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宝珠遊戯
10


「んじゃ、次フェイなー?」


「えぇ?!疲れてナイの?!」



笑顔で振り返ったら、予想外だったらしくてフェイが目を丸くする。


んー…あんな短時間じゃ疲れない。


ちょっと心拍数が上がってるのは楽しいからだ。

鈍ってた躯の感覚もカインと組手してる間にじわじわ戻ってきたしな。



「俺1対多数で時間無制限のヤツばっかやってたからなぁ……まだ元気だよ?」


カインは確かに強いけど、模範的な武人って感じ。


元々不良やら族を相手に喧嘩してた俺からしたら、組手自体が真面目過ぎる。


「それは組手じゃナイっしょ…てゆーか今の見てたら俺じゃムリっすよ。姫の動き追うので精一杯だし」


「だからソレ止めろっつーに」


「フェイ…!」


カインの厳しい声が飛ぶけど、俺、この短時間で学んだ。

コイツ基本的にヒトの話を聞いてねぇ。


「えぇー…だって舞姫っぽいでしょ?しかも公認っすから―――ね?レイヴン様」


「は?!」


いつの間に…!


人の気配には敏感な筈なのに愉し過ぎて気付かなかった…!


戸口に立ってるレイヴンがフェイの言葉に頷く―――って頷いてんじゃねぇよ。




「つーか、なんでアンタがココに居んだよ?」


「―――神殿だから」



簡潔過ぎるわ!



「パール様は帝都に戻られる為に先日ヴェローサを発たれたが、レイヴン様はこちらに滞在されている」


顔に出たんだろう。
カインが説明してくれた。


そうだ…神殿が守護者の駐屯地だって事はコイツが居たっておかしくない。


「アンタはパールと一緒じゃなくて良いのかよ?」


「……あの日パールと一緒に居たのは偶然だ。彼女の拠点は帝都だから、報告に帰った」



へぇ…随分アッサリしてんだな…



「それにしても……見事だったな。舞のようだった」


「――ね?姫決定ー」



ふふ、とレイヴンが楽しそうに笑うのに、フェイが乗っかった。



それは褒められてんのか…すっげぇ疑問。


ホラ、カインとか青筋浮いてる。
けどレイヴンが居るから流石に怒鳴るのは止めた感じだ。



「やっぱフェイ相手して?つーかしろ。マジで殴る」


パキパキと指の関節を鳴らしながら睨み付けると、フェイが怯えたように躯を抱く仕草をした。



――仕草だけな。目は笑ってる。





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あきゅろす。
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