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書物〜Storys〜
7月8日~04
準一:「それよりも暑くない?」
紗葉:「はい、少し……」
準一:「丁度あそこでアイス売ってるから買って食べようよ。俺が奢るからさ」
紗葉:「いえ!さっき駅ではジュースをご馳走になったのに、今度はアイスまで。そこまで甘えられません」
準一:「そんなの、気にしなくていいのに…。俺が好きでやってることなんだからさ。俺に甘えさせてよ」
紗葉:「え?大原くんが、甘える?誰にですか?」
準一:「誰にって、飯田さんに」
紗葉:「えっと、私がジュースやアイスを大原くんにご馳走になることがどうして、大原くんが甘えることになるんですか?」
準一:「俺が飯田さんに奢るのは俺がそうしたいから。だから、飯田さんは俺に奢られて欲しいんだ。それが俺の甘え。俺のやりたいようにさせて欲しいんだ。さすがにアッチ系の好き勝手は拒否してくれて構わないけど、こうやって俺が飯田さんに何かを買ってあげたい、奢りたいって言った時は遠慮しないで欲しいんだ。ごめん、好き勝手言いすぎた。謝るよ」
紗葉:「いえ、そんなことは……。それじゃあ、私も大原くんのお言葉に甘えて奢られちゃいます」
準一:「ありがとう、飯田さん」

俺と飯田さんは笑い合うと、売店へと向かいアイスを買った。

◎◎◎

俺と飯田さんは買ったアイスを食べながらベンチに座る。
隣に座る飯田さんに比べると、俺はだいぶアイスを食べる速度が速いような気がする。
いつも友人であるあいつと一緒の時は俺が一番遅いのだが…。やはり、あいつが早いだけのようだ。
まぁ、そんなことは今はどうでもいい。
俺は飯田さんのことを横目に見る。
飯田さんは俺のことなんか気にもしていない様子でアイスを食べている。普段の彼女の姿からは連想できない姿だ。

準一:「アイス、好きなの?」
紗葉:「え?」

気付いたら、俺の口からはそんな疑問が飛び出していた。
飯田さんは少し困ったような顔で俺を見ている。

紗葉:「あの…ダメでしょうか?」
準一:「い、いや。ダメって訳じゃないけどさ…。以外と言うか、飯田さんがそうやってアイスを食べるとは思わなかったから。聞いてみただけ」
紗葉:「そ、そうですか」
準一:「ごめんね、邪魔しちゃって」
紗葉:「いえ…。私こそごめんなさい、食べるの遅くて…」
準一:「いいって、いいって。気にしないで」

俺はそう言うと飯田さんから視線をずらして、少し離れたところに見えるアトラクションに目を向ける。
デートはまだ始まったばかりだ。楽しませてあげなくちゃ、罰が当たるだろう。
俺はそんなことを考えると、デートの関しての持てる知識とこの遊園地の情報を総動員してこの後の計画を考え始めるのだった。

◇◇◇

そんなこんなで、飯田さんの意見を主に尊重して組み上げた予定を元に遊園地を楽しんだ俺達は、ラストに飯田さんがどうしても乗りたかったという観覧車に乗り込んだ。
ゴンドラの中で、向かい合わせに座った俺達は、無言のまま外を見る。
少しずつ町の景色が遠くなっていく。
暗く、夜の帳の下りた街はネオンサインや街灯、建物の照明などで明るく輝いていてとても綺麗だった。
俺は飯田さんの方を見ると、飯田さんは俺の方を真剣な眼差しで見つめていた。
俺はその眼差しに何とも言えない雰囲気を感じた。

準一:「飯田さん、どうしたの?」
紗葉:「…………」

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あきゅろす。
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