宝珠遊戯 16 「覚醒してるのに記憶が無いって云うと……カーディナルが欠けてるのが原因って事かしらぁ?……――異世界に逃がすなんて前例も無いから、憶測だけどぉ…」 パールの言葉に引っかかる単語があって、俺は蒼哉から視線を移す。 「――逃がす?……カーディナルって、逃げてたのか?」 「あらぁ……アゼルから聞いてないの?」 パールが怪訝そうにベレッタを見ると、静かに俺達の脇に立っていたベレッタが口を開いた。 「……1度に全てを話してはお2人が混乱してしまう、と――ゼン様はすぐに地底界に向かわれましたが」 「そぉ……でも、教えないのも危険なのよぅ?いぃ?2人とも」 ちら、と白銀の瞳がローブから覗く。 真剣な声に、俺はちょっと躊躇いながらも頷いた。 当事者なのに何も知らない今の状態じゃ、俺達はどうする事も出来ない。 「カーディナルはね、あたし達の言葉で『闇族』って呼ばれるモノ達に狙われてるの。50年前、そのせいで守護者が亡くなってしまったわ……彼は魂だけになっても至宝珠を守ろうと逃げたの」 「……奴らの追手が掛かる前に、3帝が異世界に逃がした――向こうで転生したのは、予想外だが」 「闇……族…?」 嫌な、嫌な予感がして、俺は隣の蒼哉に視線を遣る。 ――心なしか青くなった蒼哉がテーブルの下で強く拳を握ってた。 「――狭間って……まさかその…」 「………巣よ。奴らのねぇ――あたしとしては複雑だけど、ゼンが居なかったら危なかったわ。奴らはまだ、カーディナルを諦めてないんだもの」 あまり聞きたく無い話……だけど、何処かで逃げちゃいけないって思いがあるんだ。 「何でだ?至宝珠は7つあるんだろ……皆狙われてるのか?」 「……ぅーん…狙われてない訳じゃないけどぉ…。カーディナルは、ザムルの至宝珠の中でも際立って強い力を持ってるから……闇族を屠れるのはカーディナルだけなの」 とんでも無い話に、俺達は唖然とするしかない。 唯の、夢だった。 たかが、夢だった。 眠ってる間のほんの短い間。 なのに。 あの嫌な夢は、今、現実にまでなろうとしてる―― [*前へ][次へ#] [戻る] |