Story-Teller
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箝口令が敷かれたことで、昨夜の事件は完全に黙されることとなった。

ただ、いくら防衛軍側が口を閉ざしたとしても、ファースト・フォースをことごとく打ち負かした張本人は黙っていないだろう。
わざわざ『UC館』に攻撃を仕掛けてきたのだから、相手は反UC派で間違いない筈だ。


国政や防衛軍に反発する反UC派からすれば、『ファースト・フォースの惨敗による信用性の低下』はとっておきのネタでしかない。
昨夜から治療室に引き篭もったままの風早はテレビも見ていないが、既にニュース番組で大々的に報道されていてもおかしくない。
今さら軍内に箝口令など敷いても無駄では無いのだろうかと口を開きかけて、その口を閉ざした。



篠原は膝の上で両手をギュッと強く握り締めている。
その手が微かに震えていることに気付いてしまった。
昨夜の篠原の弱気な呟きも相まって、ぞわぞわとした嫌な感覚が過ぎっていく。


「……篠原……?」

「情報が、流れることは無い」

「……どういう事だ」


はっきりと告げる篠原に問えば、ゆっくりと見上げてくる。
口を引き結んで固く寄せられた眉は、行き場の無い悔しさを押し殺しているようだった。


「……相手は、たった一人だ」

「は……?」


篠原の言葉が理解出来ずに口をポカンと開けば、もう一度繰り返される。


「『UC館』に攻め入って来たのは、たった一人。反UC派のトップ……桔梗組の、現当主だ」


紡いだ篠原が、片手でギュッとシーツを握ったのが、脳裏に妙にはっきりと残っていた。





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あきゅろす。
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