛さんいわくただの先輩と後輩ですが、ナッシュの想像の中では黛さんは誘い受け赤司くんで童貞喪失していたイメージ。
 黛さんがサーシャと輝夜の抱き枕をほしいと思っちゃうくらい百合に萌えてるオタクです。赤司くんと黒子くんに似ているとか言ってるのでそういうの嫌な方はすみません。(一応誰でも無節操に妄想する訳ではなく、サーシャ&輝夜と百合萌えの併せ技でうっかり変な電波を受信したようです。腐男子化ではないつもりです。何かいい適切なタグがあればつけていただけたら幸いです)
 黛さんのスペックを溢れそうなほど盛ってます。残念なハイスペック。
 例によって原作キャラの名前が数人、モブも一瞬だけ登場しますが実質回想のみでほぼ二人きりです。
 
 おせっせの最中の描写は飛ばしていますが、事後と下ネタがあるので一応15禁にします。
 今までわりときれいな黛さんとナッシュの話だったのでイメージぶち壊しだったらすみません。
 大丈夫な方だけどうぞ。

 

 前作までのあらすじ。
 Jabberwock対VORPALSWORDSの試合終了後の会場で、ナッシュはVORPALSWORDSキャプテンの赤司が誰かと話しているのを偶然目撃した。
 赤司が話していた相手=黛千尋に興味を持ったナッシュは黛に話しかけ、秋葉原観光の案内をさせ、アニメショップやメイド喫茶などへ行った。
 男性客でもメイド服の試着が出来るメイド喫茶で記念撮影などして解散した翌日、飛行機の搭乗口で黛とナッシュは早くも再会し、進学先の大学敷地内でもまたもや再会する(第1話)

 同じ大学(バスケの強豪UCLA)に進学した黛とナッシュ。
 ナッシュは、大学で黛を探していた東洋人三人組と出会う。彼らは黛の後輩で日本では無冠の五将と呼ばれている。修学旅行でロスのネズミの国を訪れたついでに黛に会いに来たという。
 ナッシュ、黛、葉山、実渕、根武谷の五人は他の入部希望の新入生チームと対戦し、序盤は苦戦したが幻の六人目の黛を生かすプレイで大差で勝利。
 その時ナッシュはゾーンを垣間見るが、黛は入部テストに落ちてしまう。(第2話)

 黛のところに再び日本人の後輩が現れた。
 その男は花宮真。彼も無冠の五将の一人で、同じ無冠の木吉に会いにロスに来たらしい。
 黛はTFSという企画で木吉、氷室、今吉、笠松、高尾、桃井と交流があったと知り、ナッシュはStrkyへの仕打ちを内心反省しつつ、黛の交友範囲の意外な広さに驚く。
 黛の誕生日にナッシュは実家のキッチンでくさやを焼き、異臭騒ぎを起こした。そのせいでナッシュは実家へ出入り禁止になるのだった。(第3話)




