Story-Teller
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十一月二十五日。


午後十一時八分。





カルテを見る限り、最初に治療を受けたのは高山さん。

医療班に運び込まれたとき、高山さんは失血多量からの意識混濁状態だった。



それから五分後。

関が運び込まれる。
背中を裂かれた関は、すぐに縫合の処置が始まった。



関が運び込まれてから、三分後。

相楽の前任だという佐藤の治療が始まる。
右手には、刃物が貫通したままだったようだ。



そして更に五分後。

吉村さんが。


三分後。

桜井さん。


その後を後衛のメンバーが続く。



一番最初の高山さんの治療が始まってから、約三十分後。

ようやく、篠原の治療が始まる。
篠原のカルテには、風早先生の名が記されていた。








ファイルから目が離せずにいると、篠原が椅子を動かす音がした。
その音に我に返った相楽は、息を大きく吐き出してから、ゆっくりと顔を上げる。


「……今度はなんだ」


先程と同じ、いきなり静かになった相楽が気になったらしい篠原は、眉間に皺を寄せてこちらを見ていた。



このカルテは。
この、十一月二十五日のカルテは、なんですか。

そう問おうとしたが、上手く言葉に出来なかった。





なんとなく、解ってしまったからだ。

前任が、右手が動かなくなる程の怪我をしたのは、この十一月二十五日。
それと同時に、現ファースト・フォースの隊員達が、一斉に大怪我を負ったこの日。
精鋭部隊が、壊滅的とも言える状況に陥った日。

―この日は、反UC派との苛烈な攻防戦があったのだと。







何も言えずに、ファイルに視線を落とした。

怖い、とか、そういう感情とは違う。
ただ、ぞわぞわと背筋を這うような違和感があった。

任務とあれば、卓越した身体能力を駆使して瞬時に敵を捕縛する先輩連中が、これ程に被害を受けるというのが不気味だった。
そして、配属前の相楽がファースト・フォースに関して無知であったと言っても、防衛軍切っての精鋭達が、これほどの重傷を負うような事件を知らない筈がない。
テレビやニュースで騒がれるレベルの抗争だったのではないか。
それなのに、相楽にはそんな情報は一つとして無い。

違和感の正体は、そこだ。



相楽が配属される一ヶ月前。十一月二十五日。


一体、この人達は、『何と』闘ったんだ……






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