Story-Teller
U




 
……話を、しようと思う。
今、この世界がどうなっているのか。


現状(いま)を語るには、まず百年程(かこを)遡らなきゃいけない。




すべての始まりは、世界各国の優秀な科学者達が、地球の未来を案じたことだった。

原子力によるエネルギーの供給を、世界的に全面廃止してから、数十年。

得た安全性と比例するように、我々に近付いていたのはエネルギーの供給不足だった。
『危険なエネルギー』を遠ざけた人類は、同時に、己らがどれ程にそれに依存していたのかを思い知ることとなってしまった。

人類に大きな後遺症をもたらした原子力という名の大きすぎるエネルギー資源。
人々の生活を補助するものなのか、それとも、兵器として人々を苦しめるものなのか。時にはその強大すぎる力が溢れ、小さな生命すら死線に追いやるものなのか。

エネルギーの力を制せず、奪われた命は数知れない。
だからこそ、手を離したはずなのに。


それなのに、懲りる事もなくまた、新たなエネルギーを探して、再度その手を伸ばした。



──────────……


『急激に枯渇していく地球のエネルギー資源は、近い未来に失われてしまうだろう』

『便利で住み心地の良い生活に慣れてしまった人間は、その時、どうなってしまうのだろう』


科学者達は、行動した。
科学者達の全ての知識を集結させて、人工的なエネルギー資源を造り出す事に成功する……


それは一見すれば何の変哲もない水晶石の様で、未だにどんな方法で造られた物なのかすら解明されていないため、"Unknown Crystal (アンノウン・クリスタル) "……縮めて、【UC(ユー・シー)】と名付けられた。




─なぜ、UCは「未知の物」なのか?

それは、『UCを造り出した科学者達が、構造・材料・作り方を記さぬままに命を絶ってしまったから』だ。



ほんの一欠片で、家一戸の電力を担えるほどの膨大なエネルギー量を有するUCは、あまりにも強大だった。
恐れられたUCは『新しいエネルギー資源』ではなく、『凶悪な兵器』だと弾圧され始めてしまう。


UCを造り出した科学者達は世紀の殺戮兵器を創り出したテロリストとして指名手配され、追われる身となってしまった。




─────────………



『このまま、UCを奪われ、破壊されてしまうのは、本意ではない』


各地に逃亡した科学者達は、造り出した一億ものUCを守るため各国にUCを隠す事にした。
そうして、「これ以上の恥辱には耐えられない」と次々に命を絶ってしまったのだ。




─────────………



しかし、科学者達が姿を消してから数年後に見つかった数個のUCと、一人の科学者の手記により、事態は一転する。



手記には、UCの使用方法と安全な保管方法が記されていた。

資源に飢えた人々は、手記を頼りにエネルギーを生み出し、そしてUCの偉大さに気付いてしまった。
水晶体を特殊な方法で高温まで熱することで、得られる膨大なエネルギー。
その方法さえ解ってしまえば、水晶体さえ破損しなければ、なんとも簡単に『力』を得ることが出来てしまう。





……それからの世の手のひらの返し様は凄まじいものだった様だ。

率先して科学者達を『テロリスト』と囃し立てていた各国の幹部は、国力を上げてUCを探し始め、手中に収めようと躍起になった。

UCさえ手に入れば、半永久的に、エネルギーに困ることはないのだから。
そして同時に、まだ未知なるその存在が、自国を守り、他国を虐げるべく恐ろしき兵器へと成すことも、はっきりと理解したのだから。



そうした国の官僚の動きは、多くの反感を生み……






…………────────



科学者がUCを世に生み出してから、百年。

UCを巡り、世界では毎日の様に抗争が繰り広げられている。





─UCを保護し、『悪用する者がいれば』武力で制する、国の機関【UC防衛軍】。


─国家による資源の独占だと反発し、個々でUCを保有しようとする民間団体の俗称【反UC派】。



二勢力の苛烈な抗争の中、UC防衛軍内には一際注目を集めるチームがある。

高度な戦闘能力を持って、様々な特殊任務をこなす、UC防衛軍の精鋭部隊。
―その名も、"First Force"。




じゃあ、彼らを主体にして、話を進めていこうか?





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