朔の夜 火のない所に煙は立たず C 視界隅で、そんな事が起こっていてもお構いなしの輝一の問いに朱毘と呼ばれた童は両肩をすくめ、 「さあ」 近くで聞いていた黒髪の男がとっくりの中の酒を飲み干し、 「適当だな」 「こればっかりはどうにもなりませんね――って、それより、沙門さん鍋が来ました!! 食べましょ、食べましょ」 赤毛の女人――薊が持ってきた鍋に胃袋を刺激された二人は鍋が煮えるのを今か今かと待っていた。 ――この酒や食い物はどこから来たのか? 財政難に苦しむ炎を操る陰陽師――炎術師・辰己輝一の屋敷に転がり込んできた大量の酒と食い物は朱毘の能力によってもたらされた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |