*落書き置き場*
さくら

*高校生×高校生*

※花見に行った時見た、仲良さげなイケメン男子2人に萌えたので。




「あ…」

三歩後ろを歩いていた"あいつ"が、ぽつりと何か呟いた。
なんだ?と弾かれた様にぐるんと振り返ると、"あいつ"は立ち止まってぼんやりと視線を上へと遣っている。
隣まで寄って行って同じように視線を辿ってみても、その先には一本の太い幹があるだけだった。
雪が覆って道が塞がれていた城下公園から、白いバリケードが融けて無くなったのは一ヶ月前の話。
大雪だったというのに、この城下公園の数多の木々はグンと力強く立ち並び、俺たちを見下ろしていた。
その中の一本を、どこか嬉しそうに口角を上げて見つめる"あいつ"を横目で見てから、俺は首を真横に傾げた。


「……樹木マニアだったっけ、お前」

「違うよ。桜!蕾が膨らんでるでしょ?」

言って"あいつ"が指差した先には、ほんのりと桃色の蕾。
へぇ、これ桜の木か。なんて呟けば、"あいつ"はクスクスと目元を緩めながら笑った。

「この木もあの木も、この公園にあるのは、みんな桜だよ?全部咲いたら、すごくきれいなんだ」

「ふーん」

「そっか、県外から転校してきたから知らないんだ?
ここは桜の名所なんだよ」

毎年花見の時期はすごい人が来てね、と嬉しそうに桃色を見上げる"あいつ"の声があまりに明るく跳ね上がっていて、思わず俺も嬉しくなってきた。
聞いてもないのに、樹齢がどうのこうの、専門家みたいなことを語り出した"あいつ"の頬は、まだ冷たさの残る外気に当たって朱色に染まっている。

もう高校二年なのに、いつも林檎色の頬をしている"あいつ"は、同学年の奴らに比べれば断然幼く見えた。
ここ数年で、関節が悲鳴が上げる程すくすくと成長してる俺の隣に立てば、"あいつ"は女子みたいに小さい。
思わずそのふわふわした頭を撫で回したくなる様な、小動物みたいな愛嬌がある。


去年の夏に"あいつ"の居る高校に転校してきたから、俺は"あいつ"が語る桜の美しさを知らない。

でも。


「じゃあ、桜咲いたら花見行こうぜ。

…二人で」

「え?」

いざ誘うと、なぜかポカンとする"あいつ"。
なんだよ、なんか恥ずかしいじゃねぇか。

「…嫌なのかよ」

「ち、違うけど!
……だって…いつもは、皆で行こう、って言うじゃん……」

頬どころか、耳や首まで真っ赤にして俯いた"あいつ"は、そのまま黙り込んでしまった。
なんか気恥ずかしくて、俺も口を閉じる。



桜の名所。

今はまだ蕾の木。

静かな並木道で佇んだ。


ソッと横に手を伸ばすと、"あいつ"の手に触れた。
一瞬驚いた様に震えた手が、ゆっくりと繋がれる。

………まぁ、蕾でも悪くねぇかな。

呟けば、隣で"あいつ"がそうだね、と小さく返す。
それが妙に嬉しくて、細くて柔らかいその手を強く握り締めた。



そうやって、まるで縁側の高年齢夫婦みたいにぼんやりとしてた俺と"あいつ"。
不意に聞こえてきた同じ高校の生徒の笑い声で、"あいつ"が慌てて手を離した。
それに対して不満を表しながら"あいつ"を見れば、さっきよりももっと赤い横顔が見える。


「……二人で、桜、見ような」

二人で、を強調して言えば、ゆっくりと顔を上げた"あいつ"がまだ赤さが引かない顔で、うん、と嬉しそうに笑った。



桜が満開になるまで、あと、一週間。



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あきゅろす。
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