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噂話
四話

「…ん…」

今日は約束の日だ。

でもまだまだ夜まで時間がある。俺はパジャマから私服に着替えて、何か暇を潰す事を探した。

そういえば、まだ読み掛けの漫画があったな…
そう思うとすぐ本棚に向かいその漫画を取り出した。

最後に読んだページを探し出し、またそこから読み始める。
丁度主人公の前に悪魔が立ち塞がる場面だった。

「悪魔か…」

ほんとに悪魔がいたらいいのに。そんな事を思いながら漫画を読み進める。


ここ最近ずっと変なことばかり起きているし、もしかしたらいるんじゃないか?と思えてきた。

絶対ありえないけれど。

幽霊やお化けがいるのはまだわかる。だって実際に声や変な音を聞いたからだ。

他にもテレビやブログにも取り上げられる。いてもおかしくはない存在だ。

でも悪魔はどうだろうか。

とてもファンタジーな生き物だし、神話や小説、漫画などの架空の物語にしか登場しないというイメージが強過ぎる。

…いるわけないよな。

「見てみてぇなあ…」

そう呟きながら、また漫画のページをめくった。






漫画も読み終わった頃。まだまだ外は明るかった。
早く夜にならないだろうか…

そういえば学校で数学の宿題が出されていたのに気が付いた。

…多分終わる頃には暗くなっているだろう。
俺は嫌々宿題を机に広げ、ペンを握り書き始めた。












「やっと終わった…」
案の定かなり時間が掛かってしまった。ほんとに苦手すぎる…数学なんて大っ嫌いだ。

ちらちら休憩も挟みながら宿題をしたのでもう大分時間は経っているだろうと、俺は壁にかかった時計に目をやった。

「六時か…」

丁度良い時間だ。早速準備をして出掛けよう。










準備をして俺は家を出た。空は薄暗く、街灯が怪しく街を照らしていた。

「もう黒井来てるかな」

そんな事を口にしながら歩いていると。













ぱたぱた








「……!!」

あの足音だ。今度はとてもはっきりと聞こえる。

まずい。逃げなければ。
俺はたたたっと駆け足になり。廃墟に急いだ。









ぱたぱた







それでもまだ足音は聞こえてくる。
…まさかぴったり後ろに着いて来ているのか…?

「っ……!」

多分そうだ。どんなに速く走ってもずっと後ろについている。

怖い。怖い。

俺は突然の恐怖感に襲われ、廃墟まで全力疾走していった。

「はぁっ…はぁっ…!」

息を切らしながら走る。足音なんか知らない。今は謎の恐怖に逃れたくてひたすら走っている。

「…っ…!」

必死で走っていたら廃墟が見えてきた。もうすぐだ…
俺はそのまま廃墟の前まで思い切り走っていた。


ばふっ


…突進するかのように走っていたら、誰かに受け止められた。

「君、大丈夫?」

優しそうな声が俺の耳に入る。
声の主を探そうと見上げると。

「やあ、君が誠の学校に転入してきた子だね?」

橙色の髪に片目が隠れている男性が立っていた。

「…そう、ですけど…」

「やっと来たなひかる」

横を見るとずっと待ってたかのように座ってる黒井がいた。

「随分必死そうだったけど、何か途中であった?」

足音が追い掛けてきた。
なんて言えず、俺は

「別に、何もないって…」

と誤魔化した。

「そっか、あんまり無理するなよ?」

そう言い黒井は立ち上がった。
そういえばこの男性の名前を聞いていない…

「あ、ごめんね、僕の名前まだ言ってなかったね。僕の名前は狩屋 弓人。よろしく」

狩屋…狩屋さんでいいかな

「あ、狩屋さんじゃなくて、弓人って呼んで欲しいなぁ…」

…まだ口に出してないのに。まるで心を読まれてるような気分だ。

「わかった弓人、俺は小鳥遊 ひかる。こちらこそよろしくな?」

「うん、よろしくねひかる」

と弓人は言い、俺の手を握って握手をした。なんか外国人と接しているような感じだった。

「挨拶はもう済んだろ?早く入って確かめに行こうぜ」

「そうだね、二人とも行こっか?」

そう言うと、黒井と俺はうん、と頷いて三人で廃墟の中に入って行った。

入る時、とても嫌な感じを背後で感じたのは言わずに。






中はとても暗く、慣れるまでは見えなさそうだった。所々崩れており、鉄パイプや岩などが転がっている。

「二人とも絶対離れちゃダメだよ?」

「わかってるって…」

「ああ…」

俺は今黒井と弓人に挟まれて歩いている。横に人がいるとなんとなく恐怖を減らされるもんだな。

「うぅ…怖い…」

黒井は早速怖がっていた。まだ入って三分も経っていないのに。

「三人だからへいきだろ…!」

「僕もいるしさ…!」

「それでも怖いもんは怖いの!」

ひそひそと小さな声で三人は喋る。
今んとこ特に変わったことはないな。

とか思っていると












がっしゃん







「ひっ…ぅ…」

「っ……」

「……」

何か大きな物が落ちるような音がした。流石に急すぎて三人とも黙ってしまった。

「…大丈夫?」

最初に口を開けたのは弓人だった。こいつのメンタルは鉄か。俺でも完全にビビっているのに…

黒井と俺は答えるように首を縦に振った。

「よし、じゃあもう少し奥の方行ってみようか?」

まじで…
もう少しここに留まらせていてほしい。

「…ずっと同じ場所にいても余計怖くなるだけだろう?」

な、なんで…ほんとに心を読まれてるのか?
…そんなこと気にしてるより、確かにそうだ、早く進んで早く終わらせてしまおう。

「そうだな、行くぞ黒井」

「う、ん…」

ぎこちない返事とともに三人とも奥に向かって歩き出した。




時々何か落ちる音や水が滴る音が聞こえるが、すっかり慣れてしまった。慣れってすごいな。

「もうすぐで行き止まりだと思うんだけど…」

「早く帰りたい……」

「見終わってからな」

そうあれこれ話していると、一番奥の行き止まりに辿り着いた。





「…ただ岩が積み重なってるだけ?」

「そうみたいだね」

「…な、なんだ…」

「よし、じゃ帰ろうか〜」

結局何もなかった。
あの女の悲鳴はなんだったんだろう。

俺は少し残念そうに、後ろに振り返って帰ろっとした















「あ…」






















目の前には真っ白な女が立っていた。




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