「お前、ついにヤングアダルト小説に飽きたのか?」
 黛といえばラノベ=アニメ絵の少女の表紙のヤングアダルトを持っているという認識だったが、最近はどうも様子が違う。
 最近黛が手にしているのはこっちで売ってるありふれた本であることが多いのだ。
 ついこないだサーシャと輝夜の抱き枕見つけた!めっちゃほしいといつになくテンション高く騒いでいたから、少なくともつい最近までとけいもが好きだったはずだが。
「飽きてはいねえ。むしろ餓えてる。日本の本、特に新刊は高いからそんなに買えねえんだよ。英語の勉強になるから英語の本も悪くはないがな」
 黛が手にしていたのはノーベル賞受賞した有名なスタインベックの短編集だった。
 黛は理系だから英語の文学に馴染みがないのかもしれないが、たしかこれ家畜に種付けさせる話で、種付けって単語が何回も出てくる。オレが無邪気なガキだった頃、得意げに音読して親に怒られた気がする……。
「お前その本でどんな英語を勉強する気だ?」
 赤司は白馬を飼っているそうだが、黛は馬飼う訳でもなし種付けとか覚えても日常生活や大学の勉強にはなんの役にも立たないだろうに。
「この作家がノーベル文学賞取ったってことくらいは知ってるからとりあえず一冊は読んでみようと思ったんだが。おい、なんか言いたいことあるなら言えよ」
 黛と赤司は四月に出会ってからわずか八か月でアイコンタクトで通じあえるところまでいってたのに。
 オレと黛だって知り合ってもう八か月になるがまだ全然通じあえてる気がしない。
 日本の高校の部活は長時間やると聞いているし、お互い寮生活だったから密度も濃かったのだろう。
 アメリカの大学バスケはシーズンしかやらねえし黛は入部テストに落ちて昨シーズンは選手としては一緒にやれなかったから接触自体が少なかった。
 オレも黛と同じ寮に住み始めたとはいえ日が浅いから積み重ねてきた時間と質が違いすぎる。
「その本はやめておけ」
「なんで。仮にもノーベル賞作家の作品なんだから読んでおいて損はないんじゃないのか?」
 そりゃ普通はそうだろうが。
「それ最後、仔馬が死んで終わる微妙な話だぞ」
 黛は舌打ちした。
「ネタバレすんな。オレはネタバレは嫌いなんだよ」
「ネタバレっつーかこのくらいは一般常識の範囲内だ。お前だってThe Izu Dancerのあらすじくらい知ってるだろ?」
「The Izu Dancerってなんだよ?」
 黛は聞き返した直後にすぐ気づいたらしい。
『あ、カワバタヤスナリのイズのオドリコか』
 奴は珍しく日本語で独り言を言ってから微笑した。
「イズのオドリコなら学校で習ったから知ってる。へえ、英訳でもそのまんまなんだな」
「そのまんまとは限らねえよ。ケンザブロウ・オオエのThe silent cryはたしか日本語では全然違うタイトルだったはずだ」
 ケンザブロウ・オオエも日本人ノーベル賞作家だから代表作の英訳は読んだことがある。
「The silent cry?聞いたことねえな。そんなんあったっけかなあ。まあオレ文学青年じゃねえし、大江さんにそこまで興味ないな。たしか主役の名前が不自然だとかで評論家と議論になって相手の評論家が死んだのはニュースになったから覚えてるけど」
 そんな重たいエピソードがあったのか。
 それは知らなかった。
「不自然な名前ってどんなのだ?」
 昔、宇宙英雄ペリーローダンシリーズ(くそ長いことで有名なリレー小説)の日本人だか日系人でタコってのが出て来たことがあるし、たまに日本人キャラはむちゃくちゃな名前を付けられていることがある。
「ハニー。ハニーの日本語の蜂蜜は分かるか?蜂蜜の蜜で蜜三郎とかいうんだよ」
 ハニー。
 黛の口からハニーとかいう言葉が出てきて、オレは必要以上に動揺してしまった。
 黛はそういうこと言う柄じゃねえし、ましてオレ相手に言う訳ないのは分かる。
 オレが黛を恋愛の意味で好きかどうかはさておき、最も気になっている相手なのは事実だ。
 同じ寮に入って同じ部屋になって(黛は影が薄すぎて歩く心霊現象みたいに恐れられており、怯えた奴が銃乱射事件でも起こすとしゃれにならないので慣れているオレが同室になるよう頼まれたためで、オレは何もしてない)その気持ちは強まるばかりだ。
「日本人の感覚ではそんなに変な名前なのか?」
 男にハニーがどうこうって名前をつけるのはなんか変な気もするが。
 ミツサブロウってThe silent cryの主人公の名前じゃねえの?
 結局同じ本の話してるんじゃねえか。
 ノーベル賞作家の代表作なんか読者が掃いて捨てるほどいるだろうから同じ本を読んでいたのはただの偶然にすぎないとしても気が合ったみたいで悪くない気分だ。
「変だけど、赤司征十郎って名前ほど出来過ぎではないな」
 黛にとっては一軍に引き上げてくれた恩人兼後輩でも、オレにとってはただの敵だ。
 しかも自分が所属していたチームを負かしたチームの元キャプテンでオレより能力は下のくせにチームメイトをゾーンに入れるとかオレにはない能力を持つ、目の上のたんこぶ、うっとうしいチビ。
 そんな奴の名前を聞かされて愉快な訳がない。 
「オレが赤司のこと嫌いって知ってるよな。いちいちあいつの話題振るのはよせ」 
 赤司が白馬を飼ってるとかクソどうでもいいことをオレが知ってるのは黛から聞いたからだ。
 黛の奴、赤司が黒子のことをテツヤはバニラシェイクが好物だのテツヤは国語が得意だの口を開くたびにテツヤテツヤで腹が立ったとか言ってたくせに自分もオレに同じことをしているのは笑えない。
 オレはジャバウォックの連中の思い出話とかする気もねえが、黛はしょっちゅうではないが何かの折にポロポロポロポロ赤司や無冠や火神達の話を漏らすのが気に入らない。
 影が薄いから友達なんかいないようなことを言っておきながら昔から一緒にいるのが当たり前だったように思わせるこの男がいろんな奴に好かれているのもなんか嫌だ。
 同担拒否こじらせたファンみたいなことを言っている自覚はあるが、黛が嫌われるのも好かれるのも嫌なんだよな。
 
