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裏裏山から帰ってきた三人は、見違えるほど仲良くなっていた。

思った以上に、仙蔵たちが狼を見る目が感動を含んでいる。

「すごいな狼!作法委員会に入らないか?」
「そうですよ、作法委員会が一番向いてると思いますよ」

委員会へと勧誘されるも、ここの生徒ではないことを理由に遠慮させてもらう。

「そうか…」

しゅん、とする仙蔵には悪いが。



「では、狼はどこで寝泊まりするんですか?」
「あ」

そういえば聞いてない。

どこで寝泊まりするんだろう。
この世界にいる限り宿も必要だし。
首をかしげて、聞いていないか記憶をさかのぼる。
が、聞いていない。


「どうしよう、僕野宿だ…!!」

がたがたとこちらを信じられないものでもみるように見てくる狼の姿に、二人の心臓がきゅん、と音を立てた。

「「私の部屋に来る?同室はどうとでもなるよ」」

いわゆる、父性愛の誕生であった。


「学園長に聞いてみる…」

せっかく仲よくなった二人の誘いを断るのは心苦しいけども、学園長の許可なしに勝手なことはできない。
その言葉も最もだ、と頷き、三人は仲良く学園長の庵へと連れ立った。


「狼の泊るところは、立花仙蔵のところじゃ。仲良くなっているのなら丁度いい」
「は、はい」

戸惑う狼の後ろでは、項垂れた綾部とガッツポーズを掲げた仙蔵がいた。





「よ、よろしく、ね…」
「あぁ!任せろ!」

仙蔵の部屋へと案内されている狼がおどおどというと、仙蔵は輝く笑顔で狼を見る。

「立花くんと同じ部屋で、安心した」

はにかみながらこちらを見上げる姿に、また仙蔵の胸はきゅん、と音を立てた。

「わたしはー?」

仙蔵の後ろからひょこ、と顔を出す綾部に一瞬身体がはねるが、気にせずに綾部に笑顔を向ける。

「綾部くんと一緒じゃないのも、残念、かも」
「かもって」

どやぁ、とこちらを見てくる先輩がうざい。
そろそろ分岐点に差し掛かる。

「じゃぁ、食堂で」
「あぁ、またな喜八郎」
「またね…」

二年長屋へと足を進める綾部を見送り、二人は四年長屋へ向かった。
なかなか会話は進まなかったけども、仙蔵がよく気を回してくれるので、狼にとってもあまり苦痛に感じることはなかった。

「ここが私と狼の部屋になる」

同室はどうした。
そんな突っ込みも入れられないまま仙蔵が開けた部屋の中へと背中を押される。

「お、おじゃまします…」

おずおずと足を踏み入れて、中を見渡す。
綺麗に片づけれていていて、どうすればいいのか悩む。
動いたりすれば汚してしまいそうで困った視線を仙蔵に向ければ、仙蔵の顔が情けなく緩んだ。

あぁ、もう、可愛い。

自分よりも年の低い子、愛嬌のある顔、さらに身長と童顔のせいでさらに年下に見える狼は、仙蔵にとって愛でるには十分な存在であった。

「ここを自分の部屋だと思っていいんだぞ!!」
「うぁ!」

押さえきれない何かを溢れさせて仙蔵が狼に抱きつく。
抵抗するつもりもないのでそのまま腕に収まる狼の姿にまた仙蔵の心臓がきゅんとする。

「お前私の弟にならないか…!!」
「う、僕弟いるの…」

突然のお誘いに眼を白黒させるが、無理、と断っておく。
さて、そろそろ夕飯の時間である。





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