宝珠遊戯
8
――蒼哉side――
ざわざわとした人の気配がして、俺は目を開けた。
どうやらあの空間からは抜けられたらしく、青空が見える。
―――何処だろう?ここ…
躯を起こしてまず、ぼぅっとした視界に入ったのは噴水。
直径10mはありそうな大きな物だ。
俺らの住んでる街にそんなものは無かった筈だけど。
地面は石畳で、隣を見ると怜斗が寝てる―――
いや、この場合は倒れてるのか。
見たところ怪我はしてなさそうだから取り敢えずほっとした。
周りを確認しようと視線を動かして、俺はそのまま顔を顰める結果になる。
見たこともない景色。
噴水を中心に造られたここはどうやら広場のようで、その向こうに立ち並ぶ家屋は現代の日本には到底無いような建築物。
ヨーロッパ地方のもの……しかもアンティークなのに似ているけど、ちょっと違う感じがする。
何より人。
遠巻きにこちらをチラチラ見ながら通り過ぎていく人達は独特の顔立ちをしてて、しかも着ている服の雰囲気もなんだか、シェイクスピアか何かの舞台でもみてるみたいな。
――おかしな場所に来た。
それ以外の感想が出て来なくて、俺は隣の怜斗を揺すった。
「――怜斗。起きて」
「――…んー…」
怜斗が身じろぎして、薄く目が開いた。
――何だ?この違和感。
「――あー…?誰、アンタ……」
………寝ぼけてる。
「あのね。自分と同じ顔をどーやったら忘れるんだよ。さっさと起きろってば」
怜斗の頭を軽く叩くと、反射みたいに飛び起きた――オモチャみたいだ。
「――そ…、蒼哉…?」
「何で確認すんのさ……って、怜斗。何、その目」
何かに驚いて開いた怜斗の瞳は、鮮やかな紅い色をしてた。
コレだ、違和感。
見慣れた茶色の瞳じゃないから。
「つーかオマエ髪!ちょっと見ない間に染めたのかよ?!」
……コイツはいつから俺を見てない気だろう。
が、そう云えば視界の端に入る紅。
周りに気を取られて全く気付かなかった。
ひと房、摘んでみれば、俺の髪は今の怜斗の瞳と同じ色に変わってて。
こんな状態で染められた記憶もないって事は、ここに来てしまったのが原因って考えるべきなんだろう。
「うわ……気持悪……
――まぁ良いんだけど。そんな事は」
「良いのかよ?!」
だってそんな事考えたって解らないから。
悩む材料なら他にも多々あるし。
実際、怜斗は今俺の髪にしか気付いてない……ある意味幸せ、で、かなり鈍感。
「怜斗の瞳だって同じ色してるし――取り敢えず、俺ら変なトコに来たっぽいんだけど?」
広場の噴水の前で座り込んで喋ってるのもかなり不審者だろうけどさ。
今更だしね。
「………何だココ」
俺が聞きたいんです。
「さぁ。取り敢えず日本じゃないだろうね」
キョロキョロと周りを見回す怜斗は混乱って云うよりは呆気に取られてると云った方が正しそうだけど。
まぁ、神経太いから大丈夫なんだろう。
ちょっと思い出した事があって俺はポケットを探る。
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