「は?変わった名前だからちょっと言っただけだ、嫌ならスルーして別の話題振ればいいだろ」
 別の話題と言われてもな。
 お互いに柄でもなく文学の話なんか出来る程度に今は比較的ゆとりがある。
 UCLAはクウォーター制のため10週で各単位を取得することになるのでその分テストも提出物も三学期制の大学に比べたら多くて過密スケジュールとは言われているが、今はバスケシーズンではないからバスケの比重が軽くなっている分、なんとでもなる。
「別の話題?じゃあ言わせてもらうが今年のお前の課題は自力で自由にゾーンに入ることだな。お前の高校最後の試合の録画見たが、お前とっくにゾーンに入れるんじゃねえか。あれを入部テストでみんなに見せりゃ良かったのに」
 しばらく実戦から遠ざかっていたという話だったからあの時点では入りたくても入れなかったのかもしれないが、オレに本当の実力を見せずにいたのがそもそもおかしい。
 黛があれだけやれると分かっていればもっと黛を生かしてやれただろうし、やりようもあったはずだ。
「あれは赤司のエンペラーアイの力だ。なんつうかあいつが入れやすいお膳立てして入れさせてくれたから初めてのオレでも無事入ったみたいなもんで、自分から入ろうとして自分の意志で入った訳じゃない」
 オレは青筋がピクリと動いた気がした。
 わざとなのか素なのか、こいつ時々妙に言い方が性的なんだよな。
 春休みに氷室が火神に会いにロスに来た時、何故か黛つながりで火神、氷室と一緒に飯を食う羽目になり、同じ女師匠にバスケを教わった者同士、氷室とも少し話をしたが、黛の発言は日本人から見ても時々いかがわしい意味に聞こえるらしい。
 WC決勝の出がらし発言といい、今の発言といい、オレの頭の中では赤司が股開いて入っておいでと言ってるところに童貞の黛が苦心してナニを入れて無事入ったと言って気持ちよくなったような光景しか想像出来ないんだが。
「……何怒ってんだ、お前?自分が出来ないことを出来るアイツがムカつくとかか?アイツが味方をゾーンに入らせる原理は、究極のパスで角度からボールの縫い目の手指のかかり具合に至るまで完全に計算し尽くして気持ちよくやらせてくれることで味方を乗せるっつうのか、テンション上げるとかそういうのだ。お前と対戦した時はそこまでやる余裕が生み出せなかったから、赤司単体ではゾーンに入ったが味方のゾーン入れサポートは出来てないだろ。お前はアイツの特技の片方完全に抑え込んだんだから、予備動作なしのパスはそれだけ強いってことだ。何もそんな不機嫌にならなくても」
 気持ちよくやらせるって、文脈からバスケのことだと分かっていても、黛が赤司に気持ちよくしてもらってたとか考えただけでも腹立ってくるな。
 気持ちよくなければバスケなんてやる意味はないとか以前言っていたし、オレが一番気持ちよくしてやりたいのに。
「角度からボールの縫い目の指のかかり具合までか。角度で思い出したが、お前、高校の時キセキの緑髪のシューターの高校とも戦って最初緑にマークついてたな。アイツサウスポーだからパスはいつも特定の方向から来てたのになんで止められなかったんだ」
 オレは赤司をマークしていたので緑のマークにはつけないためダブルチームつけて警戒させていたがあの緑頭にはずいぶん点を取られた。
 空中でパスを受けてそのまま超長距離3Pを撃つ(しかもシュート率100パーセント)とかあまりにクレイジーすぎて特定の方向からはパスを受けられないという欠点などかすむ衝撃だったのは未だに記憶に新しい。
「赤司はそう言ってたな。方向が分かってて止めたくても追いつける反射神経と運動能力とお前らみたいな眼がないと止められねえよ。オレと実渕の二人がかりでも歯が立たなかったから赤司と代わったんだし」
 眼か……。
 WC決勝の映像で赤司が止められた時、止めた奴はクロコだったんだよな。
 黛の方がクロコより運動能力は高いが、黛と実渕にはキセキの緑は抑えられなかった。(緑は実渕、黛より身長も運動能力も上だから止められなかったと言えばそれまでだが)
 一方、火神とクロコはキセキの赤司を抑えた。
 火神は瞬発力はあるが、ぶっちゃけそこまで怖い選手という訳ではない。ジャバウォックの時、最後にはダンクされたが、アイツには満足に仕事させてないしな。
 その火神とクロコで赤司を抑えたのは、火神の身長や身体能力が赤司を上回っている点を考慮しても不思議ではあった。

