バスケ漫画小説(年齢制限なし) 【腐向け】黛と日本人の後輩の話(黛ナシュ3) 黛さんがアメリカのバスケの強豪でもある名門校UCLAに進学した黛ナシュシリーズの時系列的には続きですが、黛ナシュ前提の黛さんと後輩が中心の小ネタ番外編的な話になります。 前回までのあらすじ ナッシュは試合会場で赤司と話していた黛を偶然見かけ、興味を持つ。 ナッシュは黛と一緒に秋葉原へ行き、アニメショップやメイド喫茶などで秋葉原観光をした翌日、ロサンゼルス行きの飛行機の搭乗口で黛とまさかの再会、隣り合わせの席になり、九月から通う大学の敷地内でまたもや黛と再会する。 二人が九月から通うのは名門カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)。 バスケ部は言わずと知れた全米大会優勝回数最多の強豪。 UCLAバスケ部の入部テスト当日、ナッシュは黛を探している日本人三人組に遭遇。 彼らはロサンゼルスにあるネズミの国を修学旅行で訪れていた洛山高校三年の葉山、実渕、根武谷だった。 ブライトヘッドコーチの計らいによりナッシュは黛、葉山、実渕、根武谷と同じチームになり、UCLAバスケ部入りを目指す他の新入生チームと対戦する。 スペックの高い対戦相手に序盤こそ苦戦したものの、幻の六人目の真価を発揮した黛を生かすプレーで敵の守備を崩壊させたナッシュのチームは大差で勝利。 ナッシュはその時、ゾーンの入り口を垣間見る。 しかし黛は入部テストに落ちてしまう。 後輩達に知らせずに連絡先を変更した黛の新しい連絡先を知りたがる無冠達。 黛は彼らに『伝言を伝えられる現地の知り合い』としてナッシュの連絡先を勝手に教えていた。 他カプ要素に関する注意書き。 この話はあまりガッツリ恋愛なシリーズではないので参考程度ですが念のため他カプ要素を書き出します。 今回も原作キャラが名前のみを含め数人友情出演します。名前つきのモブチームメイトも出ますが、黛やナッシュに対して恋愛感情を持つキャラは登場しません。 モブによる横恋慕や当て馬など一切ありませんのでその点は確実にご安心下さい。 二人揃っての出番はないのですが、木花前提です。 赤司くんが黛さんになついている模様。赤→黛か黛←赤のような慕いっぷりですが、黛さんにとってはそっとしておいてくれと頼んだ後輩枠です。 苦手な方はすみません。 OKな方だけどうぞお進みください。 黛+日本の後輩(ナッシュ視点) 「今日は時間を取っていただいてありがとうございます、黛さん」 洛山の三バカがUCLAにアポなし突撃してきた数日後、黛にまたも客がやって来た。 今度はちゃんとアポは取り、大学にも話は通してあるという話だったが。 「お前のところも修学旅行ロスだったのか?何日か前、洛山の奴らも来たんだぜ」 黛は打ち解けた様子で黒髪の男に席に座るよう目で促すと自分が先に座った。 外国籍の学生は、進学希望の大学に知人がいると知人と一緒に大学を案内してもらったりビジネスランチを一緒に取りながら入試体験談を聞くケースが多いと聞く。 今回黛に会いに来たのはそういう類いの訪問者のはずだが、この話の流れだとどう考えても相手は洛山の後輩ではない。 こいついったい何者だ? 「そうらしいですね。実渕から聞きましたよ。それで今回オレもアポを取らせていただきました」 にこやかにそつなく答える優等生のようなこいつの笑顔は初対面なのにどこかで見たような既視感がある。 洛山生ではないが、黛ともミブチとも知り合い。こいつもバスケつながりか? 「つーか、お前の方がオレよりかなり頭いいんだから、お前がこっち受けるつもりならオレの話なんか聞かなくても普通に受かるだろ。