アクマ 3 そうして音の方に視線をやれば逆光でわかりづらいが、小柄な悪魔が見えた。 看守が、黙り込んだままガチャガチャと鍵を開く。 予防の呪いや、お守りを出さない事から何か牢に仕掛けでもあるのだろう 「どうぞ、中へ」 扉を開きながら、静かに看守が牢の中へと誘導する。 「…ああ」 地下に降りてから、ようやく口にした声は 何だか喉に張り付いて、掠れているような気がした。 格子戸をくぐり一歩牢にはいると、ムワッとかび臭い。 部屋の隅でカサカサと虫かなにかが逃げていくのがわかった。 悪魔は口を開かない、ただサイコロのように真四角の箱に腰かけて、こちらをみている。 近くに居るだけで背筋がしびれてくるような気がする、だが逃げるわけにはいかない。 「…わたしと、契約してくれ」 意を決して伝えた言葉は、なんだか頼りなく、 「…っは、」 悪魔は嘲るように、鼻で笑った。 ようやく目がなれてきた薄暗がり、廊下より明るい牢の中 逆光から壁ぎわに軽く身をひいた悪魔は、年頃の少女の姿をしていた。 あまり日に当たらない廊の中よく目をこらせば、白い肌に鉛のように鈍く光る瞳。 黒くうねる髪は肩のあたりで切り揃えられ、窓からの日に透けると青みががって、気の強そうな猫目はひどく不機嫌そうに、こちらをじろじろと見ていた。 [*前][次#] [戻る] |