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嘘?本当?【フラベル】


「あのー・・・」
「・・・っ」
「・・・センパイ?」
「っぅ・・・」


何故こうなった。フランは頭を抱えた。
先程ミーは任務から帰って来て、部屋に設置してある冷蔵庫から水を取り出して飲んでいたところ、扉の前に気配を感じたので振り返った。
・・・振り返らなければ少なくともこんな状態にはなっていなかった。多分。

泣いた堕王子がミーに抱きついているなんて。

さっきから理由を聞いても泣くばかりで何も言ってくれないし、ミーが悪いことをしたのかと思い返してみるが、特にそんな心当たりはない。
となるとーーーーーーーーーー

「ベルセンパイのお兄さんが何か言ったんですかー?」

その言葉におもいっきり反応して、次は動揺の色を見せる。
答えを当てられるという予想はしていなかったのだろう。

つい最近、ボスに殺されたはずのラジエルが何故か生きていて、ベルフェゴールの前に現れたという。

「お兄さんが言ったことって、ベルセンパイが傷つくようなことだったんですかー?」

できるだけ優しく言ってやる。いつもは術師として無機質な声音をしてますけどーベルセンパイが困ってるのなら話は別ですー

「・・・くっ・・・傷、ついて・・・ねぇ・・・」

・・・しゃくりあげて大粒の涙こぼしてたら、そんなに説得力ないんですけどー
寧ろエロいですー

「・・・ミーに話してくれませんかー?」

耳元で言うとセンパイがポソリと単語を発した。

「・・・ジル、が・・・」
「お兄さんが何ですー?」
「・・・フラン、が・・・消え、るって・・・っぅ・・」

あーなぁるー。
センパイのお兄さんが、ベルセンパイに「フランって奴、消えるらしいなぁ?」
みたいなことベルセンパイに吹き込んだんですねー、事実なんですけどー
ベルセンパイはこの様子だと泣き止みそうにないですしー
さっきの言葉だって最初の「フラン」しかちゃんと言えてなかったしー
それはそれで嬉しいですけどー
最後辺りなんか、声震えて、言えませんでしたしー

「・・・ベルセンパイはーーーーーー

前任が戻ってくるんですからーいいんじゃないですかー?
そう言いかけて、やめた。
今のこの人だったら、心が折れかねない。

「?フラン・・・?」

あーもう、可愛すぎですー

「お兄さんが言ったことなんか、信じちゃいけませんよー?ベルセンパイ?」
その話は嘘ですよー。と語尾に付け足してやるとやっと泣き止んだ。
最後の雫がミーの肩に落ちた。服がそれを吸う。
センパイがミーから離れると、冷たい空気が濡れた所にヒヤリとあたった。

「・・・嘘?」
「嘘ですー」
「・・・本当?」
「ミーの言ってることがーーーー」
本当です。そう笑いかけてやるとセンパイも笑い返してくれた。
いつものチェシャ猫みたいな笑いじゃない、ほんとに王子さまみたいな柔らかい笑顔。
今度はミーから、抱き締めてやる。センパイも、抱き締め返してくれた。

「セーンパイ」
「ん?」
「今日は一緒に寝ましょうかー」
「しっし、さんせー」
二人でベッドに倒れこむとベルセンパイは泣きつかれて予想以上に深い眠りについた。

ベルセンパイ、ずっと一緒がいいですねー
今はこの温もりが、金色が、
ミーから離れないようにーーーーーーーー

「Ti amo」




Fin.


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