Story-Teller
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関は、一気に「敵」との距離を詰める。
ぬかるんだ地面など、戦闘態勢に入った関にとってはなんの障害にもなりえないようだった。


飛び込んでくる関に怯みながらも振り上げられたコンバットナイフを、右手に握り締めた警棒で弾き返す。
関の腕力に押されて退いた無防備な腹に、勢いを付けたままの左足をめり込ませた。
ぐぽり、と息を詰まらせた男が目を白黒させている間に、男の腹にめり込んだままの足で思い切り蹴り飛ばすと、伸びきった草の上に無様に転がっていく。
草の上で大の字になって動かなくなった男を見下ろし、気絶したことを即座に確認した。意識があるならば、もう一発足蹴りを喰らわせるつもりだった。

関が男を一瞬見下ろした間に右側方から飛び掛かって来た別の者には、身を屈めて胸ぐらまで入り込み、至近距離から顎を右手で鷲掴んだ。
顔を掴まれて咄嗟に身動きが出来なくなった男の後頭部を逆の手で引き寄せて、振り回すように地面へと叩きつける。
昏倒した男の首に手刀を落とせば、パタリと簡単に意識を失った。



瞬きをする間もなく二人を制圧した関の背後に迫った男が、大声を上げて警棒を振りかざした。
的確に関の後頭部に狙いを定めていたそれは、瞬時に間に割って入った相楽の手が阻む。
相楽の存在に気付いていなかった男達は、突如姿を現した相楽に狼狽しながらも、一斉に相楽に狙いを定めて駆け出した。


相楽は、掴んだままの警棒をぐっと引き寄せ、その持ち主である男は負けじと相楽の胸ぐらに手を伸ばして掴んだ。
相楽のパーカーの襟が伸びるほどにしっかりと掴んだ男が振り上げた足が、脇腹に食い込む。当たりは軽く、大した痛みは無い。
警棒から手を離した相楽は、胸ぐらにある男の手を両手で掴み、外側に捻り上げた。
痛みに怯んだ男の顎先を爪先で蹴り上げれば、脳震盪でグラリと身体を揺らす。
追い討ちを掛けるように、身体を旋回させて勢いをつけたふくらはぎを男の腹に叩き込むと、男は木の幹にぶつかって突っ伏した。


間髪を入れずに背後から相楽に掴み掛かった男の首に、関の腕が絡み付く。
ギリギリと頸動脈を締め付けると、暫し抵抗するように関の腹に肘を突き入れていた男は、不意に糸が切れたようにガクンと身体を弛緩させて気を失った。

次々と倒れていく仲間に気圧されて立ち竦んだままの最後の一人は、草を踏み締めて近付いてくる相楽に、一歩ずつ後退った。


「くっそ……! 邪魔しやがって……!」


叫んでから、意を決したように警棒を構えて駆け込んでくる男に、相楽は固く眉を寄せる。
振り上げられた警棒を腰から引き抜いた自分の警棒で受け止め、攻撃が阻まれた恐怖を顔面に浮かばせた男に、静かに口を開いた。


「邪魔したのはどっちだよ。無駄な説教の種増やしやがって」


相楽がそう囁くと、男は顔を引き攣らせる。
男を冷たく見据えて警棒を引き、体勢を崩した男の側頭部を、軽く跳ねて蹴り上げた。ぐらぐらと大きく体を揺らして膝を着いた男は抵抗することなく倒れ、相楽は溜め息を吐いて見下ろす。

途端に静かになった辺りを見渡し、相楽と関はホルスターに警棒を戻した。


「結構呆気なかったなー」


やれやれ、と肩を回して呟く関に、相楽は苦笑を返した。



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