[通常モード] [URL送信]

宝珠遊戯
39


――物凄くデカイ羽音がしたのは確か。


サラマンダーが連れてきたライドールは、例えるなら豹とライオンと鷹を合わせたみたいな―――んでもって象2匹分くらいの巨体。

………一口だな。


「どっからこんなの連れてきたんだよ…」


スフィンクスみたいに伏せしたライドールを見上げて呟いたら、上からサラマンダーが笑った。


「南の砂漠地帯さ。人間の居ない所にゃこんなのも居るってこった」


ぽん、とサラマンダーがライドールの頭を軽く叩くと、黒い両目が俺達を見た―――


「――眼は猛禽、かな。翼も……ベースは猫科の哺乳類みたいだけど―――綺麗だな、御前」


興味津々って感じで蒼哉は既にライドールの首の毛並に触ってる。

蒼哉の言葉が解ってるのか違うのか、ライドールがちょっと眼を細めて喉を鳴らした。


―――そういや、蒼哉って動物好きなんだよなぁ……

ライドールのお陰で何か機嫌治ったみたいだし――


「取り敢えずシザーには話したけど……なるべく静かに飛んでくれってさー」


サラマンダーと同じ目線で浮いたゼンが、ライドールに向かって云うと、理解してるのかゆっくり頷いた。


―――翼広げたら、庭の囲いギリギリだよな……マジで。


裏通りでしかも東門にかなり近いから、こんなデカイのが飛んで来てもそう騒ぎにはならないらしい。


「ライドールなら水晶宮まで1時間も要らねぇからな。サクッと行っちまおうぜ」


サラマンダーに引っ張り上げて貰うと、ライドールの毛は結構長くて柔らかい。

―――ちょっと不思議だけど、乗り心地は悪くないかも。


「――振り落とされないように毛並掴んどけよ?」


「……ンな事して痛くねぇの?」


30センチくらいある毛は確かに掴み易そうだけど…その下は多少硬いにしろ皮膚だし。


が、俺の懸念はアッサリ笑い飛ばされた。


「坊主らが掴んだくらいじゃ痛くも痒くもねぇさ。コイツは頑丈だからな―――ゼン!ちゃんと着いて来いよ?」


「あのねぇ…オレがついて行けないワケないっしょ?」


自信たっぷりに笑ったゼンが、浮いたままライドールからちょっと離れる―――バサッて音と共に、ゼンの背中に2対のコウモリみたいな羽根が生えた。


「―――ゼンって羽根あったんだ?」


「速く飛ぶ時はね。魔族は皆あるよ?普段は邪魔だからしまってるだけ」


―――慣れて暫く忘れてたファンタジー感がまた出てきたなぁ……





[*前へ][次へ#]

9/51ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!