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噂話
三話


太陽の光が目に染みる
もう朝か。

「ぅ……」

朝は嫌いだ。どうしても起きられない。
眠い目を擦りながらのそのそと俺はベッドから下りた。

歯を磨き、顔を洗い、ぼさぼさの髪を櫛で整える。








朝御飯も食べ終わったので、制服に着替えて家を出よう。

「いってきます」

誰もいない家に俺はそう言い放った。





いってらっしゃい





…奥の部屋で何か聞こえた。

まだ4月だというのにとても暑い。もう半袖の大人も出歩いている程だ。
こんな暑い中ずっと歩いてられない。俺は少し早足で学校に向かった。

「ひかる!」

急に後ろから俺の名前が呼ばれた。振り返ると俺のクラスメイト、黒井が走ってきた。

「おはようひかる〜」

「おはよう…」

少しめんどくさそうにこちらも挨拶をする。同じ道だったのか…

「なんか疲れてる?」

「…まぁ、疲れてるかもな」

「だろうな。昨日あの廃墟に行って女の声を聞いたんだってな?」

なんで知ってるんだこいつ。まだ学校にも着いてないのに。

「……」

「あ、ごめん。おれの友達が廃墟でひかるのことを見たって言ってたから…」

友達?あの時、俺以外に人なんて周りに居なかったはず。

「…そうか」

「まためんどくさそうな返事しやがってこの」

「いてっ」

黒井にチョップされた。こいつ、やりやがったな…

「おらっ」

「でっ!!」

さっきのよりもでかいのを御見舞いしてやった。どうだこの野郎。

「くっそ…待てー!!」

「待たねーし!」

俺は黒井と一緒に暑さなんか忘れてしまう程騒ぎながら学校に走って行った。

忘れてしまう程楽しいんだろうな。





ずっと話していると、もう学校に着いていた。
俺は下駄箱に向かい靴を履き替え、自分のクラスへ向かう。

ガラリ

教室のドアを開け、自分の席に座る。それと同時に黒井が口を開けて。

「ひかる、あの廃墟まだ気になるか?」

「当たり前だろ。女の悲鳴が聞こえたんだ、気にならない方がおかしいっての」

次に黒井が放った言葉が

「じゃあ明日休みだし、明日の夜一緒にあの廃墟に行ってみるか?」

何言ってるんだこいつは。昨日怖いの苦手だって言ってたじゃないか。

「お前怖いの苦手じゃなかったのか?」

「苦手だけど、怖いもの見たさ?というか…それにおれらより五つ歳上の友達も連れてくる予定だから」

なるほどな。自分達より歳上の人を連れてくれば頼りになるし、怖さも半減されるものなのか。

「行くか?」

俺はもちろん

「行く」

「決まり」

そう決めた瞬間、授業のチャイムが鳴った。


先生の声とペンを走らせる音だけが聞こえるこの教室で、俺は疑問を抱えていた。

昨日の足音はなんだ?

あんな帰り道が長かったか?

廃墟の上の大きな影はなんだ?

今朝の返事は誰だ?

この街に来てから奇妙なことばかり起きている。ほんとに幽霊がいるのだろうか。

いるだろうな、昨日のあの悲鳴。あれは本物だ。
そう考えると、背中をつんつんと誰かに突つかれた

後ろは空席なのに。










やっと全部終わった…今日は体育があったのであまり退屈ではなかったのでよしとする。

また昨日と同じようにさようならの声を合図に一斉にみんな教室から出て行った。

「一緒にかえろうぜ〜」

「ああ」





黒井と一緒に下校して、明日どうするかの話をしながら家に帰った。
午後七時にあの廃墟の前に集まるらしい。にしても黒井の友達ってどんな人なんだろう…

そんなことを考えながら、ベッドの上に寝転んだ。

…もう一度やってみるか。

「おやすみなさい」















おやすみなさい





…また奥の方で何か聞こえた。




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あきゅろす。
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