Story-Teller
1.初雪が降るまでに



ここ数日で、一気に最高気温が下がっている。

出勤の支度をしながら見た天気予報は、日本中が冬支度を始めていることを告げて、何がそんなに嬉しいのか「初雪が観測されるかもしれませんね」などと若い気象予報士は朗らかに微笑んでいた。
そんな言葉に、篠原紀彰は大きな溜め息を吐き出した。初雪なんて降られたら、こっちは任務に支障が出るかもしれないんだぞ、と。

今日は、隣県で観測されたUCのエネルギー反応を頼りに、山奥まで捜索しに行かなければならない。

一軍人である篠原でも、寒さは任務に支障が出る。
防寒対策をすれば、それだけ体が重くなるのだから、動きも遅くなる。それは、たったの数グラム、たったのコンマ何秒だが、命を懸けて戦うファースト・フォースの隊員たちのとっては、それでも大きな命取りになってしまうからだ。
それも雪なんて降られてしまえば、下手をすれば撤退しなければいけないかもしれないのだから。
迅速な任務の完了を目指すファースト・フォースとしては、今日中にUCの有無を確認しておきたい。だから、雪など降られたら困るのだ。

しかし、首都圏で初雪が観測されるのは、ほぼ確定しているらしい。遅くても、今夜には降るのだろう。
早めに任務を終わらせて、早々に帰還しよう。
朱色のネクタイをしっかりと締めてから、篠原はつけっ放しだったテレビの電源を落とし、足早に自室を飛び出した。

初雪が降るまでに、すべて終わって帰ってこなければ。





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