「お前の高校最後の試合で赤司を止めた時のクロコはどうやったと思う?オレ達の試合には使わなかったから何かしら使用条件はあったんだろうが、眼を使ったはずだ。赤司の眼に近い特殊な眼で赤司の動きを予想してカットした。あれで赤司が崩れてお前のタイムアウト中の名演説へと続いたんだろ。ニュータイプと豪語するならクロコのあの技も使いこなせ」
 黛は光のない目でオレを睨みつけた。
 一見おとなしそうなこの男の沸点が意外に低くて負けず嫌いなことをオレは数カ月の付き合いで嫌というほど知っている。
 黛や日本のアニメオタクの女師匠の影響でモビルスーツというロボットが出てくるアニメもずいぶん見たが、ニュータイプ(新型)ってのは通信機器を使わずにテレパシーで意志疎通でき、先入観や自分の尺度・概念で人や物事を見ない視野の広さがあって共感する力を隣人を大事にするために活かせる人間だというのがだいたい共通している。あとはニュータイプ専用武器を使う力と空間把握能力があれば完璧か?
 視野の広さや共感力、優しさとテレパシーはある(WC決勝の赤司の目を見て全て察するあたりはテレパシーと思わないと説明がつかないレベルだ)からニュータイプってのもあながち間違ってはいねえとオレはわりと真面目に考えている。 
「旧型君のマネをしろとかつまんねえこと言う気はないんじゃなかったのか?結局お前もアイツも便利な駒が欲しいだけかよ」 
 アイツという言葉が誰を指しているかは言うまでもない。
「あんな奴と一緒にするな!オレは別に水色のチビにはなんの思い入れもねえよ。ただ、オレとお前が壁を乗り越えて先に進むには負けた過去に向き合って過去の幻影をぶちのめさないとダメだ。そして越えるべき壁はオレにとっては赤司、お前にとってはクロコなんじゃないのか」
 赤司が操るという究極のパス。
 オレとは相性が悪いのか、ジャバウォック戦では使われなかったそのパスをオレも必ずものにしてやる。
 全くタイプが違う奴のプレイを真似しようとしても参考にならないし、やろうとするだけ無駄だが(それこそ緑の空中超長距離3pとかああいうのはコピー特化の黄色の奴になら出来る可能性はあるが、普通は再現出来ない)同系統の力なら試す価値はある。
 オレがもう一段階上のステージに上がるには最低でも赤司の使える技はオレも使えるようにしておく必要がある、今のままじゃNCAAのバスケエリートどもとはとてもじゃないが渡り合えねえ。
「お前は元々赤司より強いだろ。単体ではアイツに負けてなかったんだし」
 オレも黛もライバル(オレにとっての赤司、黛にとってはクロコ)より身長も身体能力も上回っているにもかかわらず、特殊能力の生かし方の点で劣り、肝心の試合に負けた点は共通している。 
「勝負に勝っても試合に負けたら意味ねえだろ。お前だって、1on1では負けてないのに試合ではクロコのいるセイリンに負けたのと同じだ。特殊技能をもっと磨かないとここじゃ通じない。お前の過去最高のプレイが高校最後の試合でゾーンに入った時のものならそれを自分のものにしろ、人に入れさせてもらうんじゃなく自分の意志でゾーンに入れ」
「そう言うお前はどうなんだ?お前ジャバウォックでも大学でもまだゾーンに入ったことないよな?」
 こいつは言いにくいことを容赦なくついてくる奴だ。ドSかよ。
 黛と一緒にプレイした時、ゾーンの入り口が見えた気がしたのに黛が入部テストに不合格になってしまい、見えたはずの入り口が見えなくなって以来、ゾーンの手掛かりさえ掴めずにいた。
 だがこいつがいればまた見つけられそうな気がする。赤司に入らせてもらってとはいえゾーン入りを経験している黛となら。
「ないな。ゾーンにはバスケを心底好きじゃないと入れねえとか以前火神に説教された。アイツはオレと同じ女師匠にバスケ教わったヤツでもあったしオレが負けたあの試合でトドメを差した奴だからな、その火神に正論言われるとムカついたけど実際その通りだった。お前とバスケして新型の幻の六人目をどう生かすか考えてプレイするのは新鮮で楽しくてワクワクして、気づいたらゾーンが見えるとこまで来ていた。でもお前が隣にいないと見えないんだ。オレにはどうしてもお前が必要らしい」
