食べ足りない(仮題)
3
「ぁつっ、な?ったたたた!!いたーっ」
情けない声をあげながら、転げ回るそれは よくみれば少年の姿をしていて
音もなく、抜刀した40センチはあるナイフの柄を右手で確かめるように握りしめた。
が
ぐるるきゅるるるる
と、聞き覚えのある小動物の鳴き声のような腹の虫が聞こえて
いつのまにか転げ回っていた少年は空を見上げ、
「…はら へったー」
蚊の鳴くような声で何かを呟いた後、おとなしくなった。
髪に枯れ草がついたまま、いきなり水を、聖水を浴びせかけた危険人物が居ると言うのに
「…」
赤いドレスの女は、しばらく
相手が油断を誘っているのか、見定めた後
抜き身のナイフを片手に、少し青年に近づき
そばに腰を据えたのだった。
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