アクマ 3 *** アーテアの北方、雪深い湿原、悪魔研究室。 事務所奥の応接間には、青年が居た。 青みがかった緑の目に暖かな茶色の髪は日に透かせばオレンジになり、前髪を右眉の真ん中の上くらいから流し後頭部の髪を半分くくっていた。 服装は、青緑がかった足首まである控えめだが上等の上着に、それよりすこし暗い色の足首を絞ったズボン、一流の職人がこしらえた髪の色に近い革靴。 いいとこの貴族の子息のようである。 彼は緊張した、いや切羽詰まったような、覚悟を決めたような表情で待っていた。 四角いはめ殺しの格子窓から、夏らしい穏やかな青空と平原のむこうに黒々した森が遠目に見える 使い込まれた、黒く艶やかなデスクや壁一面を埋め尽くす本棚にローテーブル、黄緑がかった枯れ草のような色褪せた敷物にカーテン、数々の見目うるわしい調度品も目に入らないようで ただ、待っていた。 そうして、しばらく ガチャリと空気を打ち破るように案内の者が到着した。 悪魔を担当する看守である 青年の顔が険しくなる、彼がここに来たのは直接魔力を帯びた貴金属を仕入れに来たのではなく 悪魔を求めに来ていた。 [*前][次#] [戻る] |