菓子パンヒーロー擬人化
トモダチ以上
※丼トリオ



「聞いてよ、かま!ジャムのおっちゃんがさー、丼トリオ★なんてダッサイ呼び方してくんだよ!」


僕の家に飛び込んで来て早々、少し幼い顔を不愉快そうに歪ませて、天丼がまくし立てた。

夕飯のコロッケを作っていた僕は、パン粉まみれで苦笑する。


「てんちゃん?
"おっちゃん"じゃないだろ、"おじさん"だろ」

「おじさん、なんて上品で優しそうな奴かよ、あいつ。おっちゃんで充分!」


勝手に人の家の冷蔵庫を開けて、当たり前の様にオレンジジュースを出してコップに注ぐ天丼は、更に眉間の皺を深くする。


「丼トリオって、ネーミングが古い!
そもそも、トリオなんてさ、なんかいつも一緒にいるみたいじゃん!」

「…いつも一緒にいるのは間違えてないような…」


僕が手を止めてそう言えば、はあっ??と天丼が目を細めた。


「いつ?どこで?誰が?誰と?どの様に一緒に?」

「え?え?」


いきなり問う天丼に、僕は思わず目を泳がせた。


いつも一緒にご飯を食べて、いつも一緒に出掛けて、いつも一緒に行動してた。

そう思ってたのは、僕だけだったかな。


そう悩んでいると、視界に明るい茶の髪が見え、あ、と声を上げてしまった。
それに気付いて、天丼が振り返る。


「今日、コロッケ?」

キッチンをちらりと覗いていたのは、カツ丼。

僕の部屋のベッドを占領して昼寝していたけど、ようやく起きてきたようだ。

僕の手元を覗きこみながら、アクビを噛み殺す。


「腹減ったー」

「揚げ終わったらすぐにご飯にするから、ちょっと待ってて」


慌ててパン粉まみれの手を洗うと、カツ丼はボウルの中の千切りキャベツを摘まんで眉を寄せる。

それから小さな溜め息を漏らして笑った。


「丼トリオ、ねぇ」

「あ、カツ、聞いてた?ださくね?!丼トリオ!!」

一度は冷静になった天丼が、また興奮して声を高くする。
それに対してカツ丼は口角を緩く上げて、首を傾げた。


「いいんじゃねぇの?丼トリオ」

「はああっ?!カツ、どうしたの?!だっさっ!!だっさっ!!」


目を見開いてバンバンとテーブルを叩いた天丼は、あり得ない!を連呼しながらキッチンを出ていく。

それからリビングから大音量でテレビの音が聞こえてきた。

ああ、御近所迷惑だって何回言えば………




「いつも、一緒にいるしな」

不意に、ポツリとカツ丼が呟いて、僕は思わず彼を見つめた。

やっぱり千切りのキャベツを指で弄んでいるカツ丼は、視線はキャベツに向けたままだ。


「トモダチ以上家族未満、みたいなもんだろ」


言って黙りこむカツ丼に、僕はポカンと口を開いてしまう。

見れば、カツ丼は頬どころか耳まで赤い。

しばらくリビングから聞こえるテレビの音が響いていたけれど、僕は苦笑混じりに口を開く。


「なんかちょっとセリフ臭いよ、カツ」

「うるせぇよ!」


相当恥ずかしかったのか、真っ赤な顔をしてキッチンを出ていったカツ丼に、僕は口許を緩めた。




ああ、そっか、良かった。
僕の勘違いじゃなかった。



早く夕飯にしよう。
多分、てんちゃんもすぐ機嫌治るだろうし。
デザートに作ったプリンも食べよう。



丼トリオ、僕も悪くないと思う。





2011/4/16


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