なんでわざわざ大学まで訪ねて来たんだ?」 UCLAは州立大学なので州外からの学生にとっては狭き門だ。名門校だから基準もハイレベルだしな。 そのUCLAに外国人でありながら現役合格した黛は相当秀才のはずだが、黛よりかなり頭がいいって、どんだけ賢いんだよ。 「そりゃどっかの誰かがオレ達後輩にも誰にも新しい連絡先を教えずに渡米なんかしやがるからですよ。オレは日頃の行いがいいので黛先輩のお母さんから教えていただきましたけど」 黛はWC決勝で洛山の連中から手厳しいことを言われたりいろいろあったらしい。 親がそいつらをよく思うはずがないから、洛山の連中は黛の親に連絡先を聞いたところでおいそれと教えてもらえるはずがねえ。 ざまあみろ。 「お前は昔からうちの母親に気に入られてるもんな。・・・あいつらにはオレの連絡先教えるなよ」 親に気に入られるほど親しいのか?! オレなんかまだ黛の親としゃべったこともないってのに。 相手はふはっと独特の笑いかたで悪どく笑った。なんだ、こいつもオレと同じで猫かぶりか。 何となくそんな気はしてたけどよ。 「オレがそんな親切な性格に見えるのか?んなことする訳ねえだろ、バアカ」 バカ呼ばわりされ、黛はチッと舌打ちした。 「じゃあ何しに来たんだよ。お前もバスケ体験とかか?やりたいならコーチに話通してやってもいいけど」 おいおい、いいのかよ、入部テストに落ちて、どんなやり取りしたかは知らないが、選手でなくマネージャーとして入部を許可された身のくせに安請け合い出来る立場か。 「ええ、そのつもりですよ。オレ達のバスケでエリートどもをキリキリ舞いさせてやりましょう」 オレ達のバスケ。 この言葉が意味するのは黛の元チームメイトってことだろう。恐らくは洛山高校入学より前の後輩なんだろう、たぶん中学か小学か。 「こういう話になるとイキイキとしてくるのな、お前。くれぐれもラフプレーすんなよ」 黒髪の男は黛よりやや小柄で見た目は美形。 ラフプレーなどするような粗野な印象はないが、外面がいいだけで実際は性格が悪いらしい。 「やだなあ、しませんよ。でも、オレがしなくても他の奴はどうかな」 黒髪の男は見た目だけ爽やかな笑顔でうそぶいた。 黛は単身で外国の名門校に進学を決意して実行に移した事実からも分かるように行動力も決断力もある奴だ。 早速ヘッドコーチのところへ行って交渉し、後輩との約束通りミニゲームの許可ももらってきた。 バスケの実力もコミュニケーション能力も決してずば抜けて高くはないが、苦手分野がなく安定していて目立たないが光るものを持ってる男。 目立たない男、黛はその特性を利用してUCLAバスケ部内ですら場違いだと目立つこともなく当たり前のように溶け込んでいる。 「ちょっと行ってくるわ」 さっきも言ったように黛は選手として入部を認められた訳じゃない。 強豪UCLAバスケ部に入部するには選手としては足りないものが多すぎるのだから落とされた理由を挙げていけばきりがない。 だが、奴はちゃっかり自分の後輩とともに自分もミニゲームに参加する許可を取っていた。 残りの三人は、うちのバスケ部に今年入部した期待の新人、ローズ、ホワイティ、オレンジだ。三人とも入部テストでオレや黛のチームと当たって負けた奴だから黛の実力は知ってる。 黛チーム対昨年の全米大会にベンチ入りしていた上級生チームが対戦。 黛の後輩は最初こそ猫をかぶっておとなしいふりをしていたが、特別な眼があるようには見えないにも関わらず、洛山三バカと同じく黛との付き合いの長さゆえに影の薄さに慣れているのか、黛を効果的に使いつつ上級生チームを自分の思い通りに誘導していった。 (黛が視線誘導をマスターしたのは洛山入学後と聞いているから高校に上がる前のチームメイトが何故視線誘導に対応出来るのか腑に落ちないが、こいつは頭がいい。技術力も高い。アカシを別格とすれば日本の高校バスケでなら最も優秀なPGじゃねえかと思う) パスコースを限定しての鮮やかなスティール連発、それに加えて油断すると姿を見失う幻の六人目黛の脅威に全米大会出場経験のある上級生チームが浮き足立ち、点差がぐんぐん縮まっていく。 けど、素直に喜べない。 黛を見いだしたアカシとオレ以外にも黛を使いこなせる奴がいることも気に入らないし、あいつが黛と馴れ馴れしくハイタッチとかしてるのも気に食わない。 それにあいつ、さっきさり気なさを装って審判の視界を遮って味方のラフプレーを助けてなかったか? 審判が気づかねーから笛も鳴ってねえしプレーは普通に続行されたが、上級生チームの険しい顔つきも気になる。 ますます気になって練習しながらそわそわしていると、顔には出してないつもりだったがどうってことないパスをファンブルしてしまい、オレは体育館の床をバッシュで蹴飛ばした。 ありえない失態だ、このオレに限って。 なんで集中出来ねえんだ、我ながらおかしい。 「気になるなら見て来いよ。いくら視野の広いお前でもニンジャを目で追いながら練習するのは無理だろ」 オレにパスをよこしたチームメイトのブラウンとかいうヤツが笑いながら言った。 黛は入部テストに落ちはしたが、一度だけオレと同じチームで戦ってUCLAバスケ部員に鮮烈な印象を残したあの日以来プレースタイルからニンジャというあだ名をつけられ、一部のヤツからそう呼ばれている。 ちなみに黛という名前は覚えにくいらしく誰も本名を覚えてくれないと奴はぼやいていたっけ。 「誰が誰を目で追ってるって?」 オレが凄むとブラウンは肩をすくめた。 「ニンジャじゃなくてアサシンだっけ?あいつ目で追うの大変だろ。お前が隣にいれば分かるけど、あいつ単品じゃウォーリーを探すのより難しいよ。・・・なんか揉めてねえか」 黛はプレースタイルからアサシンとも呼ばれている。あとは髪の色から誰かにアッシュとも呼ばれていたな。 本人は「オレは灰崎じゃねえ」とよく分からないことで怒っていたが、黛のあだ名の件はとりあえずどうでもいい。 上級生が黛の後輩に何か言い、黛の後輩は見た目に反していい性格してやがるから何か言い返し、一触即発の状況になっている。 黛が止めに入ったが、あいつは影が薄くて頭に血が上った上級生にはたぶん見えてないだろう。 「やめろ、テメーら。そいつに怪我でもさせたら殺すぞ」 オレが肝が冷える思いで黛を庇いに行くとストバス時代の素行の悪さが知れ渡っているせいかその場はいったん収まった。 「なんだったんだ、あいつは」 トラブルの種をまくだけまいてサッと去って行った黛の後輩にいい印象を持てという方が無理だ。 オレが黛に不満をもらすと黛は慣れているらしく軽く言った。 「そういえばちゃんと紹介してなかったな。あいつは花宮真と言って、同じ小学校の後輩だ。最近こっちに来たオレの高校の後輩と同じ、キセキの次にすげーバスケの天才っていう位置付けで日本の高校バスケでは有名な無冠の五将の一人だ。ロスにはカガミのチームのセンターやってた先輩で同じ無冠の五将の木吉ってヤツもケガの手術の関係で滞在してるからそいつの所に見舞いに来るついでに来たみたいだ。あいつ木吉のことを好きっぽいけど、他の奴には隠してるからオレの大学を訪ねるという口実で他の奴と別行動して木吉に会いに来た可能性が高いな」 こいつ、キセキのことは赤司以外よく知らないようなこと日本で言ってたくせに無冠の五将とは全員知り合いなのかよ。 最近の色恋沙汰まで知ってるって小学校の先輩後輩にしては相当親しい気がする。 