宝珠遊戯 21 「――『怜斗』と云う存在が居ないと、御前は御前で居られないとでも思っているのか?」 「……馬鹿云うな!俺が怜斗を好きなのはそんな理由じゃ……!」 「恋愛感情だと?……俺から見れば、御前がゼンを見る目は……嫉妬と云うより恐怖だ。怜斗が御前を見なくなれば、御前は影でなくなる」 「……っ……ぁ……」 頭の奥で、警告音が鳴ってるのに。 淡々と云い放つアゼルの声に、俺の喉は音を紡ぐ事を拒否し始めて。 ――俺は、怜斗が好きなのに。 好き って、何だ ……? ――俺が怜斗に求めてるのは何だ…? 怜斗で居てくれる事。 ―――何故……? ………………… 何、故… 「……ゎ…から、ない……――でも、俺は…怜斗が好きで……傍に、…居たい…」 最後にすがる事が出来るのはきっと怜斗で、俺も、怜斗に取ってそんな存在で居たいだけで。 ………そう。 俺の『存在理由』に、怜斗は不可欠なんだ。 「ずっと……怜斗しか見てこなかった。無茶するし…考えないし、だから俺がずっと……」 「―――怜斗が自立したら、御前は必要なくなるからだろう?過保護に甘やかして、気を掛け続ける」 「……っ…?!」 全て見透かしたように、アゼルの赤い瞳が細くなる。 ―――綺麗な笑みが、本気で怖くなった…… 「――な、にを…」 ―――これ以上、聞きたくない。 何かが本当に、崩れてしまいそうだ。 「御前は……怜斗よりも何も知らない。自分の意思すらないんだからな」 「…………」 「存在理由が欲しいなら、俺が与えてやろう」 「……は?」 あぁ、頭が…回らない。 俺は何を考えれば良い? この男に何て返せば良い…? 「『蒼哉』と云う人間で在る為の理由が、生きているだけでは見出だせないんだろう?――俺の傍で、探してみれば良い。御前を導くくらい、俺には造作もないからな」 ……………ちょっと、待て。 カッと頬が熱くなる。 今 この状況で、 このタイミングで、 其れは反則じゃないのか? 「――そんな事する義理…あんたには――」 後退りたくても出来ない状態で、せめてもの抵抗に視線を反らす―――クク、と低く笑い声が響いたと思ったら、アゼルの唇が耳元に下りてきた。 「――こういう時は名を呼ぶものだ。確かに義理など無いが……俺がそうしたいんだと云えば理由になるか?」 口説いているようにしか聞こえない。 ……随分、高慢ではあるけど。 ―――即答で断れないのは、何のせいだろうな…… 「……俺、今……あんたのお陰で、頭が回らない……」 「――ふん?…好きなだけ悩めば良い――御前は結局、俺の隣に居るだろうからな」 ―――あー…そ。 何かその通りになりそうなのは悔しいから、聞こえないフリして瞳を閉じる。 ―――眠りに落ちる寸前に、アゼルの声がした気がするんだけど…… 何だったのか、解らない――― [*前へ][次へ#] [戻る] |