 正確には、「オレ(がゾーンに入る)にはどうしてもお前が必要」と言いたかったのだが、言葉が足りてないオレに黛は苦笑した。
「見た目はクール系なのに迷子みたいに心細そうな顔しやがって、ギャップ萌え狙ってんのかよ。アメリカじゃ日本みたいに『付き合ってくれ』と言ってから交際することは一般的じゃないと聞いたが、『付き合ってほしい』時はなんて言えばいいんだ?いつも一緒にいるイコール『付き合ってる』なのか?」 
 黛はそこだけ英語を知らないのだろう。
 単語一つだけ日本語で何回か言い換えた。
 付き合いって日本語は英語だといろんな意味があるんだがこいつはどれを言いたいんだ?
「付き合いって、付き合いでパーティーに行くとかビジネスの付き合いとかいろいろあるだろ。いつも一緒にいる付き合いって、ボーイフレンドになってくれとかそういう奴か」
 昔はそういう言い方もあったらしいが、古臭いと思われて最近は聞かない。黛がそういった言い回しを知らないのは、語学学校で習うような単語でないことと、死語に近くて実際に言う奴をあまり見ない表現だからだ。
 黛は微妙に嫌そうな顔をした。
「恋人になってくれって言えばいいのか?ボーイフレンドになってくれだとオレの方が女役みたいだが、オレはアクティブの方がいい。気のきいた口説き文句とか知らねえし、そんなの日本語でも言える気しねえけど、オレのキャンパスライフと寮生活が毎日充実して楽しいのはお前のおかげだ。金持ちの息子だから料理なんかしねえかと思えば一度も焼いたことがないはずのクサヤを一生懸命焼いてくれたし、花宮がラフプレーそそのかして騒ぎになった時はオレの後輩ってだけでお前にはなんの関係もない花宮を庇いに来てくれたし、大学に入ってからはジャバウォックでの悪い噂は何かの間違いだったのかってくらい性格丸くなったよな。お前とガルシアさんがアニメオタクだったのも意外だけど、オレのことモビルスーツ乗る方のニュータイプだとか大真面目な顔で言う天然っぽいところもあってかわいいし。フッ……クッ……」
 黛が笑い出したところでオレは口を挟んだ。
「花宮が騒ぎ起こした時のことなら、オレは花宮を庇いに行ったりはしてねえよ。あいつが殴られるのは自己責任だが巻き添えでお前が怪我したら困る。オレが助けに行ったのはお前だ」
 とはいえ、黛は目立たないという特性のおかげで騒ぎにはあまりならないがかなり思い切ったことをする奴だ。
 マーチマッドネス開幕戦の前日だって、銃で武装したテロ犯人グループと遭遇して。FBIやテロ対策ユニットのロス支局と連携して普通に犯人特定していたしな。
「は、オレはいいよ。お前の方が目立つからヘイトためると厄介だ。オレ腕っぷしはたいして強くないけどかわすのは割と得意だし、洛山でオレが赤司に抜擢されたのが気にいらない奴らが大量発生した頃も嫌がらせしてきた連中は漏れなくつぶしたから荒っぽいこともそれなりに慣れてるし心配ないぞ。むしろお前に嫌がらせする奴がいたらオレに言ってくれれば適当に処理しておくからいつでも言えよ」
 大量発生した何をつぶしたって?
 荒っぽいことにそれなりに慣れてる?
 処理する?
 黛って高三の時点で既に死んだ目なんだよな。
 いったいどんな修羅場くぐり抜けたらそうなるんだ。
「お前、ジャパニーズマフィアかなんかか」
「家は普通の公務員一家だが?」
 黛の普通はたいてい普通じゃないことは今までの付き合いでもう知っている。 
 こいつの過去も結構謎だよな。
 花宮と幼なじみだったということから多分厄介事に巻き込まれて対処に慣れたとかそういうことだとは思うが。
 とりあえず、お互いにオレがお前を守ると言って譲らないので、何かあったらお互い相手の背中を守って戦おうという結論で妥協した。 
 バトル漫画じゃあるまいしそんなことは普通なら起きないだろうが、ラノベ主人公体質の黛は時々ありえないような現象に遭遇するから、絶対ないとは言い切れないところが厄介だ。


 


 
「ところでこのノートには何を書き留めてるんだ?」
 何気なく開くと短い英文に和訳がついている。
 英語は英語のまま理解するのが上達の秘訣とされている。普段黛は小難しい物理やらなんやらの専門書はいちいち和訳なんかしないで英語のまま読んでるってのに珍しい。


I'd rather not be in a casual relationship.=軽い関係じゃ嫌だ

go all the way=セックスする(俗語)


Do you feel me? =オレを感じてるか?

what is the most sensitive place on your body? =お前の身体で最も感じる場所はどこだ?

 こんな調子でベッドの中で言うようなことが羅列されているのを見てオレはノートをパタンと勢いよく閉じた。
 こんなもん書き写して何やってんだ。
 しかもセックスするのところは蛍光ペンで色まで塗ってあった。気合い入りすぎだろ。


「おい、勝手に見るなよ。ノートとか携帯見るのはカノジョ……ガールフレンドでもダメだって言うだろ」
「ガールフレンド作ったらこのノートの中身を実地に言う気か」
 黛が眉間にしわを寄せた。
 そのしわ取れるのか心配になるくらい思いきり顔をしかめて黛は言った。
「さっきオレ『付き合ってほしい』って言ったよな。英語が分からなくてグダグダになったし、話もそれたけどオレはお前と真面目に交際したい。長く続く関係を築いて、危険が迫ればお前を守ってやりたいし、ここに書いてあるような英語を実際に使ってお前とセックスもしたい。お前もオレのこと嫌いじゃないよな、オレをどう思ってる?」
 恋愛関係の語彙は学校で習わないので妙に堅苦しかったり、まるで結婚の申し込みみたいな重い表現になっているが、気軽にこんなことを言わないはずの黛の発言だから本気なんだろう。
 交際を長く続けたいだけならずっといい友人でいようなという意味もあり得るし、危ない時はお互い相手を守ろうというのは安全保障条約的な意味かもしれないが、どっかのエロシーンにあるような英語を使ってセックスしたいとまで言われたらどんなに鈍い奴でも勘違いする余地はない。
 
「セックスって急に言われてもオレはお前を抱くとか考えたこともねえけど……。お前のこと気になってはいるし嫌いじゃねえけど抱けるかどうかは……。あ、メイド服のお前ならギリいけるか?」
 オレがボケながら答えると黛は苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「あれは忘れろ。メイド服ならお前の方がよっぽどかわいかったからな?本職のメイドもみんなお前に夢中だったじゃねえか」
 黒歴史を掘り返すんじゃねえ。
 不思議の国のアリス風のエプロンドレス姿のオレがかわいい!とベタ誉めされたのは本気で解せない。
「お前こそあれは忘れろ。つうかこんな大男のメイドがかわいいとかお前含めた日本人の美的感覚どうなってんだ」
 赤司と黒子に似たサーシャと輝夜の抱き枕の通販ページを夢中になって長いこと見ていたくらい黛の美的センスはおかしいので、黛のかわいいはあてにならない。 
 サーシャと輝夜の抱き枕を販売する日本人の感性もどうかと思う。
 キャラクターに罪はないが、赤司と黒子の女体化みたいなキャラの抱き枕を抱いて寝ようとか趣味が悪いにもほどがある。
「元がいいからかわいいんだろ。女装してもかわいいけど、素のお前も美人だし、オレはお前なら余裕で抱けるぜ」
「そこまで言うか?……その言葉、忘れんなよ?」


 余裕でオレを抱けると言った黛が本当に余裕で抱けるか否かの検証結果は、余裕で抱くなんて無理だったという結論が出た。
 セックスするかって聞いたら、せっかく英文書き写して予習した英語も全部吹っ飛んだらしく、黛はすげえ勢いで終始がっついていた。

 そもそも童貞が余裕で抱くとか出来る訳ねえだろうがよ。
 受け入れるオレもいっぱいいっぱいだったけど。
 黛のナニが平常ではそこまで巨大じゃないのに、興奮したら巨大化するとかロボットアニメじゃあるまいしありえないと思った。
「……大丈夫か?」
 初セックスの後、黛がオレに軽くキスして言った。
 そう言えばオレの最初のキスはキス魔の女師匠に奪われ済みでおかげで女苦手になったし、こいつとの最初のキスは直前にクサヤを食った口だったので思いきり押しのけてしまったり、キスにはつくづくいい思い出がなかったが、黛とのキスは普通に気持ちよかった。 
「バスケシーズンじゃなくてよかった。お前、そのデカさが身長に反映されればよかったのにな」
 今から思えばオレと黛はとっくに付き合っていると周りに認識されていたらしく、オレが寮に入った後、黛のナニのサイズをこっそり聞いた奴がいた。
 日本人平均は14センチだそうだがその時は、
「オレが知る訳ねえだろ。普通じゃないのか?」
 と適当に返事しておいたけど、次聞かれたら身長からは想像つかないような大砲だと言うべきだろうか。
「オレが身長でかかったら早く動けないうどの大木になっちまうからダメだろ。さすがにでかかったら影の薄さもないだろうし、幻の六人目でなければお前に誘われることもなくこっちでバスケも出来やしねえ。だからオレはこれでいい。旧型の能力完コピしてオリジナルを超えてやるからお前も赤司に嫉妬するのはよせよ。赤司は二次元顔負けのスペックの持ち主でサーシャに似すぎてるし、実際サーシャと輝夜のカプには萌え死ぬと思ってるが〜〜〜」
 初セックス直後に他の男の名前出すとか二次元談義語り始めるとか信じられないアホが存在することをオレはこの時初めて知った。こいつの考えはオレにはどうも理解出来ん。
「…だがオレは二次元と三次元を混同するほど手遅れじゃない。サーシャはサーシャ、赤司は赤司だ。赤司をどうこうしたいとは微塵も思わねえし三次元ではお前しか好きな奴はいないから安心してくれ」
 女キャラ同士のカプイコール百合っていうんだっけか?
 サーシャと輝夜の抱き枕を凝視していたのは百合妄想していたからか。(海外への発送は受け付けていないため泣く泣く諦めていた。次の誕生日に赤司に誕プレで買わせてこっちに送らせたらどうだと助言したら、「18禁だから高校生には買えねえよ。かといって実家に届いたら無駄使いすんなとか親が怒るの目に見えてるからなあ」と言いながら未練がましくスクショ取ってたことをオレは知っている)
 知り合いそっくり、まるで知り合いを女体化したようなキャラでよく百合妄想出来るな。
 これがジャパニーズヘンタイって奴か。
 普通に赤司を好きだと言われるより闇が深い気がするのは気のせいか?
 人生で初の恋人が二次元の百合が好きなオタクの男とか特大の地雷を踏み抜いた気分だが、黛は自己中心的なように見えて意外に献身的なのでこいつとのセックスもバスケも気持ちがいい。
 ニュータイプだけあってもっと早くしろとか奥まで来いよとかいちいちこっ恥ずかしいこと言わなくても察するからこっちもまあ助かる。
 けど、こいつのテレパシーは「相手が何を要求しているか」が分かるだけであって「何を考えているか」分かる力ではないんだよな。
「なるべく一緒にいてお前が浮気出来ないように、今期同じ講座をいくつ取れるか受講表確認しておくか」
「意外と束縛系なんだな……、心配しなくてもオレに声かける奴はいねえよ。それよりお前の方がヤバい。色白いし、黙ってれば口が悪いの分かんねえしいいとこのおぼっちゃんだし、イケメンで高身長の金持ちで頭いいバスケうまいって誰もがほっとかないスペックなんだからお前こそ誰かにお持ち帰りされたりするなよ。アメリカ中の防犯カメラ映像ハッキングしてでも居場所突き止めるから逃げてもムダだぞ」
 黛の真顔の発言はベッドの中の睦言として普通に受け流したオレだったが。
 後にオレが誘拐された時、本当に防犯カメラ映像から黛がオレの居場所を絞り込んだと聞いてラノベ主人公の本気を思い知った気がした。 
 凡人に見えてチートな主人公はありきたりすぎてつまんねえ、ハーレムにも興味はない、異世界ものに憧れるけどそんなん現実にはありえねえしなーとほざいていた黛がしれっとチート主人公ポジションにいることを知って、オレが戦慄するのはもう少し後の話だ。 





