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書物〜Storys〜
7月8日~05
俺の問いかけに、飯田さんは黙っている。俺も黙って話し始めるのを待つ。
やがて、意を決したかのように飯田さんは小さく頷くと、再度俺の顔を見直してくる。

紗葉:「大原くん、一つお聞きしてもいいですか?」
準一:「うん、何?」
紗葉:「大原くんは、誰か好きな女の子がいらっしゃるんですか?」
準一:「え?というと?」
紗葉:「その、こ、交際したいお相手がいるのかということで、その…」
準一:「……ふざけて聞いてるなんて事はまずありえなさそうだね…」
紗葉:「はい…」
準一:「俺が好きな女の子か…。飯田さんなら、もう気付いてるかと思ったんだけどな。気付かないかな?」
紗葉:「多分、という見当はついています。けど、こういうことは大原くん本人から聞かなければ意味がありませんから…」
準一:「そっか。なら答えないとね。…俺の好きな人は、その…飯田さんだよ」
紗葉:「え?」
準一:「だから、俺は飯田さんのことが好き、なんだ。このデートの最後に、告白しようと思ってた」
紗葉:「…………」

俺の言葉に飯田さんは何も言わずに俺のことを見ている。
俺は気恥ずかしさを誤魔化すように髪をくしゃくしゃとしながら続ける。

準一:「でも、今言っちゃったからね。全部言うよ。…飯田さん、俺と付き合って下さい」
紗葉:「……私なんかで、いいんですか?私なんて暗いし、地味だし」
準一:「飯田さんは暗くなんかないし、地味なんかじゃない」
紗葉:「それに、他の女の子に比べたら全然…。それに、大原くんは女の子たちから人気が高いし…」
準一:「他の女の子がどうとか、俺の人気がどうとか、全然関係ない。俺は飯田さんが好きなんだ。それだけだよ」
紗葉:「本当に私なんかでいいんですか?」
準一:「うん。飯田さんじゃないとダメだよ」

俺はまっすぐに飯田さんを見て言い切る。
もうここまで言ったんだ。後は返事を待つのみ。
飯田さんは少しの沈黙の後、小さく頷くと俺の目を見返してきた。

紗葉:「私で良ければ」
準一:「え?それじゃあ…」
紗葉:「はい。よろしくお願いします」

呆気に取られた俺の顔を、飯田さんはおかしそうに微笑んだ。
俺はというと、望んだ返事が返ってきて喜びが心の奥底から湧き上がってきて、それを抑えようと必死だった。
でも、この嬉しさは抑えきれないものなのは、返事を聞いた瞬間から分かっていた。

準一:「よっしゃああぁぁぁーーーー!!!!」
紗葉:「ど、どうしました!?」
準一:「あ、ゴメン…。嬉しくて、つい…」
紗葉:「くすくす。おもしろい大原くん」
準一:「あっ、笑わないでくれよ〜」
紗葉:「だって、ふふ、ものすごく可笑しかったから」
準一:「むぅ…。失態…」
紗葉:「くすくす」
準一:「あははは」

俺と飯田さんは互いにしばらくの間、こうして笑い合っていた。

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あきゅろす。
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