他に好きな奴がいる話を嫉妬している様子もなく普通に話していることから、恋愛感情はお互いなさそうだし心配する必要はないんだろうが、それでも気にはなる。 「へえ。てっきりお前には友達いないと思っていたが、ずいぶん顔が広いんだな」 小学校の先輩なんて普通、卒業した後まで連絡を取ったりしねえだろ。 にも関わらず親に話を聞けるくらい仲がいいのも、たとえ口実にせよ黛を訪ねると言って不自然ではない程度に交流が続いているのも通常めったにないことのはずだ。 黛は真顔で言った。 「オレは影が薄いし友人と呼べるような奴はいねえよ。花宮は実家が近所にあって小学校の学童クラブ(親が働いている家庭の子どもを放課後預かる場所)のクラスとミニバスがずっと一緒だった後輩ってだけだし、木吉や氷室はTFSっていう企画のチームにオレと一緒に選ばれて記念撮影したりしたのが縁で知り合っただけだし。別に友達ではないな」 そういやヒムロが海外帰りってことも知っていたな、試合見た程度でなく面識もあったのか。 黛はそんなにべたべた他人と付き合うタイプには見えないが意外に顔が広い。 「記念撮影?写真あるか」 「ネットでTFS バスケとかで検索すりゃ出るんじゃないか?」 たしかに出た。 どれがキヨシなのか聞こうと思ったが聞くまでもなかった。 何故ならそこに映っていたのは、スターキーとかいうチームにいたたしかカサマツってヤツとヴォーパルソードの控えだったヤツ(黛を見える眼を持ってる黛にとっては天敵のような選手だったと黛から聞いた、タカオとかいうヤツ)と、同じくヴォーパルソードのベンチにいたピンク髪の女マネージャー、他は黛と元々顔を知ってる兄弟弟子のヒムロを除けばあと一人しかいなかったから。 消去法で残る一人がキヨシってことになる。 ちょっと待て。 オレが公衆の面前で手に唾吐いた相手とも黛は友達だったのか? 「黛、お前こいつとも仲いいのか?」 オレはスマホに映ったカサマツを指差して恐る恐る黛の反応をうかがった。 あの頃はイキってたとはいえ、悪いことをしたという自覚はある。 「仲よくはねえよ、こっち来る時連絡先消したし。こいつは黄瀬の先輩で、今でも黄瀬と連絡取ってるらしい。スターキーのキャプテンだった今吉が花宮の中学の先輩なんで、たまたま聞いたんだけど」 ハナミヤってヤツ、黛や洛山のミブチだけでなくあの眼鏡とも知り合いなのかよ。 日本の高校バスケ界ってどいつもこいつもフレンドと知り合いばっかりじゃねえか。 「お前、ハナミヤと中学は別だったんだな」 「家は近所だけど学区域の境目で学区が違うから。選べる学校制度とかで越境してもいいんだけど越境したら通学が遠くなるのとコーチが身内をひいきしてる噂聞いたから避けた。そのコーチはハナミヤが一年の時陥れて・・・うーん、辞めさせ・・・、なんか途中でいなくなったらしいから、越境してたら面白いものが見られたかもしれないんだが」 こいつ噂をよく聞く男だな。 聞き上手なのか。 コーチを辞めさせるってハナミヤは何をしたんだ? ラフプレーのサポートといい、得体の知れないヤツだな。 そしてそのハナミヤが好きなヤツがこのキヨシか。こいつもロスに来てるのか。 へーえ。 このやり取りをふと思い出したのはロッカールームで誰かのスマホが鳴りっぱなしのある日だった。 「おい、さっきからどっかでずっとブーブーいってんぞ。誰かのケータイ鳴ってんじゃねえの」 ホワイティの指摘に黛が自分のスマホを確認し、舌打ちした。 「やっぱりお前あての電話かメールか。相手は誰だ、またカガミか」 カガミは成績がかなり悪いらしい。 いつ連絡先を交換したのか、時々黛に電話をかけてきては日本料理を作って食わせてくれるのと引き換えに黛から勉強を教わっていると聞いた。 