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決裂の末 -psychology and truth- 本編
新世界第1歩

「おー!!人間さんたち!やっほー!」

椿の部屋を出てから徒歩5分程。
先程のフラムという少女がベリタスの入口付近にいた。どうやら門番だというのは本当のようだ。

「こ、こんにちは…私、鈴音暗乃っていうの」
「くらの…くらのん!フラムはフラムっていうんだ!よろしくね!」
「僕は風雅っていって、こっちはレヨちゃんっていうんだ」
「風雅!レヨ…レヨちん!よろしく!」
「レヨちん…?」
「そう、レヨちん!フラムはニックネーム付けるの好きなの!」
「僕のはないの?」
「んー…今思いつかないから風雅でいいや!」

アバウトすぎる彼女の言動。しかし、友好的に接してくれる点は、彼らも充分に居やすいと感じられる利点であった。

「どしたのー?もう1人、いなかったっけ?」
「えっと、もう1人は椿さんとお話してるの。私たち、いろいろ見学したいのだけれど…案内してもらっていいかしら?」
「案内かー!そっか!わかった!そろそろ門番交代の時間だし、フラムが案内してあげるね!」

そういうと、フラムはえへへと笑い、「なんだかお姉ちゃんになった気分」と嬉しそうに言う。

「…とりあえず、ついていくか」
「そうね。レヨも、大丈夫?」
「私は全然大丈夫です」

「それじゃ、レッツラゴー!!!」



* * *



「ここがべリタスのセントラル…ビル?建物?みたいなもの!アルビオン・ハウスっていうの!」

曖昧なフラムの説明と一緒に、ギルの高台からも見えていた大きく立派な建物に到着した一同。
ティスタにある1番大きな建物よりも遥かに大きいであろう、壮大な威圧感を放つアルビオン・ハウスは、レヨたちを多少怖気づかせた。

「ここはね、ロボットたちの寮と、訓練所と、研究所と、学校と、えーっと…とにかく、いろいろな施設が合体してるの!」
「へ、へえー…ここが、観光に1番の場所なの?」
「多分?」
「へ?」
「ここに来たらたくさんのロボットと会えるの!だからフラムも観光地教えてもらうの!」
「つまり…フラムちゃんでも分からないからとりあえずここに来て教えてもらうってこと?」
「そー!」
「そ、そっかあ…」

流石の風雅でもフラムと話を合わせるのは難しいのか、動揺しながら状況を理解しようと試みる。

「あのねあのね、フラムも一応チームに入ってるんだ!」
「チームって何?」
「"魔物"を倒すチームだよ!フラムはね、魔法が使えるの!」

自動ドアが開き、何台も並んでいるエレベーターの内の1つを呼び出す。
エレベーター内は一体何人収容できるか想像がつかないくらい広々としていた。

「訓練所は2階と3階にあってね、フラムのチームの訓練所は2階にあるの…人数が少ない、小さいチーム用の訓練所が2階なんだよー」
「その訓練所に、フラムが頼れる人がいるってことかしら?」
「そだよ!休憩中は優しいんだけれど、訓練中は厳しいの…休憩中だといいなあ」

厳しい、というフレーズに暗乃は少々恐怖を感じる。…人間だと知られたら容赦されないのでは。そんな暗乃の心配もお構い無しにエレベーターは上昇していく。

「ねえフラム。そのロボットって__」
「ついたよー!こっち!」

私たちが会っても大丈夫なの、そう言いかけた暗乃をフラムが遮る。
そのまま廊下にでて、角を曲がったフラムの後を追いかける。同時に心配や緊張が高まっていく。

「暗乃、大丈夫だよ。瀬衣先生が言ってたでしょ」
「風雅…」
「鈴音先輩って心配症なんですね」
「レヨ…って、アンタたちがお気楽過ぎるんでしょうが。私は怖くて仕方ないわよ」
「怖いのー?」
「ひえっ!?」

角を曲がったはずのフラムが追いつけていないレヨたちのところまで引き返してきた。
突然出てきたフラムの顔に、不覚にも暗乃は驚く。

「あー、フラムちゃん。暗乃は怖がりだから驚かすの駄目だよ」
「くらのん、怖がり!?フラムのこと、怖い?」
「べ、別に怖くないわよ!驚いただけ!」
「えへへ、くらのん元気だね!張り切って行こう!」
「今の何をどう解釈したら元気だと思えるのかしら…はあ」
「やっぱり暗乃は苦労症だねえ」
「うるさい」



* * *



「アオちゃーん!!…うげえ」

『べリタス特殊防衛隊』と書かれたプレートを下げたドアを思いっきり開け、元気一杯に相手の名前を呼んだフラムは室内の光景を見て一気に顔を歪めた。

「……何だよ、フラム。人のこと呼んでおいて何急に嫌な顔してんだ」

室内の中央で剣を振るっている"彼"はこちらに一瞥もせずに、向かい合って同じように剣を振り動かしている"訓練用ロボット"の相手をしていた。

「あのねー、アオちゃん!人間さんを連れてきたのー!!観光場所教えてー!」
「ちょっ、フラム…」
「…人間?」

必要以上の大きな声にさらにビクつく暗乃。
案の定、"人間"というワードに反応した彼は、訓練用ロボットの電源を切り、こちらへ視線をやる。

次いで出てきた言葉は、



「……」



絶句だった。

「あのねアオちゃん!この人たちはね__」
「本当に、人間か?」

彼の青い前髪から見える鋭い目が3人を捉える。

「そうだってば!ティスタから観光にきたんだって!」
「は?ティスタ?なんでわざわざ」

虫の居所が悪いのか、苛立ちを隠しきれていない彼は、一層目付きを鋭くする。
暗乃は勿論、風雅ですら口を開けない冷たい空間で、



「…私を、ここで働かせてください」




____緑の少女が、沈黙を破った。



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