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書物〜Storys〜
7月8日~01
準一:「えっとね………。さっきの飯田さんの言い方だと、ちょっと背徳的に聞こえるから…そうだね、うーん……難しいね。まぁ、とにかく、俺以外にはさっきみたいな言い方はしないほうがいいよ。他の男が聞いたら、多分、間違った解釈しちゃって面倒なことになると思うからさ」
紗葉:「えっと、分かりました。私、大原くん以外とはデートしませんね」
準一:「ど、どうも…。じゃなくて!俺、そんな意味で言った訳じゃないからね!?」
紗葉:「あの…大原くんは既にご存知かとは思いますが、私、今日の大原くんとのデートが初めてなんですよ?」
準一:「そ、それは、ねぇ?誘った日に本人から聞かされてるから、知ってるけどさ……」
紗葉:「くすっ、でも大原くんはデートの先輩ですから、私は安心です」
準一:「え、何のこと?俺もデートは初めてだけど?」
紗葉:「はい?大原くんも初めてなんですか?」
準一:「うん。そうだけど」
紗葉:「でも、美咲ちゃんが大原くんはデートをたくさん経験してるだろうから、安心しなよって…」
準一:「市原の奴…!また根も葉もない事を!」
紗葉:「あの…もしかして、美咲ちゃんが言っていたことって?」
準一:「ああ、俺がデートの経験回数が多いのどうのって話でしょ?市原が飯田さんに言ってたことは、多分ほとんどがガセだよ」
紗葉:「ガセ……、嘘、ということですか?」
準一:「そう。そういうこと。市原ってホント、根も葉もない事を話すのが上手いから」
紗葉:「そうですか……。少し嬉しいです」
準一:「なんで俺も初デートで、飯田さんが嬉しいの?」
紗葉:「い、いえ!気にしないで下さい!」
準一:「まぁ、いいけど」

俺は小首を傾げながら、ふいに自分の腕時計を見る。
本来の待ち合わせ時間よりも、10分近く早いが電車の来る時間を考えれば、丁度いい時間だった。

準一:「飯田さん。予定の時間よりもちょっと早いけど、いい頃合だからそろそろ行こうか」
紗葉:「あ、はい。分かりました」

俺がそう言うと、すぐに飯田さんが隣に並ぶ。
それを合図に俺は駅に向かって歩き始める。隣には飯田さんが歩いている。

準一:「飯田さん、どうしたの?顔、赤いよ?」
紗葉:「え!?嘘!」
準一:「ホント。耳まで真っ赤だよ?大丈夫?もしかして、熱があるとか……」
紗葉:「だ、大丈夫です。お、お構いなく……」
準一:「そう?なら、いいんだけど。でも、辛かったら遠慮とか無しにすぐに言ってね」
紗葉:「は、はい。ありがとうございます……」

俺は顔を真っ赤にしている飯田さんの顔をもう一度、しっかりと見た後、再び前を見る。
駅の改札に辿りつくと、俺は列から外れた後ろで飯田さんが切符を買い終えるのを待つ。俺はSu○caだから切符は必要ない。

紗葉:「お待たせしました〜」
準一:「あらら、お疲れ様」
紗葉:「す、すごい人混みでした〜」
準一:「まぁ、日曜だしね。でも、まだ全然混んでないよ」
紗葉:「そ、そうなんですか〜?」

切符を買って来て、あまり経験したことが無いのだろうか、人の多さにヘロヘロになって帰還した飯田さんの肩を支えながら俺は話す。

準一:「飯田さん、大丈夫?暑かったでしょ?ほら、あそこでジュースでも買って飲もう」
紗葉:「は、はい」

俺は2人分のジュースを自販機で買うと、飯田さんにその内の一本を手渡す。

準一:「はい、これ」
紗葉:「ありがとうございます。………ふぅ」
準一:「どう?落ち着いた?」
紗葉:「はい。おかげで」
準一:「なら良かった」
紗葉:「あっ、そうだ。今、飲み物代を払いますね」
準一:「いいって、これくらい。俺の奢りつもりで買ったんだから」
紗葉:「でも……」
準一:「いいの。ははっ、やっぱり飯田さんは、こんな小さなことまで律儀だね。他の連中なら、むしろ半強制的に奢りにしてくるのに」
紗葉:「あの、その……ありがとうございます」
準一:「どういたしまして」

飯田さんが丁度お辞儀をしたその時だった。
上階、駅のホールから電車の走る轟音が聞こえた。時間的に考えれば、俺達が乗る予定だった電車だろう。

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