決裂の末 -psychology and truth- 本編 破壊的アリウムII 私の中で一番古い記憶はもう薄れかけてきてるけれど、荒れ果てた郊外に家族みんなで丸まって、何かに怯えてた事。 お母さんから聞いた話なんだけれど、私は造られてる最中に爆発してしまったんだって。 親から貰った魔力が膨れ上がって、体も私を保管してたカプセルも吹き飛んでしまった。 それで最初に装着するはずだった、『知力の脳』が焼き払われてしまった。 …だから私は考える能力がない。 分かるのは、魔法だけ。 私より後に生まれた弟も、やっぱり爆発してしまった。 でも彼は私とは違って、最後に入れるはずの『精神の脳』を焼いてしまった。 だから彼は、ロボットの心も、人の心も理解できない。 やがてお父さんもお母さんも、心液が底をついて来て衰弱し始めた。 …このままじゃ廃棄になっちゃう。 使えないロボットは一時的にこの郊外に置かれて、やがて時が来たらバラバラにされて棄てられる。 他のロボットは、郊外を"スラム街"なんて呼んでる。私の名前と似てるから、私もそれでからかわれたりしてた…なんて、どうだっていい話だけれど。 このまま時が来て、皆バラバラにされたら。 折角命を受けてきたのにここで終わってしまうの? どうして私達を造ろうと思ったの? 私達に何を望むの? …自分の存在価値に対して、たくさん疑問が出てくる。 風が冷たい。 でも風を凌げる場所まで歩くのに、傷だらけの足が痛くて歩けない。 「…あ…」 不意に聞こえたか弱い声に私は過剰に振り向く。 体を動かすことすら辛そうなお父さんとお母さん。 最初の頃は、私達を守ってくれた、お父さんとお母さん。 動けない彼らの周りに、魔物が集まってきていた。 「…!」 郊外という名のフィールド外。 当然魔物もいるはずだ。 そんなこと馬鹿な私でも分かっていたのに、何故だかその魔物達が怖かった。 特別大きな魔物でもないのに、お父さんとお母さんを一瞬で噛み千切る想像をしてしまった。 …魔物は私の存在に気付いた様で、さらに数を増して私達に近付く。 「あ…う」 立つことすらままならない私。 隣には死んだ目の弟。 「…姉さん…もう駄目なんだよ、僕達」 「……」 「距離的にバラバラになるよりさ、皆で死んだ方が楽だろ」 「…ヒューズ!」 私は思わず弟の名前を叫んでしまった。 自分の名前を叫ばれても尚動じない彼。本当に死んでしまっていいと思っているの? …どんな気持ちでお父さんやお母さんが私達を作ったか、分からないの? 分かれない弟を睨みつけているうちに、魔物の群れはもう両親の足元まで来ていたの。 口を開ける魔物。 「あ…ああ…」 …今、私に出来る事は。 その時、私が起こした行動は。 「来るなああああああああああああああああ!!」 これで良かったのだろうかと、今でも不安になるけれど…。 [return][next〕 [戻る] |