マオユウ 07 風がそよそよと流れて、互いに何も言わないままぼんやりと空を眺める 「ねぇ勇者。」 何気なく声をかけ、振り向いた。 まるでスローモーションのように彼女の鎧がふらついて ドガッ、ガシャンと力一杯 草地に叩きつけられた。 鈍く光る鎧の下、ぐもった声が苦しげに息を詰めた。 手元は心臓を押さえ、かきむしる。 途端に魔王は、勇者が抱く卵に魔力が足りてない事に気がついた。 だから卵は、死にかけていた。そして勇者も、危なかった。魔力のかわりに命を注いでいたから。 狼狽しあたりを見回すが、誰も居ない。そう自分以外は。 グッと歯を食い縛り、体をくの字に曲げた勇者を見て魔王は腹を括る。 手のひらに魔力を、不可視の力は日の光のように目映く輝き、 鎧越しに当てた手は、確かに卵に力を与えて。 激痛にぐったりと気を失った彼女を抱えあげ、ショタこと魔王はゆっくりと草原を後にすることにした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |