Story-Teller
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未だ怒鳴り合う男達を息を潜めたまま窺っている関は、不意に相楽へと視線を落とす。
腰に巻いたホルスターに納められたままの銃に掛けていた片手を一度離し、その隣にある警棒へと手を移動させた関を見て、相楽は眉を潜めた。


「関、何考えてるの……?」

「二択、考えてる」


静かに返される言葉と、真っ直ぐに見つめてくる視線を受け止め、相楽はさらに眉を寄せる。嫌な予感しか、しない。


「この任務は、相楽の初UC確保任務っていう記念的なもんだから、選択権は相楽にあげる」


前置きの後、ちらりと男達に視線を移した関は、口許を悪戯気に歪めて相楽を見た。


「二択だ、相楽。……このまま奴等にUCを奪われるのを見送って篠原隊長を待つか、奴等を【制圧】して阻止するか」

「っ関、無闇に交戦するのはだめだって木立さんが……」

「じゃあ待とうか? 隊長を。……どうせ怒られるんだったら、打てる手を打ってからの方がいいんじゃない?」


ぐっ、と言葉を詰まらせた相楽は、関を見つめ返した。関は何も言わずにその視線を受け、相楽の返事を待つ。


「いいから進むぞ! さっさとしないとファースト・フォースが来る!」


その間も怒鳴り声は響き、男達はまた歩み始めた。彼らも方角を見失っているようだが、がむしゃらに進むことにしたらしい。
それを横目で見た相楽は、ゴクン、と唾を飲み込む。
ゆるゆるとした動作で腰の警棒に手を掛けると、関はにやりと大きく笑った。


「決まったな」


そう言が早いか、関が一気に立ち上がった。
突如茂みから姿を現した関に気付いて足を止めた男達に、関はひらりと片手を振ってみせる。


「どうも、皆さん! 揃ってハイキングですかぁ? でもそんなコンパスじゃあ、迷子になっちゃうんじゃない?」


片手は警棒に掛けたまま、関は息巻いた。相楽は茂みに身を隠したまま、関を見上げる。
意味が解らずに眉を潜めていた男達だが、不意に先頭に立つ男がハッとしてスタンガンを構えて声を張り上げた。


「ファースト・フォースの関か!」

その声に、男達は続々と警棒やナイフを構えて関を睨み付ける。

関は至極楽しげに口許を緩めてみせた。


「なんだ、俺も有名なんだな。下っ端だから知らないかと思ったのに」


するするとホルダーから警棒を引き抜いた関を見上げ、相楽もしゃがんだまま警棒を手にする。

茂みの向こう。
敵意を隠しもしない男達が、何事か叫んで一斉に関へと向かってくるのが見えた。



関が土を蹴り上げると同時に、相楽は一気にぬかるんだ地面を蹴った。





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