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宝珠遊戯




「―――どうした。怜斗じゃあるまいし、百面相をしに来たのか?」


「…っ!」



不意に思ってたよりずっと近くで響いた声にはっと意識を戻したら、いつの間にかアゼルが目の前で俺の顔を覗き込んでて。



………顔に熱が集まるのは不可抗力だからな。




「………あんたの……影の話。俺がなれば済む話、だけど………まだ、なってないから。…結構、キツいかと思って……」


歯切れ悪く呟く俺に、何でもなさそうにアゼルは肩を竦めた。



「――…ふん…?御前らしくないな。……結論から云えば躯は限界が近いが………力はまだもつからな、暫くはヴァイスの云う通り『死に損ない』だろう」



――――やっぱり悩んでる時間は無かったらしい。



「………闇帝は、俺に……『交われば良い』としか云わなかった。……残念ながら俺の頭の中にはその意味は1つしか無いんだけど」


俺の言葉を聞いたアゼルが軽く眉根を寄せて、それからゆっくりと唇を開く。



「―――俺にもないな。要するにそれしか方法が無かったから、御前は此処の所篭っていたのか?」



呆れたようにアゼルが俺の顎を持ち上げる―――ぃや、仕方ないだろ、この場合。



「他の方法が無いか探してはいたんだ……此処まで時間がないと思わなくて」



力が減っていない筈の俺がこんな状態なんだ。
アゼルが辛くない訳無い。


どうにかはしたいけど、抵抗は拭えない。


当たり前だろそんなの。


嫌悪感は……一応ないけど……



色んな意味で考えなきゃいけない気がする。




「―――…それで?要するに抱かれに来たのか」



「っ…な…!!」



―――…間違ってはいないんだけど。何かその言い方物凄く嫌だ。



「…他に方法が無いから……」


「……あればどうした?」


憮然と云い切ったら、からかうようなものだったアゼルの声音が少し変わる。




「俺はお前を傍に置くと云った―――…勿論、永劫の意味でな。何もなくともそのうち抱かれる予想くらいしていたんじゃないのか?」


…………痛い所を突く。


あの時は正直そんな事考えもしなかった。

だって死に掛けてたんだぞ?


―――アゼルの隣に居たら……『俺』って存在を見てくれるアゼルの隣に居られたら……何か変わるだろうか。


それしか思わなかった。



――――じゃあ今は?




「……予想しなかったとは、云わないけど…」


言葉を濁す俺の頬に、少し冷たい手が触れた。



「――お前にしては珍しく悩んだな?此処に来れただけでも褒めるべきなんだろう」


「それは俺を馬鹿にし――――っ!」



ムッとしてアゼルを見上げた瞳は、そのまま見開かれる。

唇に痛みを覚える程、噛み付くような口付けで。





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