宝珠遊戯
16
「――ぎゃ…!ちょっと…抱きつくなよ!」
「―――だが、総帥。闇真珠の事は……」
―――助けろよ!
すぐ脇で俺が必死にゼンの腕を外そうとしてんのに、アゼルは全く気にせずにルシュアに向き直る。
「―――ふむ……話を聞いた分では、100年前から存在していたようですが……私も其れは聞いた事が無いんですよねぇ」
俺とゼンを完全に無視しながら話が進む―――いや、俺もちゃんと聞いておかなきゃいけないとは思うんだけど?
「少なくとも、先代の闇真珠はカーディナルと同化してしまったのだから、カーディナルと同じ魂の宝珠なんだとは推測出来るが……」
「―――何人居るのか、どんな力を持っているのか、何の為に生まれたか――――謎です。……ヴァイス、闇女から何も聞けなかったんですか?」
1人、ホントに我関せずで離れてたヴァイスが、ルシュアに呼び掛けられてようやくこっちを向く―――あー、更に機嫌悪くなった。
「――口は開かなかったな。闇真珠の存在だって、本来なら云いたくなかったらしいから」
「―――闇女達の中でも禁忌に近い、と云う事か……」
アゼルが整理するように呟くと、ルシュアは机を何回か指先で叩きながら考えるように瞼を伏せた。
「―――仕方ありませんね。ヴァイス……召喚なさい」
「………良いのかよ?アイツだって闇族だぜ?」
「闇女1人からさえ護れないなら、その時点で私が2人共殺しますから」
のほほんと言い切るルシュアに、ヴァイスは一瞬だけ俺達の方を見て肩をすくめた。
「―――ま、ルシュアが呼べっつーなら呼ぶけど。……一応下がってろよ」
窓枠から降りたヴァイスが口元に親指を当てたと思ったら、鋭い犬歯でそれを薄く切った。
「――――」
無言でゼンを見上げたら、抱きしめたままの状態でにっこり笑われた―――大丈夫だって、目が云ってる。
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