*落書き置き場*
【日記内SS】擬人化菓子パンヒーロー




2012/2/19公開
擬人化菓子パンヒーローSS
【Knock me 】
*菌骨前提 丼トリオ(主にかまめし・かつ丼)*




目の前でぜぇぜぇと息を切らしている親友に目を丸めた。

何故なら、その親友はわりといつものんびりとしていて、こんな風に髪をぐしゃぐしゃにして息を乱している姿なんて初めて見たからだ。

かつ丼は、玄関先に倒れ込んだままの親友に手を差し伸べる。


「……どうした、かま?」


右手にはアイスキャンディを持ったまま左手を差し伸べれば、ようやく顔を上げた親友─かまめし─は、まだ乱れた息で此方の手を掴んだ。

ヘロヘロと立ち上がったかまめしは、どうにか靴を脱いでからリビングまで這っていく。

玄関先に置いたままの買い物袋を拾ってキッチンに運び、ついでに冷蔵庫から出した緑茶のボトルを持ってリビングまで行った。

リビングのソファーに倒れ込んでいるかまめしに緑茶を渡せば、上気した頬を向けてくる。


「ありがと、かつ……」


緑茶を受け取ったかまめしは体を起こし、大きな深呼吸をしながらソファーの上に正座した。

その真正面に座ってみれば、かまめしの赤い顔が徐々に蒼くなっていくのが見える。


「なんかあった?」


アイスキャンディをペロリと舌先で舐めあげる。
綺麗な橙色だったからオレンジ味だと思ったのに、どうやら人参味らしい。

微妙な気持ちで眉を寄せていれば、緑茶のボトルを見つめて青ざめていたかまめしがゆっくりと顔を上げる。

暫くハクハクと口を開け閉めしていたかまめしは、何か意を決した様に目を細めた。


「ちゅ、…ちゅーしてるの見ちゃって…」


ちゅう?と思わず聞き返した。
すると、かまめしは急に顔を赤らめ………顔どころか全身が赤くなっている。

ポカンと見つめれば、かまめしの目が泳ぐ。


え、こいつ……
キス現場見ただけで、こんなに狼狽すんの……?

半ば呆れ顔でアイスキャンディを咥えたかつ丼は、胡座を掻いていた足を崩してから指で頬を掻いた。


「お前、ピュアにも程があるだろ…」

「!いや、そうじゃなくて…!」

「そうじゃなくて?なによ」


口に咥えたアイスキャンディをぷらぷらと揺らせば、溶け始めていたのか、橙色の汁が飛んだ。

やべ、と服の袖でそれを拭いていれば、かまめしがゴクン、と思いきり唾を飲み込む音がする。

あまりにハッキリとそんな音が聞こえたので、思わず顔を上げ………

かまめしが目線をあちこちにさ迷わせて口を開いた。




「ば、バイキンマンと、ホラーマンが……」



ぽろり。

口からアイスキャンディが落ちる。


無言の応酬。


真意を確かめる様に見つめ続けるかつ丼と、決して視線を合わせないかまめし。

ごくん。今度はかつ丼が唾を飲む音がハッキリと聞こえた。



「かま……それ………」

「たっだいまー!!」


かつ丼が切り出した言葉は、明るいアルトの声に掻き消された。

思いきりかまめしの肩が跳ね、それと同時にパッと顔を出したのはもう一人の親友・天丼だった。

慌てて振り返ったかまめしは、天丼の姿を確認すると逃げる様にキッチンへと去って行く。

あ、あ、と声を掛けるタイミングを失ったままかまめしを見送っていると、天丼は不思議そうに首を傾げてソファーに座った。


「どしたのさー?」

「い、いや、別に」

「ふーん?そういえばさー、さっきバイキンマンとホラーマンに会ったよ」


天丼が満面の笑みで言った瞬間、キッチンからガシャガシャーンと皿が落ちる音が響いた。

首を伸ばしてキッチンを覗けば、微かに見えたかまめしはオロオロと割れた食器を見下ろしている。


この慌て方は………かまめしは嘘を言っていないらしい。


「珍しいよね、バイキンマンって最近ずーーっと引き込もってたのに。
二人でどこか出掛けるのかなぁっ」


天丼は特に他意も無く、楽しげに語る。

しかし、かつ丼はその背後に映るかまめしばかりが気になっていた。





ふと、チャイムが鳴る。

嫌な予感がしたかつ丼は、再度唾を飲み込む。

はいはーい、と軽い足取りで玄関へ去って行く天丼。

その向こう。キッチンで青ざめているかまめしと目が合う。

ああ、彼も同じく嫌な予感を抱いているのだろう。


「あ、ホラーマン!バイキンマン!いらっしゃーい」


そんな天丼の声と共に、ヘタヘタとかまめしが倒れ込んだ。





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あきゅろす。
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