同じ高校の先輩のキヨシもロスに来ているならキヨシに頼めば良さそうなものだが、黛は教え方が上手いとかで、結構な頻度で頼られている。 「いや、花宮から」 ハナミヤはラフプレーをするので日本勢から嫌われているらしい。 それでもオレに伝言を頼むよりはマシなのかハナミヤ経由で連絡してくる奴もいる。 「・・・赤司の奴、お前の実家へオレの好物を誕生祝いとして送ったらしいぞ」 そういえば、日本のアカシ家からの荷物が届いているとか実家の使用人から事務連絡が来てはいた。 マーチマッドネス対策でくそ忙しい時にどういう風の吹き回しだ、嫌がらせかと思ったがマーチマッドネスが終わってからにしようと決めて放っておいたあれのことか。 黛宛ての荷物だと知っていれば、たとえ送り主が気に入らないアカシだとしても受け取ればもらった黛の物になる以上責任を持って渡してやったはずだが、そこまでは聞いてないためひとまず棚上げして聞かなかったことにしていたあれか。 「ソイツ、お前がストバスチームにいた時、最後の試合で戦ったヤツだっけ?」 ブラウンに聞かれ、オレは肯定した。 「そう、それが黛の元いたチームのキャプテンだ」 「黛の誕生祝いなら本人に直接送ればいいのに。なんで本人に送らねえの?」 当然の疑問に黛が答えた。 「あいつらにこっちの住所教えてないからな。日本から出ていったのに日本の奴と普通に付き合ってたらいつまでも現地社会に溶け込めないし格好わりいだろ。だから大学卒業までそっとしておいてくれと言ったのを本人は一応守ってるつもりなんじゃね?」 日本の奴と普通に付き合ってたらって、カガミの勉強を見たりキヨシの見舞いに行ったりしてる奴のセリフかよ、どの口が言うと言いたいが、こいつは後輩になつかれる名人で、なんだかんだ言って面倒見がいい奴だから言うだけムダか。 日本の奴=日本在住の奴と解釈すれば、交流が続いてるのは幼なじみ枠のハナミヤしかいない訳だし、間違ってはいない。 だからってオレの実家にまで荷物送りつけるのはその気になればいつでも実力行使出来るとアカシが示威行為しているとしか思えない。 「お前、誕生日いつだ?」 アカシから実家に荷物が届いたのは何日か前だったはずだ。 「・・・今日だけど」 だからスマホが鳴りっぱなしだったのか。 「本当か。おめでとう」 「HAPPY BIRTHDAY!」 チームメイトに口々に祝われる黛は無表情ながらちょっと照れくさそうにしている。 表情の変化は小さいが、何も考えてない訳じゃねえし、おとなしそうな外見に似合わず実は負けず嫌いで闘志を内に秘めるタイプなのは数ヶ月の付き合いでもう知ってる。 「今なんも持ってねえから明日売店でスシ買って来てやるよ」 UCLA内のツナミという売店ではいなりずしとかちょっとした日本食を売っている。 「ああ、スシはヘルシーでいいよな」 日本食といって真っ先に思い浮かべるものは大抵スシだ。 「日本人イコールニンジャ、フジヤマ、スシ、ゲイシャみたいな思い込みはやめてくれないか?まあ、スシも嫌いじゃねえけどな?」 黛が苦情を言った。 こいつは意外性の塊みたいなヤツだから異をとなえても驚くにはあたらない。 「お前ニンジャのくせにゲイシャじゃなくてメイドの方が好きなんだよな。メイドもかわいいが」 メイドといえば、黛と日本のメイド喫茶に行ったのは結構面白かった。メイド服を着た黛は美人だったし、いい記念にはなった。オレがメイド服を着たという黒歴史も同時に存在したので積極的に広めはしないが。 「オレはニンジャじゃねえ」 「どう見てもニンジャだよなあ。誰かがナッシュの悪口言うとどこからともなく現れてあいつはこんなにかわいいんだぜとか熱く語るし、あれがニンジャじゃなかったらただのストーカー・・・」 ボルドーがブラウンに何やら言っているがオレの名前が聞こえた気がしてチラッと見るとボルドーは何故か口をつぐんだ。 「あいつ、テロ対策訓練の時に犯人役を一人で壊滅させたらしいぜ。ニンジャだから誰にも見つからずに忍び寄って一撃離脱を繰り返したとか聞いた」 UCLAでは過去に銃乱射事件が発生しているので実戦さながらの訓練が定期的に行われている。 一人で返り討ちにするとかとんでもねえ話だが、黛の隠密性なら本当にやりそうではある。 「だからオレはニンジャじゃねえって」 苛立つ黛にオレンジが言った。 「まあ、そんなに怒るな。好物が日本から送られてナッシュんちにあるんだろ?何が好物か知らないが好きなもん食って機嫌直せよ」 「そう言えばお前の好物ってなんだ?」 なまものではないと思いたいが。 食う前に実家で腐らせていたら食い物がかわいそうだ。 「オレの好物はクサヤだ。この辺じゃ売ってねえし食いたいけど無理だよなあ」 今日が誕生日と聞いて実家に物が届いているのに食わせてやらない訳にはいかねえだろ。 仕方ねえ、久しぶりに実家帰るか。 オレが黛を連れて実家に帰り、キッチンでクサヤを焼いて異臭騒ぎを起こし(邸宅がムダに広いおかげで犠牲者はオレの家の人間だけですんだのは不幸中の幸いだった)、実家に当分の間、出入り禁止を言い渡されたのは半分黛、半分アカシのせいだが、まあ実家とは前から折り合いが悪かったのでそれはどうでもいい。 黛が言った「食いたいけど無理だよなあ」は、実際は、 「食いたいけど(匂いが強いから)無理だよなあ」 だったんだということ、クサヤと一緒に入っていたアカシのメッセージに 「黛さんとご一緒に食べたかったのですが、オレはご一緒出来なくて残念です」と書いてあったのは、 「オレは(匂いに耐えられないので)ご一緒出来なくて残念です」 だったんだなということはクサヤを焼いている間に察した。 換気扇や空気清浄器程度じゃどうにもならないレベルの悪臭だった。 あれはひどい。 けど、幸せそうにクサヤを食う黛を見たらオレも幸せな気分になった。 クサヤ食った口でキスされそうになって思いきり黛の顔を押しのけはしたが、オレは悪くない。 後書き 黛ナシュなのにどうして花宮くんが出てくるのか事情説明という名の言い訳です。 黛さん、ナッシュ。花宮くん。 この人達の共通項は主人公黒子くんと一度も仲間にならなかった人。 赤司くんは黛さんを見出だした重要人物でしかもキセキの世代キャプテンですし、黛さんの連絡先を赤司くんが知りたがったら大抵の人はホイホイ教えちゃう気がするんですが、じゃあ黛さんの味方はどこにいるんですかね?いないとしたら四面楚歌じゃないですか。 黛ナシュだから恋人枠はナッシュだけど、日本人の中にも一人くらい頼りになる(赤司くんに対抗出来そうな)味方がいてくれないとかわいそう。そう考えた時、もしかして花宮くんは条件を満たしそうかなと思い始めました。 黛さんの出身地は不明なのでどこの地域にいても不都合はなさそうで、しかも花宮くん、WC決勝戦を見に来てましたよね。 応援に来るようなガラじゃなさそうなのに。 その上、劣勢の誠凜にオレでも誠凜がかわいそうに思えるとか言っていましたね。 オレでも誠凜がかわいそう=誠凜を応援はしてない=応援しているチームは洛山という可能性が考えられます。こじつけ万歳。 花宮くんの経歴からして、赤司くんを嫌いになる理由はあっても好きになる理由はなさそう。 じゃあ洛山の誰を応援に来たのか。 実渕くんの技を詳しく語っていたあたりから考えると実渕くんの応援に来た可能性が高い気もしてるんですけど、花宮くんが黛さんの幼なじみかなにかで黛さんの応援するために来ていたんだったらいいなあと思いました。 