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依頼をどうぞ。



久しぶりに会った狼は相変わらず成長していなかった。
自分の腰までしかない身長を見下ろしながら、秀吉は少し疲れた様子で狼に頼みごとをした。

「半兵衛の具合を戻してやってはくれんか」

秀吉の後ろから輿に乗せられた半兵衛が姿を現す。
どことなく、吉継の機嫌が悪い。
半兵衛を輿に乗せているからではないことを悟った狼は遠い眼をしながら

「ご、ごめんね。仕留め損ねたせいで…」

ひたすら申し訳なさそうに謝った。
しかし、見た目は身長と童顔のせいで二割増しに幼く見えるおかげで秀吉たちは強く怒れなかった。
そもそも狼が悪いわけではないし。

「大丈夫だ、狼。アレを始末するのが依頼だったのか?」

珍しく三成が穏やかな様子で狼の青い髪をなでつける。
しかし狼のとっては最早慣れたもので、頷いて事の顛末を説明した。

「信玄さんに頼まれたんだよね。幸村を元に戻してやってほしいって。
幸村はもう本調子に戻ってるから、眼帯とオクラと露出狂とニートを元に戻すためにあのこを始末しておこうと思って。
それのついでにみんなにも挨拶回りをと思って。あ、半兵衛さんお久しぶり、診せてね」

簡単な医療忍術を使いながら、狼は三成たちに今後の予定を話せば、三成が先程のことを詳しく狼に説明した。
そして、いまの所在も。

「牢に?」

首をかしげて狼が三成に問いかけた。
三成は頷いて後で案内しよう、という。
けれども、なんとなく狼の心の中には暗雲が広がっていた。

"うっわ嫌な予感すごいんだけど"

さて、それが当たるのかどうかは後ほど。


そして、狼は

「あのね、アレをここで仕留めちゃいたいんだけど、手伝ってくれない?」

豊臣軍にとあるお願いをした。








牢に入れられた天女は考えていた。
なぜ、補正が効かないのか。
伊達政宗にも、前田慶次にも、長曾我部元親にも、毛利元就にも、真田幸村にだって効いた補正だったのに。
あの、小さな子供が現れてからまったく効かなくなってしまった。

腕の中に泣きだした子供を慰めるために自分を見据えたあの幸村の目は、完全に天女のことを異端だと見据えていた。
そんな瞳で見られることが我慢できなかったが、それでも、その瞳にこれ以上近づけば斬る、という言葉を読み取ってしまったために言葉を紡げなかった。

補正の中に、特殊能力をつけてもらったが相手は後に日の本一の兵と呼ばれる武将である。

まともに斬りかかって助かるわけがない。
だから大人しく引いたのだ。だって、豊臣軍は簡単にひっかかってくれると思ったんだもん。
ぶすっとする彼女の考えは間違っていないけれど、それは彼らの人格を否定する考えだと気づかないのだろうか。



階段から、人の足音が聞こえてきた。

一人のようだ。

もしかしたら、私を出してくれるのかも!

牢の柵につかまり、天女は期待に満ちた視線を階段に向けた。




そして、姿を現したのは

「天女様、どこかお怪我はございませんか」

うっとりと恍惚に染まった表情でこちらをみる彼女のお気に入り、石田三成だった。





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あきゅろす。
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