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手袋【ベルフラ】

まだ10月だと言うのに、俺の部屋と共に視界に映る翠は手袋を所望した。
そもそもまだ冬ではないし、確かに冷えて来た時期だが手袋をするには早すぎる。何故かと聞くと手が冷えるんです、と至極単純な答が返ってきた。じゃあ手袋すればいいじゃんと返せば、ミーがここに来て初めての冬なんです。だから手袋なんて持ってませんと返ってくる。そういえばそうか、と記憶を辿り、ならルッスーリアに頼めと助言をした。ものすごく全うな選択をしたつもりだったがどうも気に入らないらしく、無言で立ち去ろうとする。ルッスーリアの作った手袋が嫌なのか?と右手の親指で顎をなぞる。
「センパイの、センパイの手袋がほしい、です」
こちらに背を向けて小声で言ったつもりらしいがちっとも隠し切れてなく、少し下を向いているから項が真っ赤になっているのも丸分かり。
「やけに素直じゃん」
またボボッと赤くなる。
可愛いな、とぼんやり思いながらそういえば自分が16の時の手袋があったはず。と冬タンスの奥底を漁ってみた。背後にいる気配はこちらをじっと見ている。
「手、出して」
この言いつけも素直に聞くフランに、どうしようもない愛おしさが込み上げる
引っ張り出してきた今の自分に到底入らない手袋をフランの手に付けてやる。ピッタリだ
「おーピッタリですーこれってセンパイのですか?」
嬉しいのか目をキラキラさせて質問してくるので、そうだけど、としか答えられない。本当は可愛いとか好きとか手袋似合ってるとか手ならいつでも俺があっためられるのにとか言いたい事ばかりなのに
「ありがとうございますー」
「大切にしねーとぶっ殺す」
「…大切にするに決まってるでしょー」
…素直ってこえーな…
「ミー今から任務なのでこれで失礼しますー」
「任務にそれ付けていくのか?」
「当たり前ですー今手が冷たすぎて痛いんですよー」
結構な冷え症だな。この部屋あったかいのに
「どれぐらいつめてーの」
「これぐらいですー」
何の警戒もなく俺に近づいてくる後輩。やっぱ何も考えちゃいねーな。
手を差し出されて、するりと指を絡ませる。そのままキュッと握って手の甲にキスを落とした。本当だ。冷たい
「な、な何してんですかー!?」
乱暴に手を解くと手袋に突っ込み、そろりそろりと部屋から出て行こうとする。ドアノブに手をかけたところで、任務終わったらここに来いよ。と声を掛けた。
あの後フランが俺の部屋に来たのかは内緒。



あきゅろす。
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