 

 後書きです。
 キャラの腐男子化は時々見るけど、実際の市場規模や人口比は百合好きな男性>腐が好きな男性だと思うので、黛さんを百合に萌えてるオタクにしてしまいました。
 二次元は二次元として割り切っているので三次元でリコさんと桃井ちゃんハアハアとかそういうことはしません。
 男キャラの百合好き設定はBLだとマイナーなのはなんでですかね?
 黛さんは本来は普通の人なので、二次元では女の子キャラのエロを見るのが好きでいいと思うんです。
 抱き枕の注文の件は、
「いっそTFSの同学年の奴に金払って頼んだらどうだ?」
「笠松は女苦手だから無理だろ。女子との会話が出来ないとか、写真見て慣れるとこから始めるレベルだと聞いた」
「マジか」
 とか入れようと思ったけど入らなかったので見送りました。
 旧型、新型とかもニュータイプネタがやっと使えて個人的に満足です。
 ある程度相手のことが分からないと使えないネタだったので。
 この二人は仮面ライダーカブトのNEXT LEVELという曲の歌詞通りです。
♪君の隣戦うたび生まれ変わる〜(中略)
♪高速のビジョン見逃すな〜ついてこれるなら〜
 ですもんね。
 黛さんにしてみれば、幻の六人目=姿消してパス出せばいいんだろ?のイメージだったはずですが、擬似エンペラーアイまで使えとむちゃぶりされるしナッシュに必死についていかなきゃいけないので大変だけど、レベル上げにいそしんできっと頑張ってくれると思います。
 

 ところで、男性のエッチな戦闘力というのを診断メーカーで試してみたら面白い結果が出たので貼ってみます。

黛千尋さんのエッチな戦闘力は、534万です。
https://shindanmaker.com/chart/806703-234f7f16678b70083f608d01dd8c3a13f66979b3
中級エロ戦士です。
#あなたのエッチな戦闘力
https://shindanmaker.com/806703


ナッシュ・ゴールド・Jrさんのエッチな戦闘力は、523万です。
https://shindanmaker.com/chart/806703-f349c0b46eadbae654e48107fd547babf63774a1
中級エロ戦士です。
#あなたのエッチな戦闘力
https://shindanmaker.com/806703

 二人の総合力はあまり差がないですね。
 せっかくなので作中で何回も引き合いに出されていた赤司くんも調べてみました。

赤司征十郎さんのエッチな戦闘力は、336万です。
https://shindanmaker.com/chart/806703-8cbf531b9efa3a8b58696025b21287bd4a945dbf
下級エロ戦士です。
#あなたのエッチな戦闘力
https://shindanmaker.com/806703
 
 18歳以上か以下か、エロいことをした後の人、してない人の違いか定かではありませんがナッシュ、赤司くんに圧勝だよ、よかったね!
 ともあれ黛ナシュ的にはおいしい数字だったので、末永くいちゃいちゃすればいいと思います。
 ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
 ナッシュの誕生日ネタを出せない時間軸でしたが、ナッシュ、お誕生日おめでとう!

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あきゅろす。
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