宝珠遊戯 8 ―――― 何処にそんな力があるのかと疑問を抱く程、怜斗の手足は細い。 小柄なのを最大限に生かしたスピードで蹴りや突きを自在に操りながら、生まれ付いたような武人体型のカインと攻防する様は、まるで――― 「――― 舞 ……」 「―――確かに」 「っ?!」 思わず漏れた呟きに返された予想外の声に、フェイは反射的にそちらを見る。 「レイヴン様……!?」 「しっ……大きな声は止めろ。…気が散る」 いつの間にかフェイの後ろ、戸口に寄り掛かるように立っていたレイヴンが、人差し指を唇に当てた。 「――いつからソコに?」 「先刻。……見惚れていた」 ふ、と笑うレイヴンの艶やかさに、フェイの頬に朱が差す。 「――解ります。アレは……間近で見てる隊長は大変そー」 怜斗の広く開いた襟元から覗く白い肌は、上気してほんのり紅い。 動きに合わせて散る明るい茶色の髪はサラサラで、合間から覗く顔――― 愉しそうに笑う其れは、レイヴンと質は違うにせよ、変わらない程艶やかで。 「―――可愛コちゃんどころか……舞姫っすね、ありゃ。俺ノーマルなんすけどー…間近で見る自信無いなー」 「――先代のカーディナルも美しかったが………怜斗はまた違う、美しさがあるな」 物憂げに細くなったレイヴンの漆黒の瞳は、語りながらも2人から離れない。 「……にしても、隊長にアソコまで技入れられるヒト初めて見ましたよ。何者っすかね」 「……さて、異世界の者だからな。………ところで、落ちているが?」 レイヴンの言葉に、惹き付けられているように2人から目を離さないフェイがようやく視線を動かした。 「ハイ…?…何か落ちました?」 レイヴンの長い指が、フェイの隣を真っ直ぐに指差す。 「砂。止めなければあれは恐らく終わらない」 「え…っ!…うわ、いつの間に!―――2人共ソコまで!」 慌てて2人を止めるフェイを眺めて、レイヴンは小さく肩を竦めた。 「……無理もない」 [*前へ][次へ#] [戻る] |