黛さんを初めて見たって反応してた人や屋上が初会話と確定している赤司くん、黛さんが赤司くんに連れられてバスケ部復帰するまで知らない人だったことが確定の洛山無冠以外なら幼なじみの可能性はなくはないだろうと。 花宮くんのラフプレーって審判の死角をついてやってるんだし、蜘蛛の巣というハメ技使う花宮くんなら影の薄さを利用したミスディレクションという種明かしさえあれば黛さんを効果的に活用する方法くらいはいくらでも思いつきそう。 黛さんは洛山で赤司くんが見いだすまで評価されなかった人だけど、学力の高い進学校にスポーツ推薦なしで入ったとすると(スポーツ推薦だと気軽に退部出来ないはずなので恐らく一般受験)頭がかなりいいはず。 花宮くんが頭がいいのは確定しているのできっと頭がいい者同士話が合いそう。二人とも趣味は読書だし。花宮くんの座右の銘はたしか類は友を呼ぶだし。 あとたぶん子どもの学力や競技レベルの高さはある程度指導者の質に左右されると思うので全然関係ない所に自然発生で実力の高い子が何人も出てきたというより教え方のうまい先生の教え子から数人優秀な子が出てきましたの方がありがち。 理科や少人数制算数など特定の科目だけを教える先生はいろんな学年を受け持たされたりするから学年が違う黛さんと花宮くんが同じ年に同じ教諭に教わってもおかしくないですしね。 黛さんの得意教科が物理で花宮くんの得意教科が化学ということは、小学校でいい理科の先生に巡りあって理科好きになった可能性が微レ存? 少人数制の習熟度別算数は少なくとも十年前には実施されてたみたいなので黛さんがそういう授業を受けていたとしても現実社会と照らしておかしくないことは確認済み。 理系が得意な子は小学校の頃から理科だけでなく算数も得意だと思うので、たぶん習熟度別クラスで才能をうまく引き出す教師がいたに違いない。 みたいな感じで本編に生かされない黛さんのバックボーンを考えるのが楽しすぎて肝心の本編が書けないのが近頃の悩みです。 花宮くんが黒子くんに翻弄されたのは黛さんが高校三年になってから習得した技能のことを部外には決して漏らさなかったので知らなかったせいと黒子くんはミスディレクション習得前の黛さんより比較にならないくらい影が薄かったせいということにしておきます。 元々、洛山対秀徳みたいにミスディレクションを使わない黛さんって別に影薄くもない普通のプレーヤーだし、影の薄さは黒子くん>黛さんで確定なのでミスディレ習得前黛さんに慣れてるから黒子くん対策が出来る訳じゃないってことで辻褄はあうはず。 花宮くん、頭がいいので種さえ分かってしまえば対応は出来るだろうなって感じで夢見てます。 そんなこんなで日本からの連絡をシャットアウトしている黛さんへの連絡窓口は大学の友人ナッシュと日本勢唯一の幼なじみ枠の花宮くんに決定しました。 洛山無冠はナッシュとも花宮くんとも連絡取るけど赤司くんはどっちも嫌いなのでたぶん実渕くんを経由して花宮くんに連絡取っていると思う。 赤司くんがナッシュの実家を知っているのは富豪ネットワーク的なものです。 後輩ホイホイの黛さんにいらっとしながらも現状を受け入れつつあるナッシュのネタと黛さん誕生日ネタの小ネタ二つですが、とりあえずナッシュと花宮くんのファーストコンタクトが書けて満足です。 とっ散らかった文章ですがお読みくださった方、ありがとうございました。 今、確定申告や住民税の申告の時期ですよね。 私も書類作成しなければならない人だったのですが、心底面倒くさくて、書式を眺めながら、黛さんが確定申告するとしたら専従者控除対象なのかな〜とか考えて現実逃避してました。 [*前へ][次へ#] |