Story-Teller
prelude




あの日俺が配属されたのは、枯渇していくこの世界の資源に射した"光"を守る、特殊部隊"ファースト・フォース"。

―今日から君は、Unknown Crystal Defense Army・FirstForceの一員です―


その声が告げたのは、俺が何かを護るための"言い訳"。
正義を振りかざした上で俺が護るものは、所詮は"自分のエゴ"。










目を覚ますと、まず感覚を刺激したのは喧騒。

それから、濁りきった視界。

そして、身体中の鈍痛。


近くで絶え間無く響く爆音とサイレン、そして銃声。

爆音と共に揺れる地面はざらざらと砂で汚れていた。

白煙と埃で淀んだ周囲を見渡し、指を動かす。

それから腕に力を入れて、ゆっくりと上体を起こす。


鈍く、軋むように痛む身体は、どうやら至近距離で起きた爆発で吹き飛ばされた様だ。ついでに、パタリと意識を失っていたようで。



耳に着けた小型の無線がひっきりなしにピーピーと甲高い音を上げ、持ち主に呼び掛けている。
一度深く息を吸い込んでから、無線を繋いだ。



『呼んだらさっさと反応しろ! この馬鹿者が!』

途端に無線から響く音が割れきっている怒鳴り声に、吸い込んだ息は溜め息となって漏れてしまった。


「……うるせぇ……」

『あ゙あ゙っ?!』

「はいはいはい、そんな怒鳴らなくても聞こえてますよ、生きてますよ」


砂を飲み込んでしまったのか、少し掠れた声で返すと、無線越しにチッ、と舌打ちが聞こえてきた。舌打ちの背後から響いてくるやけに高い音のサイレンが、異常に耳につく。
無線から意識をそらせば、無線越しに聞こえたものと同じ甲高さのサイレンがどこかで鳴っているのがわかる。無線の向こうの人物は、この甲高いサイレンの下にいるんだろう。

『反UC派の団体が南側に向かってる。南には避難所がある。被害が拡がる前に一気に片付けるぞ。 ……お前、今どこにいるんだ?』


問われ、素早く周りを見渡した。

自分が立つのは、平日のオフィス街の一角だ。
普段は会社員が溢れている場所だが、度重なる爆撃で道路は所々焦げて黒く色を変え、衝撃で割れたビルのガラスがあちこちに散らばっていた。
当然、近隣の人々はとっくに避難させているため、人気は無い。
今もまだこのオフィス街に残っているのは、自分と同じ任務を持って訪れた者か、または自分達を出動させる原因を作った者かの二択だ。


「……南ですか、わかりました」

『おい、何処にいるんだって聞いて……』


まだ何か喚いている無線をブツリと切り、爆撃の中心へとブーツを鳴らして駆け出した。










火薬の臭いに思わず咳き込んだ。

無線で聞いた『南』に向かえば向かう程に道路の荒廃は激しく、起きた爆発の大きさと回数を物語っている。ただ、建物はガラスが割れるだけで、大した被害は無さそうだ。
……あくまでも、爆発は『威嚇行為』の様だ。建物を直接攻撃していないところが威嚇らしい。

そういえば、引っ切り無しに聞こえていた爆発音が途絶えている。火薬が尽きたのだろうか。

耳を済ませば、一帯に響くサイレンに掻き消されてしまいそうな車のエンジン音。近くに、敵がいるらしい。

……応援を待つか……?
一瞬考えて、やれやれと眉を下げた。

仲間を待っている猶予は無いらしい。
目の前を運悪く通りかかってしまった『敵』を見つめて、妙に冷静にそう思った。



……とりあえず、口煩い上司の怒鳴り声は覚悟しておこう。





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