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宝珠遊戯



俺は元々動き易い服だからそのまま胴衣を着けて、軽く躯を伸ばしながらカインを振り返る。



「あぁ。だが…組手と云っても、貴方は型を知らないのではないか?」



軍服の上衣を脱いで、胴衣を着けるカインの言葉に、俺は一度柔軟を止める。

組手って言葉は同じだろうけど、俺の場合は空手や柔道とか。
ザムルタートにそんなものある訳ない。


「んー…ココの型は知らねぇし、俺の知ってる奴はココの人達は解ンねぇだろ。ま、自由な感じだと思って?攻守の区別があれば行けると思う」



「……承知した。では」


「あ、この砂時計落ちきるまでね〜。落ち切らなくても降参したら終了」


フェイがのんびりと砂時計を返して笑うのに頷いて、カインと対峙する。


――うーん…流石に隙はねぇけど、手加減する気満々って感じ?


……カーディナルって立場もあるしな。


でもまぁ…手加減とかさせないけど。



「――じゃ、行くぞ…!」


腹の底に力を込めて細く息を吐き出し、構えたカインの正面から足刀の蹴りを放つ―――


低く構えたカインの革製の小手が正面からそれを受けて、手首で返すように外側に払われる。


バランスを崩した隙を狙って肩に打ち出された拳を躯を捻って避け、一瞬空いたみぞおちに掌底を打ち当てた――



「――…っ…」


あ、やべ……モロに入ったか?


手応えの結果を確認する間も無く、軸足に払いの技が掛かる―――これは軸足を変えながら躯を回転させて避けた。


――多分、入ってても怯まねぇか……。



カインの技は一撃が重い。


筋肉や体格の差もあるから当然なんだけど、入ると危なそうだ。


身のこなしは体格の割に速いけど……
スピード型の俺には鈍く見える。

蒼哉みたいな分析力がある訳じゃないから、やりながら俺が解るのはそんくらいだ。


見た事もない型や技―――ひとつひとつ技を見切って打ち出す。


わくわくする内心を抑え込んでは居るけど、自然と笑みが溢れるのは抑えられなかった。


コイツは強い。

だから、愉しい。



どう来るか、とか、どう出るか、とか色々考えてた思考が徐々に無心になってく―――






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