Story-Teller
proof of lived




十月の半ば過ぎともなれば、さすがにもう肌寒い頃だ。


丁度そんな時期に紅葉を迎え、各地の森林や自然公園には観光客が訪れるらしい。
相楽は、羽織っていたパーカーのファスナーを首元までしっかりと閉めてから、片手で冷えた肩を撫でた。こんな寒い時期に、わざわざ葉っぱなんか見て何が楽しいんだろう、などとひねくれたことを考えながら。

前に立っていた関が歩き出したことで、相楽も小さな溜め息を吐いてから、その後を追う。
相楽と関が踏み入れたのは、紅葉とはかけ離れた、酷く薄暗く湿っぽい、陰鬱とした樹海だった。









時は遡り、三十分ほど前。
都内にある防衛軍基地から車で三時間掛けて訪れたのは、やけに薄暗い山中だった。

ファースト・フォース専用のバンから飛び降りた相楽は、固まってしまった体を思い切り伸ばしてから深呼吸する。
後を追ってバンから降りた関も、同様に伸びをしてから大きな欠伸を漏らした。そんな欠伸につられて、相楽も小さく息を漏らす。


相楽が見渡した先には、キャンプ場として開かれているのどかな平原が広がっている。くるりと振り返れば、相反して鬱蒼と生い茂る木々の森。
その森を抜ければ、辺りを見渡すことが出来る丘に続いているらしい。
とはいえ、キャンプ場というわりには人の気配も無く、冷えた風がザァザァと木々を揺らすだけの寂しい場所だと、相楽は思った。


「人が居ないのは、行楽シーズンは過ぎたから?」


何気無く関に問えば、関は苦虫を潰したかのような顔でこちらを見てから首を横に振った。


「ここ一帯が自殺の名所なんだってよ。そんな気味悪い所でキャンプなんかするかって」

「……そうなんだ」


初耳だ、とキャンプ場と森林とを眺めてみた。
確かに、もう午前九時だというのに辺りは夜明け前のように薄暗く、森林の奥に目を凝らしても、暗くて何も見えない。
やけに陰気臭いのは、そんないわくつきがあるからなのかと納得した。

まだ眉を寄せたままの関を見上げていると、背後のバンから二人を呼ぶ声が聞こえてくる。
すぐに駆け寄れば、バンの後部座席に大量の機材を広げているオペレーターの木立の姿があった。
相楽には扱えそうにないモニターや測定器の数々を丁寧に設置しながら、木立は関と相楽を見上げる。


「測定器とUCのプロテクトバッグ以外は、なるべく荷物を少なくした方がいいよ。一昨日降った雨のせいで、森の中は相当足元が悪いと思うから」


そう言って渡されたのは、手のひら大のUCエネルギー測定器と、UCを入れて持ち運びができる特殊なケースだ。
それを受け取った相楽は、ちらりと運転席を見てみる。
ここまでバンを走らせたのは、隊長の篠原紀彰だ。
篠原と目が合うと、小さく眉を寄せられた。







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