決裂の末 -psychology and truth- 本編 淡紅色U 私がアイから名前をもらって10年。アイは最初出会った頃から大きく成長しました。彼女はもう16歳になるのに、相変わらず私しか話し相手がいませんでした。でも、それにはちゃんとした理由があります。 「……」 「アーイッ、どうしましたか、浮かない顔して」 「ううん、何でもない…」 アイは私を見ずに、部屋の窓を眺め続けています。 私も一緒になって窓を眺めると、制服を着た知らない女の子2人が並んで歩いていました。 「…アイ」 「えへへ、私が学校に行きたいなんて贅沢よね…こんな見た目だし」 そう、アイは"普通の人と見た目が違うから"という理由で外に出ることが出来ない、可哀想な子です。 綺麗なブロンドの髪に、私とお揃いの赤い瞳。 元々この国に生まれた訳では無いのに、『人間は黒髪黒瞳であるべきだ』と強いているおかしなこの国のルールに囚われて、私と出会った6歳の頃から外に出ていません。 「…親の片割れはね、この国の生まれなの。見た目は外国人だけれど、名前はこの国…うふふ、私も黒髪に生まれたかったなあ」 寂しそうに外を見るアイ。私だけでは満足出来なくなってしまったのでしょうか。 流石に16年生きてきてまともに話すのが私だけというのは、確かに寂しいかもしれません。 しかし私は、なんだか後ろめたいような、私も私で寂しいような、変な気持ちになりました。 「…なーんちゃって!勉強もお料理も全部紅が教えてくれるから私は寂しくないわ。紅みたいに素敵な先生、他にいないわよ!」 勿論、紅は世界で一番の親友だわ!…そう言って、私に抱き着くアイ。私はアイに抱き着かれるのが物凄く好きです。彼女は体温も心の温度も温かいのです。 __2人だけの空間で、私とアイは日を重ねる毎に友情も重ねていくのでした。 [return][next〕 [戻る] |