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宝珠遊戯
11



「おー怖…だから俺はムリっすよ。間近であの姫直視する自信無いしー」


「何だそりゃ…」


意味解んねぇ。

俺が顔を顰めると、レイヴンが小さく笑った。


――この無駄に垂れ流してるフェロモンはどーにかなんねぇのか?


女だったらイイ目の保養とかだったかもしれないけど。



「何笑ってんだよ」


「………もっともだと思って。悪気は無い」


睨んではみても効果無し。

……こっちのヤツに俺の凄みは通用しないのか。


「あー!ホラ、俺報告書やんないとー?ね?隊長」


「――やる気があるのならな」


わざとらしく手を叩いて声を上げるフェイに、カインがだいぶ冷めた視線を送る。


「有ります有りますー。じゃ、姫、また遊びに来て下さいねー」


フェイが爽やかに片手を上げて笑ったと思ったら、次の瞬間には廊下の向こうに背中が見えた。



――逃げ足速っ!



「―――奴の数々の非礼、申し訳ない」


「や、カインが謝る事じゃ無いっしょ。結果的には書類やる気になって良かったなーって感じじゃね?」



だから物凄く暗〜いカオで深々と頭下げないで欲しい。



カインは別に、悪くないし―――寧ろ逆に可哀想な気までする。



姫だ何だ呼ばれたくらい、別に気にしなければ気にもならない。



「それに、俺の方こそ休みにわざわざ付き合わせちゃったしさ。おあいこってコトで」


「いや……精進しようと改めて思わされた。私も驕ってはいられん」


「―――驕ったカイン?……ぷっ、想像できねぇ。また暇なら相手してくれな」


吹き出してしまったのを抑えて握手を求めると、カインの目元がちょっと弛んで握り返してくれた。




「そーいや、レイヴンは何か用があったわけ?」


「……通り掛かっただけだが―――…今、時間が取れるか?」


少し間を置いたレイヴンの問い。


空を見上げて、まだ日が高いのを確認した俺はレイヴンに向き直って頷く。



「多少なら平気だけど…」


「―――では私は席を外しましょう」



カインがそう云って騎士の礼をするのに、レイヴンが小さく頷く。


去っていくカインにもう一度ありがと、と投げ掛けてから、レイヴンに視線を向ける。



「――――カーディナル関係の話?」



「半分は。中々様子を見にも行けなかったから」


ふわ、と微笑んだレイヴンに、一瞬だけ、見惚れてしまった。


―――…このフェロモンは一種犯罪だ。






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あきゅろす。
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